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クロスポイント ある師走の午後。 繁華街の交差点で信号待ちする沙織のスマホが、突然震えた。 SNS:藤木明美→梶原沙織。 『今週末のお茶のお稽古。休む』 『どうしたの?』 何故かその時、彼女の脳裏に昔の夏の思い出が過った。 それは、母親の雪乃が営んでいた茶道教室で沙織が一緒にお茶を学んでいた明美と彼女の弟の隆一へお茶を点てるという、ありふれた日常の一場面だった。 * 十三年前。 盛夏の午後。 沙織は冷茶を点てていた。 氷の