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森友問題公文書改ざん 「赤木ファイル」の黒塗りは許されない 菅首相による改ざん指示の疑惑

豊中市議会議員 木村 真

 森友問題で公文書改ざんを強要され、自死に追い詰められた財務省近畿財務局職員・赤木俊夫さん。その妻・雅子さんが、国と佐川宣寿財務省理財局長個人を相手に、損害賠償を求めている裁判で、5月6日、被告国は、赤木さん自身が改ざんの経緯を詳細にまとめたとされる《赤木ファイル》を提出する、と回答した。
 赤木さんの自死後、直接の上司に当たる近畿財務局統括国有財産管理官・池田靖氏が雅子さんのもとへ弔問に訪れた際、赤木ファイルについてこう語っている。「どこでどうで、何がどういう本省の指示かっていうことが、めっちゃきれいに整理してある。全部書いてある」「前の文書であるとか修正後のやつであるとか、何回かやり取りしたようなやつがファイリングされていて、それがキチッと、パッと見ただけで分かるように整理されてある」「これ見てもうたら、われわれがどういう過程でやったかというのが全部わかる」。
 この赤木さん自身が詳細な記録をまとめたものが、いわゆる《赤木ファイル》である。池田氏が雅子さんに語った音声データは、雅子さんを通じてマスコミに提供され、広く報道されている。裁判でも、原告の雅子さんはこの音声をもとに赤木ファイルの証拠提出を求めていた。
 ところが国は、ファイルの存否すら明らかにせず、回答を引き延ばし、裁判長から催促されてようやく、「5月6日までに何らかの回答をする」としていた。あると分かっているファイルの存在をついに認め、6月23日の次回口頭弁論で提出すると回答したのである。赤木ファイルは、裁判における大きな焦点であることはもちろん、森友問題の公文書改ざんの全容を解明する上でも、非常に重要な意味を持つ。6月23日に何が出てくるのか、要注目だ。
 一つ気になるのは、回答書の中で国は、赤木ファイルを提出するとする一方で、「マスキング処理」が必要とも述べていること。いわゆる 〝黒塗り〟 だ。裁判所に提出する書類をあらかじめ黒塗りするとは、まったくもってふざけた話。「公務秘密文書が含まれる可能性」「パスワードなど情報セキュリティに支障を来たしかねない情報」「幹部以外の職員の個人情報」などと言い訳を並べている。
 それなら裁判所へはそのまま丸ごと全部提出した上で、報道提供資料など一般公開する段階で、裁判長の判断で一部非公開とすればよいだけのこと。裁判所に提出する前に、被告が勝手に「この情報は裁判とは関係ない」などと勝手な判断で黒塗りするなど許されるはずがない。市民の監視が必要だ。
 森友公文書改ざんでは、菅首相の関与も強く疑われている。森友問題が大問題となった17年2月。国会で安倍首相が「自分や妻が関与していたなら、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁し、一気に政局化したのが17日。最初の改ざんが行われたのが26日。ちょうどその真ん中の22日に、当時官房長官だった菅が、官邸に佐川理財局長と佐川の後任理財局長となる太田充(現財務事務次官)を呼んだことが分かっている(国会で太田自身が答弁)。
 「国有地売却の経緯について説明を受けた」とされているが、それだけのはずがない。いくらなんでも「改ざんしろ」と直接的な指示まではないだろうが、「総理があれだけの答弁をした。事の重大性は、もちろん分かるね。後は君たちに任せるよ」とかなんとか、「忖度の強要」があったに決まっている。その4日後の26日から、佐川が指揮をとって大規模な改ざんが始まるのだ。菅は、「たまたま官房長官だったので、間接的に関わったに過ぎない」のではなく、特に公文書改ざんについては、直接の関与が強く疑われる「被疑者」なのだ。


 最後に、重要なことを一つ。実のところ、公文書改ざんは森友問題の核心ではない。「石橋を叩いても渡らない」などと揶揄されるほどに慎重な国家公務員(それも「官庁の中の官庁」と言われる財務省)が、公文書改ざんなどという国家犯罪を、本庁と近畿財務局とにまたがって大規模かつ組織的に行ってまでして、いったい何を隠そうとしたのか。核心はそこにある。
 答えは、豊中市内の国有地の払い下げの異常さである。鑑定価格9・56億円に対し、売却価格は1・34億円、しかも予め森友学園には「有益費」名目で1・32億円が支払われており、「実質ゼロ円」にも等しい、異常な売却。安倍首相の妻・昭恵が関与し、異例中の異例の処理を繰り返し、異常な払い下げが行われた。そうしたこと全てを隠すために、改ざんが行われたのだ。財務省が苦し紛れにどんなに空疎な言い訳を並べ立てようとも、元の文書にあった「安倍昭恵」という名前5カ所全てが削除されたという事実が、改ざんの理由を雄弁に物語っている。
 《赤木ファイル》は、雅子さんが起こした裁判における公文書改ざんにかんする真相究明のカギを握っている。しかし、それは森友問題の全体でもなければ、核心部分でもない。「事件」を隠すために行われたのが改ざんであり、「事件」そのものではないからだ。
 「事件」とはすなわち、タダ同然の国有地払い下げであり、安倍昭恵の関与であり、設置基準を満たしていないのに大阪府と松井知事(当時)が学校設立を認可しようとしたことである。「状況証拠」は揃っているが、「物証」がないのをよいことに、関係者全員が知らぬ存ぜぬを決め込んでいる。森友問題を終わらせるためには、まだまだ道のりは遠い。

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