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【行列ゼロ!じんたろ法律事務所】新しいNHK党の変なフルネームが気になるので調べてみた

世の中、衆議院選挙期間が始まって各政党の宣伝カーはお願いモードで走っている。
衆議院選の一週間前には参議院選の山口補選が行われる。

その山口補選には、元迷惑系YouTuber「へずまりゅう」こと原田将大が「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」(略称、NHK党)から出馬している。

衆議院選にはNHK党から 登校拒否問題で話題になったゆたぽんの父親・中村幸也、バレエ大好き党という団体の猪野恵司、パチンコ党の宮川直輝という個人の趣味志向の人からミルク&ハニーのミルク&ハニーキャプテン(池高生)という訳のわからない候補者もいる。また、ブラック校則をぶっ壊す党の矢島秀平、歯周病をぶっ壊す党の渡辺マリコもいて、いろんなものをぶっ壊す気マンマンなのがわかる。

1. 立花孝志のNHK党って名前が変ですよね

ところで、「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反」って何?
えっ、立花孝志が党首の政党って、「NHK受信料不払い党」から「NHKから国民を守る党」になって、中央区の区議を脅迫した疑いのときに鞍替え選挙で失職して、それからどうしたんだっけ。
Wikipediaを読むと党名変更についての記載がある。
2020年5月には「NHKとコロナの自粛から国民を守る党」に変更する意向を表明して、一週間後に撤回した。
その後、都知事選挙では「ホリエモン新党」を結成したが、あまり話題にならず。
11月には党名を「ゴルフ党(NHKから国民を守る党)」に変更すると表明したが、約1か月後に撤回。
同時に、新党名を「民主党」にすると発表した。ちょうど、この名前に空きがあったから。このとき、NHK受信料問題は「解決した」との見解を示していた。
しかし、2021年1月には「NHKから自国民を守る党」に党名変更し、略称を「自民党」とすると発表した。さすがに、中央選挙管理委員会は「自民党」の略称は認めなかったが。
また、その一週間後に立花氏は会見で、党名を「NHK受信料を支払わない方法を教える党」、略称を「NHK党」にすることにしたと言った。
その3か月後の4月には、新党名を「特になし」とする方向性を表明したとか。
「特になし」か。
なかなかユーモアのセンスがある。
しかし、総務省は名称変更を認めなかった。それで、その3週間後、「古い政党から国民を守る党」(略称:古い党)に名称を変更した。
さらに6月には党名を「嵐の党(あらしのとう)」(略称「あらし」)に変更した。ジャニーズの嵐の解散で話題になると思ったんだろう。
翌月には新党名「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」(略称「NHK党」)に変更した。

2020年からの一連の党名変更について、立花党首は「失敗だった」と言った。その上で、「国民がNHKについて考える機会になってよかった」と振り返っているらしい。

2.「ぶっ壊す」争点はNHKが弁護士法第72条違反しているに変わったの?

NHK党って、もともとNHKに受信料を払うのがおかしいって主張だったよね。
NHK側で支払い義務を勝手に決めている放送法がおかしいんだって。
で、スクランブル放送にしろとか、今のNHKをぶっ壊すんだとかだったはず。
基本政策はどうなのか?

NHK党のホームページを見てみる。

基本政策は3つ。

① NHKのスクランブル放送を実現
② お金を使わない、しがらみのない選挙の実現
③ 少数派の意見を大切にする政治の実現

① の見出しに続けて、ボディーコピーはこう書かれている。

NHKは公共放送でありながら委託法人の訪問員による弁護士法72条違反等の様々な問題行為を繰り返しており、NHKによる被害の声は今もなお届き続けております。
嵐の党はNHKスクランブル化が実現されるまで今後も行動を起こし続けます。

まだ、「嵐の党」になっていますよ。
誰か指摘する人はいないんですか?
このホームページを誰もよく見ていないのかがよくわかる。

でもまあ、主張はこうだ。
NHKは公共放送でありながら委託法人の訪問員による弁護士法72条違反等の様々な問題行為を繰り返している、と。
どうやら、この弁護士法72違反が争点と捉えているらしい。

3.で、どういう裁判なのか?

裁判しているって言っているけど、どういう裁判なのか?
それがよく分からない。
Wikiにはない。
東スポにこういう記事がある。

弁護士法72条とは、弁護士や弁護士法人以外が報酬目的で法律事務の取り扱いを禁じるもの。立花氏はNHKから委託されている会社による受信料の集金業務は、この72条に抵触しているとして、NHKと係争中で、年内にも判決が出る予定だ。
「(新たな)党名で選挙に有利不利かといったら不利。それでも有権者に弁護士法72条違反って何なんだと問題意識を持ってもらわないといけない。NHK問題を2年間やってきたので、その審判を受けたい」と立花氏は話した。

立花氏はいくつもNHKに訴訟を起こしているが、国会議員時代に自身が受信料を支払わなかったことに対してNHK側が支払いを求めた裁判もある。その裁判ではNHK側が勝利している。

「NHKと裁判している党弁護士法72条違反で」の立花孝志党首が参院議員だった2019年、議員会館の自室に設置したテレビの受信料を支払わなかったとして、NHKが2カ月分計4560円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は28日、一審に続き立花氏に全額を支払うよう命じた。

まあ、当たり前の結果なんだろうけど、NHKは勝訴したのにさらに最高裁での判決を求めている。
それは、NHKは受信料契約を拒否する受信者に対して、ひとりひとり裁判を起こして判決を得ないのではなく、NHKとしては「NHKが契約締結を申し入れてから2週間経ったら契約が成立する」ことを最高裁で認めると業務がやりやすいからだとか。

でも、弁護士法72条関連はこの裁判ではない。

党首の立花氏は、この弁護士法72条違反について、詳しくは、Youtubeを見てくれと言っているので見る

あ、選挙ドットコムにも転載されている立花孝志のブログにNHKの反論があった。

これらを合わせると、こういうことらしい。
NHKは委託会社や地域スタッフに集金業務を委託している。
テレビを設置したら、その設置者のところにNHKの集金人が訪問し、受信契約と契約料の支払いを求める。
ここまでは、何の問題もないんだけど、支払わなかったら、滞納期間の受信料の2倍を滞納金として支払わないといけない。それを「法律事件」として扱えるのは弁護士かNHKの職員だけ。それはNHKの契約書にも書かれている。
これは弁護士法が第72条で、こう定めているからだ。

○弁護士法
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

<立花氏の主張>
・NHKの集金と支払い拒否への督促は法律事件である。
・これはNHKの職員か弁護士しかできない業務であるので、委託業者がやっているのは弁護士法違反

<NHK側の主張>
・NHKが外部委託先に対して委託する業務は、弁護士法第72条の「その他一般の法律事件」に該当しない
・委託業者がこの業務を行うのは弁護士法違反にならない

争点はごく簡単なのだ。

で、実際はどうなのか?
すでにいくつか類似判例がある。

今回の争点は法文の「一般の法律事件」なのかどうか。

NHKの主張は、「NHKに委託された受信契約の取次ぎ等の業務を行うことについて、弁護士法72条違反にはならない」ということだ。
その理由はこういうこと。
「収納業務」は、「②放送受信料の収納業務およびこれに付随する事務」、「③放送受信料の未収者および一部未納者に対する支払の督励業務および未収受信料の収納業務ならびにこれらに付随する事務」としているので、督促は収納業務にあたる。
支払いを拒否した場合、提訴することがあるが、それは弁護士が担当している。
相手方が受信設備の設置事実を否定して受信契約の締結に応じない場合や受信契約の成立自体を争い受信料の支払い義務を否定する場合などには、それ以上業務を継続することは予定されていない。

4.これまでの判例ではどうなのか?

 では、こういう場合の判例はどうなっているのか?

 弁護士法第72条をめぐる裁判では、不動産業者による地上げをめぐる最高裁平成22年7月20日判決というのがある。

最高裁は,土地建物の売買等を営む被告人らが,多数の賃借人の存在するビルについて,ビルオーナーから,その賃借人らと交渉して,賃借人らの立ち退きの実現を図るという業務を,報酬を得る目的で業として,賃借人らに不安や不快感を与えるような振舞いをしながら行った事案で,被告人らに弁護士法72条違反の罪の成立を認めた原審判断を相当であるとした。

東京弁護士会の解説ではこうなっている。

現在では,上記判決の影響もあってか,賃借人の意思に反して明渡し交渉を敢行する不動産業者は多くはない。法的紛議を生ずることが避けられないような土地や建物の明渡交渉は,弁護士の業務である。不動産業者が賃借人に対し不安や不快感を与えるような振舞いをしながら地上げ交渉を敢行するような場合,上記判決を示してその中止を促すなど,毅然とした対応をする必要があると思われる。

NHKはこの判例を引用して、準備書面でこう述べている。

最高裁平成2 2年決定において「法的紛議が生じることがほぼ不可避な案件」であるとされた上で弁護士法7 2条違反と認定されたいわゆる地上げ案件における建物明渡交渉業務とは異なる。
長期にわたり受信料が未払いである受信契約者に対して、支払い再開を促し、任意で応じる場合にその受信料を収納する業務(収納業務)である。すなわち、これらの業務は、一定の事実関係に基づいて受信契約締結義務や受信料の支払い義務がある者に対し、任意でその義務の履行に応じることを求めるものであり、上記地上げ案件のように、賃貸借契約期間中で元々立ち退き義務がない賃借人に対して、立ち退きや立ち退き料等について合意をして権利義務関係を設定し直すような難解な法律問題を必然的に伴う交渉をするような業務ではない。
「平成1 8年1 1月より民事手続きによる支払い督促を行っています。誠心誠意ご理解を求め、それでもなおお支払いいただけない場合の最後の方法として実施。」、5頁に「お支払いいただけない場合にはいずれ支払督促を申し立てることを前提とした未収受信料の請求や、支払督促申立ての手続きについては、弁護士法第7 2条(非弁護士の法律事務の取り扱い等の禁止) に抵触するため、職員でなければ実施できません。」などと記載されているのは、以上の実務的実態に即したものである。


https://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2014_12/p02-11.pdf

 立花氏の訴訟は勝つことを目的としているとは思えない。かなり無理筋な提訴だったと思う。弁護士はそれでも弁護しないと仕方ないのか、報酬が目的なのか?

5.結局、この党名は何なのか?

 立花氏は2020年12月から党名変更を再三行った。
 これが有権者の話題づくりのためではなければいったい何だろうか?
 NHKの集金人を追い回して、Youtubeに上げて、NHKから訴えられて敗訴したこともあった。

判決によると、立花氏は令和元年8月、動画投稿サイト「ユーチューブ」に公開した動画で、同党副党首で千葉県柏市議の大橋昌信氏に対し「参院選で公約にしていた集金人のおびき寄せ作戦で、大橋君に隊長になってもらう」などと発言。大橋氏は同9月、埼玉県内の女性宅を訪れた集金人を無断で動画撮影し続け、最寄り駅まで追いかけながら「止まらないならずっと撮影する」などと声をかけた。

弁護士法第72条なんてみんな知らない。
こんなふうに調べる人もいない。

そして、立花氏はYoutubeでこんなことを言っている。
「NHKとの裁判で負けた人は15万円の訴訟費用を払わないといけない。それを、うちの党で払うのか、私が払うのか、私の会社が払うのかは言いませんが、この人たちをお守りします」

裁判にかかる費用、弁護士費用も「私を信じているひとを守ります」と裁判するように促している。

議員がいるので、こういう政党が1億円以上の政党助成金を受け取っている。
日本では有効投票数の2%を得たらそうなるしくみなのだ。

立花氏は、その2%突破を目指している。

7. 結論

あほくさ!

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