見出し画像

「アラブとユダヤの対立」の時代は終わった 民族主義運動でなく単一民主主義国の樹立を

アワド・アブドルファターハ&ジェフ・ハーバー
 電子インティファーダ、2020年12月17日

 イスラエルと国交正常化するアラブ国が増え、対イランでアラブ・イスラエル同盟が進行するなど、中東情勢は変化している。いまやパレスチナ問題は、アラブとユダヤの対立ではない。パレスチナ解放をイスラエル民主化闘争とセットで考えるべきだ。それはアラブの春で見られたような、民族主義運動よりも自由、平等、基本的人権、市民社会的理念などを基調とする新しいパレスチナ運動像だ。    (訳者 脇浜義明)

 「パレスチナ・イスラエル紛争」は、交渉や妥協では解決しない。シオニズムは殖民・植民地主義事業である。ユダヤ人入植者は、他人の土地を奪う目的でヨーロッパからパレスチナへやってきた。その国がもともとユダヤ国だったという神話をでっち上げ武力で制圧し、イスラエル国家に仕上げてきたのだ。パレスチナ人や超正統派ユダヤ人は植民地化の過程に異議を挟めず、「交渉相手」ではなく「処理」対象とみなされた。
 パレスチナのユダヤ化事業がほぼ完了した現在、先住民にとってパレスチナでの人種分離政策により、本来彼らの国であった土地の15%に散在する貧しい飛び地に封じこめられている。
 植民地支配から抜け出る道は、脱植民地化しかない。パレスチナ難民の帰還と社会統合、政治的、経済的、イデオロギー的、文化的な支配の全面解体が必要だ。
 非植民地国家の建設にあたっては、植民地化された人々の平等な参加が必要だ。新しい政治体制と、それを構成するすべての人々に民族的、人種的、宗教的に平等な権利を保障することが必要である。資源、とりわけ土地の平等配分、並びに入植者の略奪の歴史を認め、その犠牲者への賠償が必要だ。
 3年前、脱植民地主義運動がハイファのパレスチナ人共同体から生まれた。「民主主義的一国運動」(ODSC)である。イスラエル内パレスチナ人、西岸地区、ガザ地区、ディアスポラや亡命パレスチナ人など多くのパレスチナ人、並びに反植民地主義のユダヤ人がこの運動を担っている。ヨルダン川から地中海の地を、パレスチナ難民の帰還を織り込んだ民主主義的一国にするという運動である(ODSCの10プログラム・別掲)。
 パレスチナでの単一民主主義国の建設は実現可能な、重要で、緊急性がある事業だ。みんなの参加と実践によって成し遂げられる包摂的事業で、これをパレスチナ解放運動の主流とすべきだ。

ODSCの10プログラム

・脱植民地化過程を通じて単一の共有的政治的コミュニティを建設する。
・ヨルダン川から地中海の間の地に帰還難民を含むすべての住民が平等に参加する単一民主主義国を建設する。すべての国民は平等な権利を有し、自由で安全が保障される。国家は憲法に基づき、国民統治と立法の権限は国民の合意に基づく。
・1948年及びそれ以降に故郷を追われたパレスチナ難民の帰還と生活再建と社会、経済、政治的統合を全面的に支援し、略奪された私的・公的財産の補償に全力を尽くす。
・民族、社会的出自、皮膚の色、性別、言語、宗教、政治的信条、性的差別を禁じる。すべての人は同一国籍を有し、行動の自由、居住の自由などあらゆる分野における平等な権利が保障される。
・民族的、人種的、宗教的、階級的、性別的権利と結社の自由は完全に保障される。議会は特定グループを優先したり、差別する立法権限を有しない。
・経済政策は長い間の搾取と差別の犠牲者への癒しを基点にして実行される。国はすべての国民が教育、雇用、経済的安定、人間的尊厳を獲得できる機会を得るように、長期的創造的な政策を示す。
教育、文化、経済に関する公共機関を助成する。
・宗教上の儀式が必要な「宗教婚」と並び、行政機関に届け出れば成立する「民事婚」を発展させる。
・国は国際法を遵守し、紛争を話し合いと国連憲章に基づく集団的安全保障で平和的に解決する。
・ODSCは民主主義、社会正義、独裁者や外国支配がない自由で平等な社会を求めるアラブの進歩勢力と連帯・協力する。
・ODSCは自らを公正で平等で、抑圧や人種差別や帝国主義や植民地主義がないもう一つの世界秩序を求めて闘う。

【お願い】人民新聞は広告に頼らず新聞を運営しています。ですから、みなさまからのサポートが欠かせません。よりよい紙面づくりのために、100円からご協力お願いします。