論説委員会 遺伝子組み換えコロナワクチン 大国が製薬会社を牛耳り買い占め その有効性と危険性とは は

 遺伝子組換え技術やバイオテクノロジーの進歩を背景に、感染症予防を目的としたワクチン開発が進められている。これらの技術の中には、遺伝子組換え技術を用いて迅速にウイルスを合成するものも含まれている。また、遺伝子治療で用いるウイルスベクターのように、目的となる遺伝子を発現するワクチンの開発も進められている。
 これら遺伝子組換えワクチンは、高い有効性が期待されているものの、接種された場合の安全性は従来のワクチンとは大きく異なる可能性がある。
 特に、増殖性のある遺伝子組換えワクチンを用いる場合には、第三者への伝播の可能性が高くなり、ウイルス排出による安全性リスクを慎重に評価する必要がある。
 これまでのCOVID-19遺伝子組換えウイルスワクチン臨床試験での被接種者数は、数千人から数万人台と、対象者数が限られているため、数万人に1人という、少数の健康被害については見逃される可能性がある。新しく導入されるワクチンについては、数百万人規模に接種されたのちに新たな副反応が判明することも考えられ、数年にわたる長期的な有害事象の観察が重要だ。
 また数量の限られた初回接種分の大半は、米国や英国、欧州連合などの一部の国が買い占め、短期的には他の国々にほとんど行き渡らないという問題がある。厚生労働省によると日本政府は遅くとも2021年の上半期に届くよう、アメリカのファイザー社から1億2000万回分、モデルナ社から4000万回分の供給契約を交わしているが、遅れる可能性もある。
 このように、初期供給が妨げられているのは、開発した製薬会社が生産メーカーを指定できる仕組みがあり、そのノウハウを独占するからだ。


 COVID-19ワクチンは、全て各国政府から多額の公的資金を受けて開発された。にもかかわらずファイザーとモデルナの両社は、「原価販売は行わない」と表明している。
 特にモデルナ社は米政府から25億ドルもの公的資金を受けたにもかかわらず、1人当たり50~74ドルの高価格を提示しており、低・中所得国向けの価格も明らかにしていない。また、ファイザー社のワクチンは、提携先のビオンテックを通じてドイツ政府から4億4300万ドルの助成金を受け取り、欧州投資銀行から1億1800万ドルの融資も受けている。ところがファイザー社は、1人あたり40ドルの価格を設定。暴利を得ようとしている。
 先進国がワクチンを囲い込めば、資金力に乏しい途上国に行き渡らない可能性があり、公衆衛生の専門家からは自国優先の「ワクチンナショナリズム」に批判の声も上がっている。
 政府や製薬会社は、研究開発、臨床試験、製造のコストなど、重要な情報を公開することで、ワクチンの開発に資金を提供し、完成したワクチンの購入費用を負担することになる納税者や公的機関への責任を果たさなければならない。
     (編集部・村上)

【お願い】人民新聞は広告に頼らず新聞を運営しています。ですから、みなさまからのサポートが欠かせません。よりよい紙面づくりのために、100円からご協力お願いします。