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社民党 大椿ゆうこ候補インタビュー

 
 菅義偉首相は自民党総裁選(9月17日告示、29日投開票)への立候補を断念した。あれほど権力に執着し続けた首相だが、安倍前首相同様コロナ感染が拡大し続けるなかで政治責任を投げ出した。党役員人事や衆院解散の日程などを絡めた異例ずくめの政権延命策は、党内の強い反発を招き、行き詰まった。
 菅政権は五輪後のコロナパンデミック、病床満床、重症患者の自宅待機死続発という医療崩壊を招いた。批判の高まりは横浜市長選の惨敗で頂点に達した。支持率は30%を切り、党内では菅首相での総選挙は無理との判断が占めていた。首相の小手先の延命策も尽き果て辞任、自民党政治への不信は一層高まっている。
 総裁選後、10月または11月に衆議院解散総選挙が行われる。総裁選は自民党の派閥・人脈が入り乱れ、国会すら開催できず、政権の体をなしていない状況で自民党が敗退するのは確実だが、迎え撃つ野党の足並みもおぼつかない。
 そうしたなか、反自公・反維新で闘う候補を追った。まずは大阪9区(茨木市、箕面市、池田市、能勢町、豊能町)から、社民党公認候補として出馬予定の大椿ゆうこさん(48)に、今の思いなどを聞いた。    (編集部・河住)

「生存のための政権交代」を

【プロフィール】
 大椿ゆうこさんは、関西学院大学非常勤講師として長年勤務してきた。障がい学生支援コーディネーターとして、障害のある学生の就学支援に従事。だが2010年、1年ごとの雇用契約更新で最長4年までの有期雇用を理由に雇い止めになった。労働組合に加入し、現職復帰を求めて4年近く闘ったが、原職復帰はかなわずに職を失った。
 その後、大阪教育合同労働組合執行委員長を経て、2019年に参院選で社民党全国比例代表として立候補したが落選。社民党は昨年、立憲民主党への合流問題をめぐり分裂。吉田忠智幹事長、吉川元衆議院議員も離党し(両名とも立憲民主党に入党)、社民党に残留する国会議員は、照屋寛徳衆院議員と福島瑞穂参院議員のみとなり、福島さんが党首に、大椿さんが急きょ副党首となった。

 昨年、大椿さんのもとに「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(通称・市民連合)」が要求項目を持って訪れた。彼らは野党議員を回っていた。
 話を聞きながら、大椿さんは思った。人々は、自分たちの知らないところで決められた候補者を目の前に並べられ、「さぁ、ここから選んでください」と言われる選挙に、候補者を選ぶことに飽き飽きしているのではないか。一緒に候補者を誕生させ、一緒に政策を作る、そういう選挙をやりたいのではないか。そう感じた大椿さんは、市民と政策を作ろうと試みる。
 昨年12月、大阪9区の市民と彼女の対話が始まった。月1回くらいのペースで開催するなかで、教員や保護者、市民運動家など、さまざまな人の思いアイデアを聞くことができた。
 大阪9区には、都市部の茨木市や、農村地帯の能勢町・豊能町といった、課題も立地条件も違う5つの自治体がある。要求を調整するのに苦労したが、約半年かけて生活補償や雇用、差別撤廃を含む6つのテーマでの政策は完成した。「自分ひとりで作るより、ずっとよかった。ひとりで悩まなくてもいいし、有権者の主体性に支えられた」と本人は語る。
 その政策の特徴は、労働者保護と環境政策だ。労働問題に深く関わってきた彼女がこだわったのは、「有期雇用原則禁止」と「外国人技能実習制度の廃止」を盛り込むことだった。また、緑豊かで農業が盛んな能勢、豊能を中心に農業で生計を立てられる町作り、食物・エネルギーの「地産池消の取り組み」を提唱。大阪の台所を目指す。


 大椿さんが副党首となって初めての選挙。前回とは違い「選挙をコーディネートする」側になった。
 大阪9区の対立候補である維新の足立康史氏との闘いが予想されることから、周囲には「社民対維新」と見られがちだが、そこに終始したくない。「皆の怒り、現政権への違和感やみんなの怒りを伝えたい」と彼女は語る。
 「衆院選の争点は、自己責任論の是非だ」と彼女は言う。そもそも「今の政治で生存できるのか」「補償もない、医療にもかかれない」「それでも今の政権を支持するのか」という大椿さんの問いかけが、「生存のための政権交代」というスローガンになった。
 「生存のための政権交代」。党内では言葉が強すぎる、との声もあったが、市民に危機感を感じてもらうためのスローガンはまさにこれだ!と思った彼女は、あえてこれを使った。


 大椿さんは市民運動にも積極的に参加している。昨年の都構想反対運動では、デモや集会に何度も足を運んだ。
 候補者になると市民運動に参加しにくくなるのではないか、という問いに、「私の政治活動に携わる原点は、支持層は、労働運動や市民運動です。そこと切り離して政治をするなら、私が選挙に出る意味ってないですよね。この人たちが応援してくれたから選挙に出るんです」と彼女は明快に答えた。
 市民運動にかかわることを揶揄されることも多いが、彼女にはひとつの思いがある。労働問題を闘う仲間と政治をつなげるパイプになりたい、というものだ。彼女にとって、政治はひとつの場にすぎない。労働問題を訴え、人々の思いを伝える「ひとつ」の場が政治だ、と彼女は語る。


 大椿さんは裁縫が好きで、集会や演説に着ていく服も自身で作ったり、友人に縫ってもらったりする。
 休みの日は、保護猫のロラちゃんと過ごすことで癒やされている。カタルーニャ人のパートナーは料理上手で、クタクタになって帰ると、スペイン料理と素敵な笑顔で迎えてくれる。
 男女平等を実生活で実践する大椿さん。いきいきとした表情と、まっすぐな眼差しが印象的な人だった。

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