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釜ヶ崎 特別定額給付金 松井大阪市長に要望書を提出 野宿者にも「速やかに支給せよ」

釜ヶ崎センター開放行動 森石 香織

 「野宿者や不安定労働者は新型コロナウイルス感染症の感染拡大や緊急事態宣言によって困難な生活を強いられており、さまざまな支援・救援策を実施する必要があります。なかでも、特別定額給付金の速やかな支給は死活問題です…」―5月11日、私たち釜ヶ崎センター開放行動を含む大阪市内の野宿者支援4団体は、松井市長宛てに特別定額給付金に関する要望を3点にまとめて提出した。
 この要望書提出行動は、「コロナ生活補償を求める大阪座り込み行動」とともに始まった。表面に要望書、裏面には「野宿でも/住民票がなくても/銀行口座がなくても/みんなに10万円給付しろ!大阪市と交渉しよう」との呼びかけ文である。要望書は、①野宿者や不安定居住者に対する、住民票による確認が不要な特別定額給付金の速やかな給付、②野宿者や不安定居住者への現金手渡しでの特別定額金の給付、③窓口で速やかに完了できるような簡素な手続きの整備、というもので、きわめてシンプルな内容だ。
 ところが、大阪市の給付金担当者はまともな回答をせず、「全員に給付がいきわたるようにしたいけれど、自分たちは決められたことをやるだけ」という態度に終始した。当時、「自立支援センターに住民票を置けば給付を受けられる」という松井市長の発言があったので、福祉局生活支援部自立支援課や市民局住民情報担当も協議の場に出席するよう要望しても、出席しないなどの不誠実きわまりない対応をしていた。
 結論から言うと、8月下旬現在、行政が実施したのは③のみと言える。現金手渡しは行政の窓口では無理、住民基本台帳に記載されていることを基準にするとした。ただ、この住民票の置き場を、自立支援センターや簡易宿泊所といった、収入の見込みのある労働者に限定していたところを、初めてあいりんシェルター(夜間宿泊所)と三徳生活ケアセンターにも適用することを認めさせたことは成果だ。
 今後の課題は、これらの情報を行政が周知徹底していないこと、あいりんシェルター/三徳生活ケアセンターには居住実態がなくても置くことができるとしたものの、「登録に同意した施設の運用に任される」という説明のなかで、定額給付金を得た後で住民票を消除する可能性を否定しなかったことなどだ。
 2007年、大阪市が釜ヶ崎地区で、2000人以上の住民票を職権消除したことを記憶している方も多いと思う。それまでは、多くの労働者や野宿者が釜ヶ崎解放会館やふるさとの家、釜ヶ崎支援機構といった民間団体の建物や施設に住民票を置いていた。西成区もそうした指導をしていたと聞く。しかし、居住実態がないという理由で住民票を奪ったら、その人たちは選挙にも行けないし健診も受けられない。生きていくうえでの基本的人権の拠り所を奪ったことになる。
 要望書提出行動と市当局との協議は、5月に始まり、7月まで続いた。団結テント前で労働者・野宿者と待ち合わせて地下鉄を乗り継ぎ、市役所前で共同炊事をして話し合いに臨んだ。市役所職員の対応に声を荒げて怒り、帰ってから皆と共有して次の行動へとつなげていった。
 私たちの要望書は、10万円がほしいというだけではなく、人道的配慮をしてほしい、人間として見てほしいという叫び声だった。大阪市は、彼らの慎しみ深くて哀しい言葉に耳を傾けてほしい。

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