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特別なR(大豆品種「ユキホマレR」「スズマルR」)

乗用車の型番に「R」がついていると、ちょっと特別な感じがするし、できれば「R」の車に乗りたいと思うタイプである。この場合の「R」はRacingだろう。

大豆の品種にも「R」の文字がついているものがある。

「ユキホマレR」と「スズマルR」。

すごくスピードが出そうに感じるが、さにあらず、この「R」はResistantを指す。大豆の大敵、ダイズシストセンチュウへの抵抗性を付与した証だ。

もともと、「ユキホマレ」は北海道でいちばん作られている品種で、甘みがあるのが特徴。道産大豆の代表格として、豆腐や煮豆、納豆、味噌と幅広く使われている。「スズマル」は小粒で、納豆用として引き合いが強い品種である。

両方とも需要は高いものの、生産現場ではダイズシストセンチュウの被害で困っていた。このため、元々の品種の特徴を保ったまま抵抗性だけを加える「戻し交配」という手法で改良された。

「戻し交配」は、元の品種(戻し親)と導入したい特性を持った一回親を交配し、その後代にさらに戻し親を交配する。これを連続で4~5回繰り返すと、戻し親とほぼ同じ姿形のまま、一回親の一部の特性を持たせることができる。もちろん、一回親の特性=遺伝子の位置がわかっていることが必要である。一回親の遺伝子が受け継がれている種を選んだうえで、さらに戻し交配するひつようがあるからだ。

大豆の戻し交配は、言葉で言うほど簡単ではない。花が小さいため人工交配自体が難しく、それを数世代繰り返す「戻し交配」となると通常の交配の何倍も手間がかかっている。ま、できてしまえば、途中の苦労は忘れられていい。


とにかく、上手いことやって2つの「R」が開発された。

どちらも食品としては元品種と差がないので、販売するときは「R」をつけず、元の品種と同様に流通している。もともとのブランドをそのまま引き継げるというのも「R」の利点である

でも、個人的には、せっかくだから「R」をつけて売っても良いんじゃないかとも、思うのである。それほど広くない大豆業界の、さらに一部のモータースポーツファンには、同意してもらえるのではないだろうか。

「R」だけ赤い文字にして。