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国際問題としての 原発汚染水海洋放出

シネマブロス 宗形修一

写真:福島の若者たちの抗議行動

 2020年秋現在、福島原発事故の汚染水排水問題は、政府のシナリオ通りに進みつつある。この汚染水問題だけでなく、中間貯蔵施設・除染なしの避難解除の動きなど、何でもありの状況が作られつつある。県民の意思はもてあそばれている。
 9月20日双葉町にオープンした東日本大震災・原子力災害伝承館も、事故原因を巡る展示の曖昧さが指摘されている。特に汚染水排出問題での東電と環境省のミスリードは目に余るものがあり、今年度中に汚染貯蔵タンクは満杯になり、海洋放出が必至のため、政府は今年度中の結論を県民に要求している。
 これら次々に出される放射能の課題に、県民感情は千々に乱れ、徐々に政府シナリオに収斂されつつあるのが、現在の福島県の状況である。
 それに対して、県内各自治体・諸団体の海洋投棄反対動きが活発になっている。汚染処理水に対する意見書可決や決議をしている議会や漁業団体は、7月27日現在、新地町・相馬市・南相馬市・浪江町・川俣町・桑折町・三春町・郡山市・石川町・西郷村・喜多方市・会津坂下町・金山町・只見町・南会津町だ。三春町と西郷村は、海洋・大気どちらの放出にも反対で、陸上での保管継続を求めている。飯館村・会津若松市は賛否を明確に示さないまでも放出処分による社会的影響を懸念し、 会津坂下・金山など海から離れた6議会は、県民の意見を聞く公聴会の開催を明言している。
 近県の動きとして、宮城県議会は3月に「放出処分反対」の意見書を可決。茨城県大井川知事も「海洋放出は容認できない」と明言、茨城沿海地区漁業協同組合連合会も放出反対の立場である。東京都小金井市議会は6月に「全国で公聴会を開き陸上保管を求める」意見書を可決している。
 他団体からは福島県漁業協同組合連合会・全国漁業協同組合連合会が反対表明しているが、当事者である福島県の内堀知事は反対を明言していない。「幅広い関係者の意見を伺いながら慎重に対応方針を検討するように国に求めていく」と、当事者意識を欠落したコメントを出している。
 福島第一原発を抱える双葉・大熊の町当局は、8月7日に「この問題が住民帰還の妨げになっている」として、対応策を早急に決める要望書を出している。
 県内各団体の動きは、「しゃがの会」は郡山市議会に請願書を提出し、保守系議員会派との学習会、郡山駅前でのスタンディングおよびアピール反対署名集めなどを行っている。「これ以上海を汚すな!市民会議」は、市町村議会への請願書・要望書提出へ働きかけている。21市町村が採択し、県庁前・小名浜アクアマリンパーク前でのスタンディングおよびアピール、学習会・講演会の開催、国および県に対しての要請を行っている。抗議文や、パブコメ4千件20万筆の署名を経産省に提出。また資源エネルギー廃炉汚染水対策現地事務所木野参事官との意見交換会を実施し、公聴会を開くよう要望中だ。「DAPPE」は県庁前・郡山駅前スタンディング・ビラ配り、郡山・福島サウンドデモ、県議会請願書提出、ツイッターデモを行っている。
 海洋放出は太平洋や日本近海全てを汚染する国際問題でもあるため、東アジアの国々との反対運動の連携が必要だ。

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