麦秋だよ、雨あがれ
窓から見えるところに小麦畑がある。
昨日、その畑にコンバインが入った。雨の予報が心配だったが、無事に収穫が進んでいるようだ。
麦秋である。
麦秋には晴れが似合う。似合うというか、晴れてくれないと困る。雨が降っていると収穫作業ができないし、そもそも小麦は雨に弱い。
※数年雨、あるドラマで豪雨の中コンバインで(このときはお米の)収穫を行っていたシーンがあったが、それは絶対やってはいけない。びしょびしょの穀物は機械の内部に張りついて詰まるし、その後の乾燥も非常に難しく短時間でカビや異臭が発生する。収穫は、雨が止んで穂が乾いた、少なくとも水気のない状態で行うのが基本中の基本である。
小麦の場合、特に収穫期の長雨で生じる被害に「穂発芽」がある。穂に実った小麦は、濡れた状態が続くと、収穫前であっても芽を出してしまうのだ。
発芽した小麦は酵素の働きでデンプンが壊れてしまう(糖に分解されて発芽のエネルギーになる)。デンプンが壊れて何が問題かというと、小麦粉を水で溶いて火に掛けても、とろみがついたり固まったりしなくなる。うどんはお湯に溶け、お好み焼きはつながらず、スポンジケーキは膨らまい、といった問題が生じる。小麦粉業界では、穂発芽した小麦(低アミロ小麦)は小麦ではない、とまで言われている。
だから、小麦に関わる関係者は、この時期の天気予報を真剣な眼差しで毎日毎時見ている。
穂発芽が起こりやすいかどうかには、品種の影響もある。このため、小麦の品種開発では、穂発芽をいかに減らすかが大きなテーマのひとつだ。
過去の品種は2~3日の雨で穂発芽したためしばしば被害が生じていたが、今の主力品種「きたほなみ」は5~6日の雨には耐えられるようになり、穂被害は明らかに減ってきている。
それでも1週間以上雨が続くと被害が大きくなる。
小麦の収穫期を迎えた地域ではどこも、窓の外を祈るように眺めているはずだ。
どうか、週間予報が大きく変わりますように。大勢集まって、一斉にフーッて吹いたら、雲を飛ばせられないだろうか。
全国から選りすぐりの晴れ男/女を、収穫の始まった産地に集めるイベントを開くべきかもしれない。