自由戦士 引きこもりマリアンヌ「冷蔵庫戦争の巻」
原作:じんたろの妻、文:よしきじんたろ、絵:のぎけやき
マリアンヌのママは冷蔵庫に冷凍食品が入りきらないので困っていました。
「冷凍の餃子も美味しいし、サバ甘酢なんかは溶かすだけで食べられる。地震なんか起きてスーパーに買い物に行けないとときに助かるのにね」
「もっと大きい冷蔵庫にすればいいじゃないか」とマリアンヌのパパは言いました。
「何言っているのよ。これ以上大きい冷蔵庫は業務用しかないわよ、パパ。うちはレストランを始める訳じゃないのよ」
「じゃあ、小さな冷凍庫でも買うか」
「そうそう、それがいいわ」
と、マリアンヌのママは、業務用冷蔵庫じゃなしに、小さな冷凍庫を買うことになりました。
真四角のサイコロのような冷凍庫が届いた日、ママはとても楽しそう。
「これで、大きな地震が来ても平気だわ。ここに何を入れようかな? 餃子に唐揚げ、カレーにカレイの煮付け。ああ、溶かすのが楽しみね。じゃあ、ママ、買ってくるから、マリアンヌ、お留守番しててね」
と、ママは買い物に行きました。
その頃、ロシアのシベリアでは、ハンターたちが1万2000年前に氷になったマンモスたちの牙を探していました。
でも、ハンターだちが見つけたのはマンモスではなく、二頭の子犬の体。びっくりして大学の博士を呼びました。博士たちが調べてみるとこの頃、子犬は草を食べているようでした。たぶん、近くにはオオカミの体もあるはず。もちろんマンモスも。ハンターと博士はツンドラの寒い寒いシベリアでその後も探し続けました。
マリアンヌはママの買い物を待って、ひとりで留守番していました。
すると、ベランダでガサゴソ音がします。
クウーンクーンと子犬が鳴くような声。
ベランダを見ると、二匹の子犬。
「あっ、アリスとテレサだ」とマリアンヌ。
マリアンヌはマンションに引っ越す前、一戸建てのおうちに住んでいて、アリスとテレサという二匹の子犬を飼っていました。
「おいで、アリス、テレサ」とマリアンヌが呼ぶと、二匹の子犬は尻尾を振りました。
「あっ、窓が閉まっていたんだ。開けなきゃ」とベランダの方に行こうとすると、そこにいたのは大きなオオカミでした。
いきなりオオカミはマリアンヌに飛びかかってきました。
マリナンヌは必死にオオカミともみ合いました。
オオカミは牙をむいてマリアンヌに噛みつこうとします。
マリアンヌ、ピンチ。
マリアンヌはいつも持っているタブレットをオオカミの牙と口の間に入れてつっかえ棒にしました。
オオカミは、ハガハガハガと大きな口を開けたまま。だらしなく、ハガハガハガと言っています。
マリアンヌは、
「もう噛んじゃだめよ」と言ってタブレットを外してやりました。
するとオオカミはベランダに逃げていきました。
よかった、とマリアンヌが言おうとしたそのとき、今度はマンモスがマリアンヌに襲いかかりました。
マリアンヌ、ピンチ!
マンモスは曲がった牙でマリアンヌに襲いかかります。
マリアンヌとマンモスはもみ合いました。
マリアンヌは持っていた懐中電灯の灯でマンモスの目をピカッ。これは、絶体絶命のときにだけマリアンヌが使う秘密兵器なのです。
マンモスは一瞬たじろぎました。
そこでマリアンヌはマンモスの牙を見ないようにして、手だけを出してマンモスの体をまず二つに折り畳みました。
それをまた二つに折り畳み、それからずいぶん折り畳んで大きなサイコロの形にしました。
それを四角い冷凍庫にポイっ。
サイコロのマンモスはちょうど冷凍庫に入りました。
これで地震が来ても安心。
めでたしめでたし。
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