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そばの話をしよう

 近ごろはうどん屋ばかりでまことに嘆かわしい。俺はそばの方が好きだ。そう、立ち食いでいいんだ。なんかボソッとした、小麦粉がつなぎに入ってる麺で、かき揚げが乗ってて。かき揚げだ。立ち食いそばの魅力はかき揚げそばに始まり、かき揚げそばに終わる。終わったことはないけど多分そうだと思う。

 かき揚げは玉ねぎがいいんだ。玉ねぎはうまいんだ。フランス人でも日本人でも、俺たちは揚げた玉ねぎが好きだ。全体にカリッとしていて、汁に沈ませるとジャクッとしていて、塊でかじってもうまいし、時間とともにほぐれて小さな天ぷらの小片になっていくのもいい。じるっと汁を吸った玉ねぎの香ばしさが溶け込んで、てりっとした汁が、その、つまり、うまい。

 そこでそばをすする。そばはうまい。うどんもいいけどさ、うどんは白いしさ、主食としての純度が高すぎるよな。そばは違う。そばは人を試す。そうかな?まあいいか。俺はそばの、主食として未完成な混じり気をこそ愛しているわけですよ。知らんけどさ。そこに醤油と鰹と昆布の出汁がこう……うまいわけですよ。知らんけどさ。

 なんか腹減ってきたな。神田の天たまそば食いに行くか。七味の話はまた今度な。

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