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あまりにもお粗末なCOP26。「石炭火力廃止」がトーンダウンし、グレタら若者が猛批判。日本は"また"石炭賞を受賞

ウータン・森と生活を考える会 石崎 雄一郎

 10月31日からイギリスのグラスゴーで開催されていた「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」(COP26)は、11月13日に「グラスゴー気候合意」を採択し、閉会した。8月9日に発表されていた気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書では、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と科学的にはこれまでになく〝ほぼ断定〟した。異常気象や海面上昇は、島嶼国に暮らす途上国の人々への甚大な被害や、絶滅危惧種など生態系への脅威を与えている。「地球の平均気温上昇を産業革命前に比べて〝1・5度以内〟に抑えなければならない」ことが示されたことは評価できる。
 そのために、COP26では、世界の温室効果ガス排出の大半を占める化石燃料(特に石炭)由来のCO2を削減することに議論の時間が割かれた。合意文書には産業革命前からの気温上昇を1・5度以内に抑える努力を追求することや、排出削減対策の取られていない石炭火力の制限に関する文言が盛り込まれるなど、脱化石燃料の流れは明確なものとなった。
 しかしながら、インドや中国などの反対により石炭火力発電を〝段階的に廃止〟するという最終合意案の文言を〝段階的に削減〟とトーンダウンさせたり、日本の岸田文雄首相が演説で脱石炭火力に後ろ向きな発言をしたために不名誉な〝化石賞〟を贈られたりするなど、開発による利益を求め現状を維持したい国々が足を引っ張る姿も目立った。脱化石燃料に積極的なEU加盟国や(海面上昇により国そのものが無くなろうとしている)島嶼国からは失望の声が上がり、環境NGOは消極的で不十分な内容だと批判した。
 そのような中で注目を浴びたのが、COP26に際して声を上げた若者世代だ。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが「自分たちが直接被害を受ける気候変動に対して科学者の声を聞くように」と15歳の時にひとりきりで始めたデモは、「Fridays For Future」(未来のための金曜日)のアクションとして世界中に広がり、日本でも大学生など若者世代が各地で活発に発信を続けており、COP26会期中も世界気候アクションが世界同日で開催された。
 私も「Fridays For Future」のメンバーと時には一緒に活動し、意見交換をする機会があるが、その真剣さに圧倒されそうになる。それもそのはず、私の世代が京都議定書が採択された1997年のCOP3の時に「将来世代のためにいますぐ気候変動対策をすべきだ!」と主張した〝未来〟だったはずの2050年は、若者世代にとっては、大人になった時の〝現在〟だからである。ちなみに、今年生まれた私の娘は、2050年には29歳、2100年には79歳であり、人生を気候危機と共に歩む、と言っても過言ではない。
 さて、岸田首相をはじめとして気候変動対策に後ろ向きな発言をする政治家、企業、本質を伝えようとしないメディアと、それに同調する市民はどうだろうか?
 ここに環境問題の本質がある。現代世代の行いによって被害を受けるのは、将来世代なのである。私たちにできることは、科学的な事実を認識して、現在の行いに責任を持つことである。自分たちの生活様式やマインドを変えることができないために若者を非難することは、もうやめよう。そして、頑張っている将来世代を応援しよう。根本的には政治を変えなければならないが、変わるのを待つ前に行動しよう。市民が集まれば、世界は変えられるはずだ。

写真:世界リーダーズ・サミットで演説する岸田総理(官邸HPより)


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