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素敵な文集の感想と連想

東京の文フリに出品されていた『文集・猫以外』が、通信販売で購入できると知り喜んで取り寄せた。

浅生鴨さんの寄稿が目当てだったのだけど、他のも含めて良かった。ちょっとだけ、少し前に読んだ話の設定が紛れ込んで混乱したけど(単に自分のせいなのであるが)、とても良かった。

ごく簡単な感想と連想を。


浅生鴨『庭に鳥のいたころ』;自分の経験ではないはずなのにとても懐かしい感じがして、しんみりしながら温かい気持ちになる素敵なエッセイだった。鴨さんの文章は全部スキなので私の感想は当てにならないかもしれないが、これは大事にしたい。

ただ、少し前に『あひる』(今村夏子)を読んでいたので、どこかのタイミングで「鳥」が入れ替わってしまうのではないかと、すごくドキドキした。たぶんそんなことはなかったと思うし、書かれていないことを想像しすぎてはいけないのだけど、本当のところは信用できない。


わかしょ文庫『R.I.P.SRA』;生きものというのは、特に節足動物の類いは、近づいてアップでみると相当グロテスクなものだ。愛情よりも嫌悪が先に立つことがあるのは致し方ない。それがそのまま巨大化して襲ってきたとしたら、警察や自衛隊が出動するだろう。そこまで妄想したなら、それは『海の底』(有川浩)の世界だ。たぶん、もっと嫌いになるな。『海の底』は面白いよ。


うのりえ『仔犬のお化け』;怖い話かとおもいきや温かいエピソード。脳内に、山崎まさよしの「僕はここにいる」が流れてきた。この曲のMVも最後に犬の写真が登場するんだったな。

物音に何かを感じてしまうことは、あるものだ。最近読んだものでは『お墓、どうしてます?』(北大路公子)に似たシーンがあった。この本も面白かったよ。


佐々木未来『水の中のあくび』;意外な生きものを飼ったエッセイ。ドライで切なくて最後は意外なところに連れて行かれた。キーワードは、肉食、水辺の生きもの、骨(≒化石)といったところか。読み終えて連想したのはドラえもん「のび太の恐竜」だった。名前だって「ピーちゃん」か「ピーすけ」かの違いしかないではないか。「のび太と恐竜」は最初のコミックス(10巻)で読んで泣いたなあ。映画や長編コミックになる前のやつ。歳バレる。


友田とん『 犬、カブトムシ、その他の生きもの』;なぜこのテーマでこの人に依頼したのか。と言いたくなる。そう言わせるのが狙いであると思いつつ、言いたくなるのが、面白い。連想した本は、同じ著者の『百年の孤独を代わりに読む』しかないというのも、この方の魅力なんでしょうね。脱線転覆大作戦。もしくはドリフ。


井優佳『叔父さんのうみ』;「海はよ~、海はよ~」と、「おやじの海」(村木賢吉)がずっと頭の中に流れていた。題名だけの連想でごめんなさい。あと、連想したのは『猫の客』(平出隆)。我が家で飼っているわけではないこととか、なんともいえない切なさを感じるところとか。


kamebooks『亀は待ってくれる』;亀といえば、『モモ』(エンデ)のカシオペアか、浦島太郎の助けた亀か。いずれも、亀は異世界に連れて行ってくれる時間を越えた存在である。であるはずなのに、亀について行くのではなく、連れてきちゃうものだから、実は著者宅のほうが別世界になっているのではないかと推察している。『モモ』はおじさんが読んでも名作。


中岡祐介『千の風になった犬と、父の絶叫』;タイトルそのまま、著者のお父さんが飼い犬がなくなったときに叫んだエピソードである。それにしても「千の風」ってよく考えるとおかしな比喩だ。「千」はたくさんあることとの例えだろうが、目に見えない物理現象をそのような可算数で表現することは、物理専攻(著者の父)には理解が難しかったろうし、物理が苦手な私にもわからない。それでも、しばらく考え続ければ同じように「千の風」に何かを悟る機会があるのだろうか。求めていた命題に解が見つかった瞬間は、驚きと喜びで、やはり声が出るのだろう。久しぶりに『博士の愛した数式』(小川洋子)を読み返したくなった。


私の感想や妄想が参考になるかわかりませんが、とても読みごこちが良く手元に置いておきたい文集でありました。