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コロナ指定の十三市民病院労働者の闘い 委託業者 サクラヘルスケアサポート 大阪市の圧力で告発労働者を強制配転

 大阪市立十三市民病院を、市が4月に突然コロナ指定病院にして大混乱が起きた。当該労働者の安藤蘭さん(仮名)が本紙でも告発してきた。安藤さんは市と交渉し、マスク・ガウン支給、感染予防研修、全労働者への危険手当支払いを6月に勝ち取った。
 しかし、安藤さんを雇う滅菌業務委託会社「サクラヘルスケアサポート(本社:東京都中央区。以下サクラ)」の上司は、市役所交渉に参加しないよう圧力をかけ続け、6月25日、突然、神戸海星病院への異動を命令した。
 安藤さんは組合に加入し、「連帯ユニオン・十三市民病院分会」を結成。異動撤回とサービス残業の全額・全員への支払いを求めて団体交渉を申し入れた。サクラが団交をテレビ会議にしたいと回答してきたため、争議を開始し、分会と同名のツイッターを開設して団交へ。サクラは安藤さんに自宅待機を命じたため、安藤さんたちは、十三市民病院や他の病院前での情宣を始めた。


 安藤さんは次のように内情を話す。―「契約書には『勤務地:十三市民病院』と書かれており、契約違反です。私だけ異動させ、休ませ、市役所交渉参加に圧力をかける会社はまともではありません。全員参加の始業前の毎朝5分間の強制『朝礼』も、1年以上不払いです。要求すると『サービス残業は日本の常識/誰も何も言わないから』と言い訳しました。労基法違反です。以前私が他の同僚に聞いたら『10年勤務したが一度も払われていない』、『改善しないので退社した人もいる』とのことです。
 背景には、サクラの病院担当者とリーダーが何でも2人だけで決め、部下を服従させる態度があります。軍隊式の指示方法や、同じ間違いをしても嫌いな社員は怒鳴り、好きな社員は怒鳴らないというえこひいきをします。でも、十三市民病院には質問や意見を言えず、コロナが不安な私たちに情報が与えられず、我慢を強いられました。
 サクラ東京本社もこれを助長しています。伝統的に『新入社員いじめ』が公然と行われ、退職者が続きました。私もいじめを受け『助けて』と会社に訴えても、上司は『いじめは日常茶飯事で、皆同じ』と取り合いません。私と同僚1人がいじめ社員と対決して止まりました。
 基本給が低くても、職場を改善し、コロナ感染から同僚を守るため市役所交渉に行きました。しかし私を待っていたのは、上司からのパワハラと強制異動でした。許されません」。
 安藤さんは、市交渉で成果を得た意義を強調する。
―「市役所交渉がなければ、現在もマスクは1人1日1枚、危険手当も、感染予防の研修もなしでした。医師と看護師たちが雨合羽で治療を行い、院内感染が広がった可能性があります。サクラは団体交渉に素直に応じて、職場の現実を知り、改善すべきです。また、サクラを使う十三市民病院は沈黙しており、委託会社に異動撤回を指導すべきです。病院の裏方まで平等に扱われ、職場改善の運動が止められないように、応援お願いします」。


 サクラ本社(東京)への電話取で、担当者は次のように語った。―「団交の事実はあります。『市役所に行くな』とは言っていません。懲罰的な異動ではなく、社内事情です。どんな事情かは、団交進展中のため第三者には言えません。本社は大阪に聞き取りをしており、異動の判断には関わりました」と答えた。
 連帯ユニオン担当役員の杉原正美さんにも聞いた。
―「サクラは異動理由について、『十三病院が暇になり、海星病院が人手不足だった』と言っています。しかし十三の一般外来は7月27日から再開予定で、公式文書に人員削減の事情記載もなく、なぜ安藤さんかも全く説明なしです。大阪市からの圧力でしょう。
 5月11日、松井市長の記者会見に遭遇した安藤さんが『市長が募集した雨合羽は危険だ、それで仕事をさせないで』と訴え、市長は会見から逃亡しました。その翌日にサクラの東京本社社員が来阪し、安藤さんに『市役所には行くな、サクラの名前を出すな』『市役所はあなたの本名も勤務先も知っている』と恫喝しました。これは事実です。この早さは、安藤さんの訴えに狼狽した松井市長が『あいつは何者だ』と犯人探しを命じ、サクラにねじ込んだのです。それでも安藤さんが黙らないため、大阪府外に異動させ、大阪市に訴える必然性ごと消そうとしたのでしょう」。杉原さんは、「異動も残業も当労働行為」と指摘している。
 「正当な理由なき配置転換は許されません。残業も労働時間の管理も正確にすべきです。安藤さんや委託労働者の差別的境遇は、病院労働者が多重下請け化していることが原因です。福島原発事故と原発労働者の関係と同じで、東電と派遣会社は、組合に加盟して多重下請けによる危険手当不払いの不当性を訴えた作業員を、徹底的に弾圧・孤立させました。
 次回団体交渉は、7月30日ですが、組合出席者を2人だけと指定してきたので、出席者の拡大を要求しています」。
 病院労働者が大阪市=維新の失政を批判する権利を守り、下請け労働者差別を改善するには、多くの支援が必要だ。 
  (まとめ:編集部・園)
 


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