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自分を少し知った話

 よく通ってたバーがある。バーと言ってもお洒落な所じゃなく、皆でお喋りする様なカジュアルバーだ。(バーにはオーセンティックバーとカジュアルバーがあり、前者はいわゆるお洒落で落ち着いたイメージ通りの場所、後者は例えば大画面でスポーツ見たりして皆でワイワイするための場所)

 バーと言ったら敷居が高そうだけど、そこはツイッターでオープンの告知をやってて、サブカルをテーマとしてるらしく、漫画は俺も好きなので行きやすそうだと思った。あんまり陽キャ風な感じがしなかったのも良かった。勇気を出して初めて行った日はDJイベントをしていたが、俺はうるさいのが苦手なので15分くらいで帰った。 

 俺がバーに行き始めた理由は、友達が欲しかったのが6割、異性との出会いが欲しかったの4割って感じだ。その時は好奇心いっぱいの青年だった(数年前だけど)。そのバーに通う中で、初対面の人達とも少しは仲良くなれた。そこまで仲良くなってない人と、恋愛の話をしたりするのは刺激的だった。しかし、あまり会話が弾まない事もあった。相手が俺じゃなくて他の人と話したかったのだろう。気の合う人に会えるかは運だった。正直、誰とも話さずカジュアルバーにいるのは辛いので、お喋りできる人が見つかれば満足して、友達になりたいとか恋愛したいと言う気持ちには中々ならなかった。

 
 そのバーには、シャンパン(6千円くらい)を皆に奢る文化(?)みたいなのがあって、お金持ちらしき常連達はよくシャンパンを頼んでた。シャンパンを頼む人はほとんどおじさんだ。よくシャンパンを頼むおじさんは、そのバーに来てた女の子達とご飯に行った写真をよくツイッターに上げてた。

 
 俺はそんなおじさん達があまり好きじゃなかった。おじさんがシャンパンを頼むと、場のノリで俺もシャンパンを飲まないといけないし(俺はシャンパン嫌いでその都度断ってた)、何よりシャンパンを皆に奢る意図が分からないのが嫌だった。女の子に喜んで欲しいとか、場を盛り上げたいとか、自分の存在を示したいのが動機だと思う。けど、俺はそんなおじさんの自己顕示パフォーマンスに巻き込まれるのが嫌だった。それとシンプルに、そんな事をする年上の男性がカッコ悪く見えた。

 
 俺はそのバーに行かなくなった。そこでは友達も恋人も出来なかった。でも良い出会いもあったし楽しい思い出もできた。偶然かつてあまりイメージが良くないマチアプでやりとりをしてた人にも会った。「飯に誘ってから何で連絡取れなくなったの?」と聞くと、素直に「ごめんなさい」と言われて面食らった。


 俺にはカジュアルバーと言うもの自体が合わなかったんだと思う。初対面の人と話すのは慣れる事は無かったし、話上手になりたい気持ちも湧いて来ない。顔馴染みの人もできたけど、それ以上仲を深める方法も分からなければ、その必要も無い気がした。

 
 そのバーに通ってた事で、自分のなりたい理想像が少しだけ分かった。それは女の子に酒を奢ってニコニコしてる様なおじさんじゃ全然ない。お喋り上手な男性でもない。

 
 少し遠回りをした結果、俺は一人でいるべきだと迷いなく思えるようになった。 

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