Little Wing 聴きくらべ

ジミ・ヘンドリクスの『Little Wing』。ジミヘンといえば過激でハードなギターを思い浮かべますが、この曲は美しく哀愁を感じさせる魅力的な曲です。

まずはオリジナル。2作目の『Axis : Bold As Love』に収録。

歪みの少ないクリアなギターの音が印象的です。歌詞も幻想的です。

「そう、彼女は雲の間を通り抜けた、走りまわるサーカスのように愉快に。蝶、シマウマ、月の光、おとぎ話。それが彼女が想像したことのすべて、風に乗りながら。悲しいとき、彼女がたくさんの笑顔でボクを解き放った。大丈夫、と彼女は言った。大丈夫、いくらでも持って行きなさい、いくらでも。飛ぶのよ、小さな翼で。」

母親と子を思い浮かべてしまうような詞ですね。※訳=私なので変なところはご容赦

ジミが早世したことともあって、会えない人への想いを込めた形でカバーされることが多いようです。


スティングがこの曲を『... NOTHING LIKE THE SUN』に収録しています。

CDのライナーには「このアルバムを母と母を愛してくれた全ての人に捧ぐ」と、スティング本人の言葉が記されていました。「Little Wing」の歌詞のページには母親らしき女性とのツーショットも載っています。

なお、スティングが15歳の時に初めて見たバンドのひとつがジミ・ヘンドリックス・エクスペリアンスだったそうで、ちょうど彼らのデビューシングル「ヘイ・ジョー」を買った直後だったとのこと。すごいな、繋がっているな。

このアルバムは妻の愛聴版なのですが、「え?これジミヘンなの?」と驚いていました。そうだろうねぇ。

ヴードゥーチャイルの前奏からLittle Wingに。これはスペイン語でしょうか。会場大興奮、大合唱。調べたら、スペイン語版のミニアルバムにこの曲が入っているんですね。新鮮に聴こえる。


さて、次行ってみよう。

エリック・クラプトンのバンド、デレク&ドミノス、有名な『レイラ』に収録

ロックバンド向きのアレンジと泣きのギターフレーズで、この後のバンド形式のスタンダードのひとつになっています。ボーカルもこっちの方がたぶん歌いやすい。


スティーヴィー・レイ・ヴォーン『The Sky Is Crying』収録

事故で早世してしまったスーパーギタリスト。タモリとナイナイがやっていたジャングルTVのジングルはこの人の曲です(情報が古い)。ソロ、カッティング、早弾き、全部カッコいい。この人はアルバートキングをはじめとするブルースギタリストの影響を受けたそうですが、ジミに対するリスペクトも強く、カバーを数曲のこしてくれています。

歌なしインスト。ほぼジミ原曲のコピーで、この人のギターを堪能できる。切れ味鋭く、繊細かつ雄弁で、カッコいい。生で見たかったなぁ。

このアルバムは、亡くなった後に編集されたものなので、興味を持った方はぜひ生前のオリジナルアルバムを聴いて欲しいです。ブルースロックギタリストの金字塔です。


ギル・エヴァンス『プレイズ・ジミ・ヘンドリクス』収録

ジャズピアニストで、マイルス・デイビスのサポートでも有名な方。ジミを高く評価していたそうで、自身のバンド(オーケストラ)で一緒にやるつもりが、ジミが早世してしまったたそう。その後、ジミの曲を改めてカバーしたアルバムがこれ。

※『Little Wing』はボーナストラックなので「+5」の限定版のみ収録なので注意

スティングとも交友があり、上記アルバムに参加したほか、ライブ共演の曲目にも「Little Wing」が含まれていたそうです。



タック&パティ『The Best Of Tuck & Patti』収録

超絶技巧ギタリストとソウルフルで柔らかいステキボーカルの夫婦ユニット。静かで熱くて、カッコイイです。


この曲でちょっと不満なのが、おそらくジミのオリジナルがフェードアウトで終わるため、スティング(CD版)もデレク&ドミノスも、フェードアウトで終わっちゃうことです。レイヴォーンとギルエヴンスはなんとなく伸ばして、静かにしゅんって感じだし。タック&パティはメドレーで処理して最後に「The Castle Made Of Sand」で締めてるし。ジミ罪深し。


YouTubeなどで検索したら、まだまだたくさん出てきます。違いを楽しむもよし、好きなカバーを聴き込むもよし。


私は仲井戸麗市さんが某ライブでカバーしていたと知って胸熱です。