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『抗体陰性の人でも新型コロナの免疫記憶を持っている』nature communications 論文

『SARS-CoV-2に暴露した人は、PCR陰性・抗体陰性・無症状でもT細胞の免疫記憶を持っていて、それは感染防御に有効と考えられる』

 という論文がnature comunicatinsに載った。

(訂正:当記事でははじめnatureと記載していました。nature communications はNature Research  によって発行されているオープンアクセスの学術雑誌で厳正な査読を経て掲載されますが、いわゆるNature誌とは別物であるため訂正いたします)

 この論文は、日本人に蔓延するメディア洗脳のウソを暴いてくれる可能性がある。

ウソ1:日本人の多くは抗体を持ってないからまだ新型コロナを体に入れたことがない。

ホント1:ウイルスを吸い込んだことがある人でも抗体を持っていないことは普通にある。

 SARS-CoV-2というのは、いわゆる新型コロナウイルス(←いつまで「新型」言うのか)の正式名称である。

 免疫というと抗体が有名だ。「抗体=免疫」「抗体がない=免疫がない」と思っている人もいる。そんな人は容易にNHKにミスリードされて「これまでの調査で日本人の抗体保有率は1%以下だから、まだほとんど免疫を持ってない。だから感染対策しなくちゃ!」と考えてしまいがちだ。

 T細胞というのは、簡単に言えば獲得免疫を司る免疫細胞である。

 免疫には獲得免疫と自然免疫があり、一度経験した病原体を記憶して次に効率よく反応するのは獲得免疫だ。

 獲得免疫には大きく分けて2つ、細胞性免疫液性免疫がある。

 細胞性免疫とは、細胞自体が細菌・ウイルス感染細胞・癌細胞などを攻撃する免疫。T細胞はその司令官(CD4+)であり、自ら戦う強い武将(CD8+)である。

 液性免疫とは、抗体で攻撃する免疫抗体をつくるのはB細胞。弓矢づくり職人兼弓矢部隊のような感じ。ただこの矢(抗体)、相手を知ってその相手専用にそれぞれ作り替えなくてはならない。

 またB細胞の分化や抗体産生を誘導するのは司令官であるT細胞である。

 そもそも、血液中のリンパ球の70~80%はT細胞であり、T細胞こそ獲得免疫の主役なのだ。

 今回の研究では、PCR陰性・抗体陰性・無症状の濃厚接触者(患者の家族など)でもT細胞に免疫記憶を持っていることが明らかになった

(PCR陰性・抗体陰性の濃厚接触者69人中40人、57.97%がT細胞検査で陽性

 PCR陽性になったことがなくても、抗体を持っていなくても、新型コロナウイルスを吸っていて、それでも無症状なことは珍しくないのだ。

 私がこれまで言ってきた

 や

 を抗体保有率が低いことを理由に否定することはできなくなったということだ。

 繰り返すが、PCR陽性になったことがない・抗体検査も陰性・新コロっぽい症状になったこともない、そんな人でも新コロの免疫記憶を持っている(つまり新コロを体に入れたことがある)ことは十分あり得る

 いくらあなたが「記憶にございません!」と言っても、T細胞は記憶しているのだ。


ウソ2:抗体がないから免疫がない。

ホント2:免疫記憶があれば抗体がなくても免疫を発揮できる。
 

 この研究では、抗体がなくても免疫記憶のあるT細胞は新コロのタンパク質に対して速やかに反応できることが明らかになった。

 するとそもそも抗体の重要性が疑われることになる。抗体はオーダーメイドのミサイルのようなものだ。一つのタンパク質ごとに特別なタンパク質を作成しなくてはならず、コストがかかり効率が悪い。またその抗体が自分の似たタンパク質を誤爆してしまう危険もある。体としては本来、抗体なんか作らずにすめばそれに越したことはないのだ。

 わざわざその客専用の在庫をかかえなくても、あ、このお客さんはこういう好みだったね、と店員が記憶しておいてその場で対処できれば楽なのだ。

 抗体保有率ではなくT細胞免疫保有率を調べれば、日本人が高齢化率が高いにもかかわらず欧米に比べコロナ患者も死者も少なく、無症状者がほとんどである理由の一部を説明できるかもしれない。


ウソ3:コロナウイルスに免疫は長続きしない。

ホント3:免疫記憶は長期間減ることなく持続する。

 「コロナに免疫は効かない、長続きしない、だから何回もかかる」というようなデマも流されてきた。

 これは以前の研究で、コロナウイルス(SARSやMERS)の抗体や抗体を作るB細胞の免疫記憶は短期間で消失した報告や、新型コロナの患者でも回復期のうちにIgG抗体が70%下がった報告などが根拠とされていた。

 一方、別のSARSの研究では、T細胞の免疫記憶は少なくとも6-11年持続していることが確認されている。

 今回の研究でも発症から48-86日後で新型コロナへのT細胞の免疫記憶は減ることなく安定して維持されていた。

 身体にとって抗体の材料となるタンパク質は貴重だ。オーダーメイドのミサイルを作り続け、在庫を抱え続ける無駄など、本当はさっさとやめたいのだ。(常に変異を繰り返すウイルスそれぞれにワクチンを打つのと同じくらい無駄なのだ)

 抗体は症状が重い人ほど抗体価が上がることがわかっている。一方、無症状者では抗体はあまり作られない。つまり抗体をつくるのは、抗体をつくらなければ対処できないようなひどい感染の時だけということになる。

 抗体を作らなくてはならないようなひどい感染を起こさなくても、身体はしっかりT細胞に免疫記憶を持って、次に同じウイルスがきた時に対処できるようにしている。

 そしてT細胞の免疫記憶で対処できれば、抗体は必要ない。

 無症状で済んでいるのは、そういう人たちである。

 何回も発症するのは免疫が効かないからではなく、その人の免疫力が低いからである。(ビタミンD欠乏などが原因

 するとワクチンで抗体を作ることを目的とする考え方そのものが、体に余計な負担を強いていることになる。(いらん抗体を無理やり作らせるワクチンがどれだけ人を苦しませることか)ましてや人の細胞にウイルスの遺伝子を組み込んで何度も抗体を作り続けさせるなど、根本的に間違っていると言っていいだろう。

 T細胞の免疫記憶は、抗体より汎用性が高く、交差免疫と言って新型でない従来のコロナウイルス(その境界線が不明だが)やいわゆる「変異株」(RNAウイルスは常に変異してる)にも対応できる可能性がある。

 今回の研究からすると、ほとんどが無症状で抗体保有率が低い日本人の多くは、既にT細胞の免疫記憶を持っているのかもしれない。

 すると、とっくに記憶済みの新型コロナを恐れることも、PCR陽性者を見つけることも、自粛・マスクなどの感染対策も「1年半前の雨に傘をさす」ような無駄であり、ワクチンなど百害あって一利なしであることになる。



(私は1年以上前からそう言ってる。さらにT細胞免疫以上に抗微生物ペプチドを中心とした自然免疫こそが重要であると考えているが、それはまだ言われないな〜。だって普通に考えて、T細胞なんてできたのは胸腺が発達した硬骨魚類からでかなり進化の後段階でしょ?単細胞生物の頃から生物は免疫を発揮して生き抜いてきたのよ?今も獲得免疫を持ってない生物も多い。どっちが重要かってそりゃあ...と...それは今回の論文とは関係ない...)


(尚、この文章で取り上げた論文はいずれも主題の論文の参考文献に含まれます)

追記 論文の要約の和訳

タイトル

SARS-CoV-2への暴露は検査でウイルス感染が陰性の人にもT細胞記憶をつくっている

要約

 T細胞免疫はCOVID-19からの回復に重要であり再感染への免疫強化をもたらす。しかし、ウイルスに暴露された個人のSARS-CoV-2特異的なT細胞免疫についてはほとんど知られていない。
 我々はこの論文でCOVID-19から回復した患者と濃厚接触者におけるウイルス特異的CD4+およびCD8+T細胞記憶について報告する。
 我々はまたCOVID-19患者において濃厚接触者よりもT細胞記憶は量的にも質的にも大きく強いことを示す。
 しかし、濃厚接触者のT細胞反応の増殖容量・大きさ・質は健常者とは難なく見分けがつく。このことは濃厚接触者は検査で陽性になる感染がなくともSARS-CoV-2に対するT細胞免疫記憶を獲得することができることを示唆する。
 さらに、無症状であれ有症状であれCOVID-19患者は同レベルのSARS-COV-2特異的T細胞記憶を持っている。
 全体として、この研究はCOVID-19患者と濃厚接触者のメモリーT細胞の汎用性と潜在能力を示し、このことは感染防御に重要である可能性がある。


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