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あこがれの官能評価

品種改良の目的は多収(たくさん獲れる)とか、病気に強いなどのほかに、「おいしい」がある。数ある種類の中から「おいしい」品種を選ぶには、関係する物質などを分析する方法もあるが、最終的には実際に食べて評価する必要がある。例えば、お米の品種改良では、時期になると毎日試食をしている。仕事でご飯が食べられるなんて、なんだかうらやましくすら感じるが、責任ある重要な業務なのだ。

食べる評価を「官能評価」という。

お米の官能評価は、実際に電子釜で炊いたご飯を食べ比べて点数をつける。官能評価を見学したことがあるが、皆ひとことも喋らず、難しい顔で黙々と口の中に集中していた。めくるめく官能の世界は、担当者の口の中だけで展開されていた。

「おいしい」とは何かを、より多くの人が美味しいと感じる方向・尺度で、客観的に判別して点数化しなければならない。お米の場合だと、つや、ねばり、柔らかさ、味といった項目がある。

なんでもおいしく食べてしまう人は、官能評価に向いていないそうだ。


北海道のお米が美味しくなったことは私自身強烈に体感している。あのまずかった実家の米が、品種が変わっただけでこんなに美味しくなるのかと驚きだった。

先人達が「コシヒカリ」に追いつけ、追い越せと、たくさんの稲を交配して育てて、分析して、食べ比べて、より美味しいモノを選んできた努力の積み重ねの上に、今の品種がある。


「官能評価」は、今も品種改良の最前線で続けられている。

なお、官能評価で少なからず食べているはずなのに、担当者がみなシュッとしているのは、ちょっと解せない。