森保監督についてのボヤキ

以前私は、今の男子サッカー日本代表を任せられる人は、森保監督以外だと現時点ではいない、と言った。その意見は今でも変わっていない。しかし、いつまでも続けるわけではない。おそらくこの最終予選で敗退するか、ワールドカップ本戦終了後に辞任、もしくは解任するであろう。

そこを考えると、森保監督はこの時期には既に新しい監督に引き継ぐつもりだったのではないか、と最近考えるようになった。協会としても、あとを継いでくれる日本人監督を見つけていたはずだ。コパ・アメリカを戦い、ワールドカップアジア二次予選を戦い、そして東京五輪を戦ったはずの去年で、あと2年を誰かに託すつもりだったのではないか、だからあれほどたくさんのメモをとり、残しているのではないか、と。

しかし、それが全てご破産となってしまったのではないか。理由は言わずもがな、コロナウイルスによる世界的なパンデミックであろう。このせいでプランは総崩れ、何をどうしていいか全くわからず、動くに動けない1年を過ごしてしまったのではないか。私はここに来て、そう考えるようになった。

敢えて言うが、私は森保監督が無能で無力であると断ずるつもりはまったくない。むしろ、歴代の代表監督は誰も経験したことのないであろう、世界的な感染症とぶつかるという難しい時代。そんな中で過酷なスケジュールを戦いながらも、これからの日本代表に向けて、選手達に嫌われることなく、様々な土台を高く積み上げているという点においては、非情に素晴らしい実績を残していると私は考えている。

森保監督の最大の功績は、世代交代と選手発掘であろう。吉田麻也、酒井宏樹、大迫勇也、長友佑都、柴崎岳といったロシア組は、おそらくこのカタール大会が最後だろう。しかしそれでも、今強力なリーダーシップを発揮してくれている遠藤航を中心とし、南野拓実、鎌田大地、古橋亨梧、中村航輔などは次の大会もまだ目指せる。今怪我で離脱している中島翔哉とて、本大会や最終予選では、あの強烈な個性をこそ必要なピースとなるであろう。

さらにこの下には、現在のA代表の中心軸にすらなっている堂安律、冨安健洋、田中碧、板倉滉、谷晃生などの東京五輪世代もいる。彼らもまだまだこれからという大事な今の時期に、先輩たちを超える勢いで様々な国際経験を経てガンガン伸びている。久保建英、鈴木彩艶、中井卓大は彼らよりさらに若くしてヨーロッパのクラブで学んでおり、将来性も充分だ。

そして日本サッカー協会は、ようやくヨーロッパの中だけで日本代表を組織できる状態を作ることに成功した。主力選手のほとんどが欧州各リーグに所属している今、環境を大きく変えずに継続して活動できる状態を作ったことは本当に大きいと私は思う。

だが、現時点で今回のカタール大会については、正直私も本大会出場というのは、ここまで勝ててない現状では不可能と言わざるを得ないほど厳しいと思う。しかしそれは、決して日本が弱くなったということではない。アジアトップを争うチームが、選手を育成するスキルをそれだけ上げてきており、国の総力を挙げて日本代表というチームを潰そうと本気で掛かってきている。中東方面など、国内リーグ戦において最強と言える外国人選手中心のクラブを組織することで世界のプレイヤーの基準を持ち込んでリーグ戦を行うことで国内リーグの基準を高くするだけでなく、そのリーグ戦を中断してまで遠征や合宿を行っている国が殆どだ。日本じゃ絶対できやしないことをしてまでこの最終予選に臨んでいる。

そんな難しい時代に、日本のサッカーファン、日本代表サポーターの呆れと怒りを全て目の当たりにしていても、代表が勝てないからという理由でサッカー離れが進んでいても(これは本当かどうかわからんが)それでもまだ残る試合に、残るスケジュールに立ち向かわねばならない。そんな森保監督を、結果はどうあれ私は最後まで見届けたいと思う。それくらいしか、できることはない。

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