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危ういゼレンスキー氏への賞賛。米露・NATOの間で揺れるウクライナ国民

編集部・脇浜義明

ーーロシア人地域を脅かしてきたウクライナ政府とネオ・ナチ民兵組織

 ロシア軍のウクライナ侵攻を知って、ロシアを煽るだけ煽った米国の無責任さと西側が作り上げた仕掛けに乗って、泥沼へ突っ込むプーチンの思慮のなさを感じた。米国、ロシア、ウクライナを取り巻く産軍複合体とファシスト的国家主義者に利益をもたらし、民衆がその犠牲になる戦争だ。幸い米国の世論調査では「ウクライナに関わるな」という意見が大勢で、モスクワでは民衆が反戦デモを行っている。
 今回の事態の根本原因は、ロシアを軍事的に包囲し孤立させてきたNATOの攻撃的な軍事戦略にある
 プーチンが国家として承認したウクライナ東部のドンバス地方(人民共和国宣言をしたドネツク州とルガンスク州)は、ウクライナ政府から「ロシアが裏で策動する分離主義派」として攻撃され続けてきた。ウクライナの民主主義選挙で選ばれたヤヌコビッチ大統領はNATO加入を渋ったために、米国CIAなどが暗躍して2014年クーデター(カラー革命)で追放され政権交替。現在のゼレンスキー政権となった。
 その親欧米派の新政権と親ロシアの分離独立派間の紛争が絶えなかったため、ウクライナ、ロシア、ドネツク共和国、ルガンスク共和国の間でミンスク合意(2014年9月)が結ばれ、ウクライナ政府がドンバス地域の自治を尊重する約束で休戦となった。しかしウクライナ政府とネオ・ナチ民兵組織(アゾフ大隊はウクライナ国家親衛隊として機能)は、ミンスク合意を守らず、ドンバス地方への攻撃を続けた。そうしたなかウクライナのNATO加盟が浮上したため、ロシアとウクライナとの対立は決定的となった。
 ロシアがドネツク共和国とルガンスク共和国を承認する直前に、ニューヨーク・タイムズは、ドンバス地方の分離主義者が休戦に違反してウクライナに砲撃しているというフェイクニュースを流して、バイデンのロシア・親ロシア派悪人説を支持した。しかし、欧州安全保障協力機構のミンスク休戦監視団は2月18日、休戦協定に違反しているのはウクライナ側で、数日間でドネツク州は553件の砲撃、ルガンスク州は975件の砲撃を受けたと、根拠となる地図をつけて発表した。NATO側の組織である同監視団は、砲撃されているドンバス地方で、住民が大量脱出して難民化しているとも発表している。ところが米国と日本のメディアはこれを報道しない。

ーーロシアの一部だったドンパス地方、ウクライナ政府への反発

 ドンバス地方は数百年間ロシアの一部だった。1920年代後半にソ連邦ウクライナの一部になったが、行き来は自由で、住民はロシア語を喋り、教育機関もロシア制度で、90%がロシア人であったし、今もそうである。石炭・鉄工産業が盛んで、産軍複合体の一部を形成していたが、2014年のクーデター以降は、ドンバスとキエフのの独占資本の間で対立が激化した。
 モスクワ州立大学近代マルクス主義研究センターのアレクサンドル・ブズガーリンは、ドンバス地方住民のウクライナ政府に対する反発理由として、①言葉、教育、生活様式などのウクライナ化の強制、②ウクライナ西部を支配するファシスト・グループからの攻撃をあげている。ドンバス地方住民は、警官まで含めてウクライナ政府と闘い、独立宣言にまで至ったのである。「民衆はロシアへの併合を望んでいない」と、ブズガーリン教授は言う。「ロシアの一部にも、ウクライナの一部にも、NATOの一部にもなりたくない。願わくは、人民が自由に往来できる開いた国で、独占資本の支配がない国になって欲しいのだ」と、教授は語っている。


 プーチンは、ウクライナがNATOに加入しないで中立を保てば丸く収まると言うと同時に、ゼレンスキー大統領が亡命すればよいとも言っている。一方米国は、ウクライナ・ナチ・グループのアゾフ大隊支援を匂わせている。いずれにせよ 戦争の行方は分からない。ウクライナとロシアの政府間交渉が続いているが、ロシア軍は病院破壊などの戦争犯罪をすでに犯しているようだ。(アムネスティー・インターナショナル)。
 かつて米国は大量破壊兵器があるという大嘘をついて「有志同盟」を編成してイラクへ侵攻したが、今回はウクライナに武器を提供してゲリラ戦をやらせる魂胆のようだ。ロシアとの直接交戦を避けるためなのか、米国内の厭戦機運がそうさせるのか、私にはわからない。
我々としては、せめて本当のことを知りたい。戦争にはプロパガンダがつきもので、歴史は嘘が史実となった例で一杯である。
 ウクライナ政府がこの最中にエルサレムをイスラエル首都として認め、大使館をエルサレムに移転するという米国へ忠誠心を示したのに、米国は冷たい態度である。
 NATO条約では、加盟国がロシアと戦争すれば「集団的自衛権」が自動的に発動され、米・NATOとロシアとの全面戦争に発展する。そうしたNATOにウクライナが入った場合、世界は核戦争へ一歩近づくことになる。NATOでもなくロシアでもないウクライナは、住民の切なる願いであり、世界を核戦争から守る道でもある。


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