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大阪 コロナ禍が露わにした利権まみれ、無責任な政治 問題の根本=資本主義を乗り越える時

豊中市議会議員 木村 真

 コロナ禍が明らかにしたのは、この国の生活基盤を支える仕組みがいかに脆弱かということ。30年にわたり全国で保健所の数を減らし続けたことが、感染拡大を防ぐことを難しくしたことが典型例です。
 近いところでは「小泉・竹中路線」、少し遡れば、中曽根による国鉄解体などの「行革路線」(世界的には「サッチャー・レーガン路線」)に始まる一連の新自由主義的政策です。これによって、「採算」とか「収支」とは別の原理・価値観で成り立っているはずの公共領域に市場原理を導入し、私企業が金儲けのネタとして好き放題に荒らしまわることを許し、人びとの共有財産を売り飛ばしてきた必然的な帰結だと思います。
 もう一つは、(日本に特有の問題なのかもしれませんが)、無責任な政治が事態を悪化させたことです。「自粛要請」はするが補償はしない。当然、人の移動は止まりませんから、感染拡大を止めることなどできるはずもありません。
 「アベノマスク」をめぐるドタバタ、持続化給付金でトンネル法人を迂回した電通への利益供与、旅行・観光業界から多額の献金を受けた二階幹事長はじめ自民党議員たちが感染急拡大の中でゴリ押しした「GoToキャンペーン」、緊急事態宣言下の国会での検察庁法改悪の動きなど、人びとの生活が危機に瀕し健康と生命が脅かされる状況にあってなお、私利私欲と利権分捕り合戦。政策として感染拡大を抑える方策はないまま、手指消毒や外出自粛など個々人の努力と心がけを求める。「政治の劣化」というだけでは言い表せない、恐ろしいばかりの無責任ぶりです。
 さすがにこの状況に直面して、「いくらなんでもひどすぎる」という声が広がっています。発足直後には高かった菅政権の支持率は急落。人びとの生命と健康を守り支える基盤である保健所を減らし続けてきたことに象徴される社会のいびつさが露わとなり、一連の新自由主義的政策=今日の資本主義は、「誤っている」あるいは「行き過ぎ」だと、多くの人が感じています。これを好機ととらえ、社会の流れを変えるための運動が必要です。
 全国各地で、障害者・女性・外国籍住民・生活困窮者・非正規労働者などの生活と権利を守る活動、食の安全安心、反原発と再生可能エネルギーへの転換、反戦平和・反基地、その他さまざまな分野で、多種多様な活動を展開しています。
 私も、自治体議員として、無原則な民営化や民間委託など公共領域を私企業に売り渡す動きに反対し、自治体が市民の生命と生活を守り支えるよう求めてきました。また、ユニオン(誰でも一人でも入れる労働組合)の役員として、中小零細企業で働く労働者からの相談を受け、会社と交渉したり、抗議行動や訴訟で争ってきました。こうした具体的な運動は大切ですし、そうした運動からの具体的な要求は、「反転攻勢」の基礎ともなるはずです。
 しかし、個別分野での運動では、一つの課題がクリアできてもすぐに別の課題が現れたり、ある分野での前進が別の分野で事態の一層の深刻化を招くなど、「永遠に続くもぐら叩き」状況から抜け出せないのも現実です。
 現象を追うだけで、それを生み出す構造に手を付けない「対症療法」の限界です。反貧困運動など、個別テーマを超えた横のつながりをつくるネットワーク化の動きもありますが、そこにつながるグループ・個人が、目指すべき社会像や方向性について、どこまで射程に入れているのか? 
 現象ではなく「構造を改編する」とき、何を「構造」と捉えるのか? そこがある程度共有できていないと、単なる情報共有や意見交換以上の活動にはならないようにも思えます。
 キーワードは「反資本主義」です。これほど資本主義の矛盾が顕在化しているのに、資本主義そのものとの対決を避けて通ることなど、ばかげています。「反・新自由主義」「行き過ぎた資本主義を是正する」では、公平な分配の話でしかなく、それは「いかにパイを大きくするか」と直結します。
 地球環境という観点からあり得ない選択肢だし、個別企業が、また一つの国が、「グローバルな競争を勝ち抜く」という論理に絡めとられてしまい、結局は現状を変えることはできません。対決すべきは「新自由主義」ではなく「資本主義」だ。「分配」だけでなく「所有」「生産」を含めた人間活動のあらゆる局面における資本主義的な様式との対決でなければならない。
 資本主義を乗り越えることは、夢物語どころか、私たちが生き延びるために不可避でリアルな課題であり、資本主義との対決なしに人間らしく生きられる社会を考えることこそ夢想でしかありません。私たちに今、必要なのは「大きな物語の復権」だ! とまぁ、そんなふうに考えています。
 「SDGsは大衆のアヘンである」と断じ、「脱成長コミュニズム」を唱える「人新世の『資本論』」(斎藤幸平・著)が、すでに7万部を超えたそうです。極端とも思える主張ですが、「市民運動」などとは関係なく、普通に売れているのです。
 私は、運動に関わっていない若いお母さんたちと一緒に、社会問題を取り上げたDVDを観た後で、お茶を飲みながら感想を話し合う「カフェ」を開いています。数カ月に一度のペースで、10名ほどの小さな集まりです。テーマや上映作品を決めるのも、チラシをつくるのもコアメンバーの3人の若いお母さんたちです。コロナ禍で中断していたのですが、12月5日、久しぶりに開きました。
 DVDを観た後の「おしゃべりタイム」で、ある人が「これ、すっごくおもしろいから、ぜひ読んでみて」と差し出したのが『人新世の「資本論」』でした。根本的な変革を求める思いは、こちらが思っている以上に拡がっています。堂々と、ストレートに訴えましょう。「資本主義を乗り越えよう」と!

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