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卒業証書 「元号」記載のため 戸籍確認を強制する大阪府教委

恩地 庸之(スクラムネット=平和教育を求めてスクラムする府民・労働者ネット)

 2012年、大阪府は、教員の「君が代」不起立問題に狙いを定めて大阪府三条例を制定した。それは「同じ理由による懲戒処分は、三度目には懲戒解雇とする」(職員条例)、知事が教育の「基本計画の案」を作成する(教育行政基本条例)など、維新政治の危険な動向を露骨に示すものだ。
 私たちは、この府三条例への強い危機感をきっかけに集まった。教員への「君が代」強制は、当然、子どもたちへの「君が代」強制へとつながる。現に府教委は生徒の「斉唱指導」を明確に強めている。
 私たちはまた、元号使用を強制するな、育鵬社等右翼系教科書を採択するな、学校の序列化をいっそう進める統一テスト(チャレンジテスト)を廃止せよ、など、府下8市民団体共同での府教委申入れ・交渉も含めて、取り組みを続けてきた。
 そうしたなか、卒業証書「生年月日」の「元号」強制反対に対する府教委の回答は、「指導要録に基づき記載すること」としているから、という回答になっていない「回答」で居直っている。
 そして府教委は一昨年、改めて「様式」なるものをつくり、「氏名、生年月日」を「戸籍に記載されたとおりに」書くようにと「確認」を求める指示をしてきた。この「戸籍」削除の要求に対する府教委の回答は、「卒業後に発行された卒業証明書等が、万一卒業者本人の氏名と異なっていた場合に」必要だからという、実際には到底あり得ない仮定を根拠にしている。
 「戸籍」は、かつて就職、結婚などの際における差別的な身元調査として利用されてきたため、1970年代に被差別部落の方たちを主とした広範な抗議、闘いが続けられた。その後「部落地名総鑑」の問題も出現、結局、「戸籍」の閲覧は原則禁止する法改正(請求者の本人確認)が行なわれるなど、根本的な是正がなされた。「戸籍」問題にはこうした歴史的経緯があり、そのうえで今は、「戸籍」は社会の中で限りなく存在を否定されるものとなっている。
 私たちは、差別を生んできた要因の執拗な「生き残り」を根絶する姿勢で臨みたいと考えている。なお府教委には、「本人確認は住民票の確認で済むはずである」と伝えている。
 政権(支配権力層)が、〈教育〉の支配を最重要課題の一つとすることは、古くからの歴史を見ても明らかだ。思想面で国民を掴むことは、彼らにとって不可欠に重要なことだ。 日の丸・君が代、元号の強制、その他国家思想の吹込み、また右翼系教科書の採用、学校の序列化なども、彼らの「国民教育」への長期的視野の下にある。それはナショナリズムの煽動であり、また日本資本主義経済を持ち直すために、逆に国境を越えた「新グローバリズム」を担う先兵として、未来の労働力の提供元である子どもたちを〈管理層―中間層―単純労働者層〉へと分断しつつ養成しようという管理支配だ。
 したがって「日・君」問題も元号強制問題も、「思想・良心の自由」の問題であるだけでなく、民衆に対する政治的(階級的)支配という国家権力の根底的な位置から発するものであることをみなければならない。「日・君」も「元号」も「戸籍」も、〈天皇制〉の論理が貫かれている。〈天皇制〉への対決なしに、これらの闘いはない。

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