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【ガザ虐殺】史上初の行動 イスラエル人がイスラエル国家を告発 ハーグに挑む

イスラエル在住 ガリコ美恵子


7月19日、オランダ・ハーグにある国際司法裁判所で、イスラエルによるパレスチナ占領に関して、裁判判決が言い渡された。
 告発したのは、イスラエル人反占領活動グループ「Looking the occupation  in the eye」(占領を目で見る)。提出書類に、私を含むイスラエル人左派3千人が署名した。
 告発内容は、入植者の暴力をイスラエル当局が擁護して、パレスチナ人の私有地を略奪し、イスラエル領土拡大を続けていることだ。

反占領活動グループに参加して

 入植者に暴力被害を受けている、ジェリコのベドウィン集落ラス・アル・エインが、私が参加する活動グループに協力を要請してきた。グループの代表者は、ヨルダン川西岸地区で約20年、パレスチナ人の人権保護活動をボランティアで続けてきた、ガイ・ヒルシフェルドという男性だ。10年来の私の活動仲間だ。
 彼から国際司法裁判所に挑むことを聞いたのは、数カ月前、ヨルダン渓谷にあるベドウィン集落が、連帯を求めてきた時だった。「俺たちがいなければベドウィンは消滅する。だから、24時間体制のシフトを組むことにした。参加してくれ。活動中に、軍、入植者、警察の違法行為があれば、国際裁判所に、証拠として動画を提出するから全部撮れ」と声をかけられたのだ。
 ラス・アル・エイン集落が、連帯要請したのには、理由があった。数カ月前、強硬右派の武装入植者が、集落のすぐそばに小屋(アウトポスト)を建てたからだ。
 武装入植者は、羊、ヤギ、ラクダを飼いだし、スキを見ては、ベドウィン集落に侵入して、水ホースを切断したり、羊やヤギを盗む。3か月前に3頭しかいなかった入植者の羊とヤギは、短期間で数百頭になった。
 彼らはベドウィンの羊やヤギを「合法的に」盗む。彼らは自分の家畜を、ベドウィンの家畜小屋まで連れてきて、小屋の前から動かない。ベドウィンが自分の家畜を小屋から出して近くの川で水を飲ませようとすると、乱闘騒ぎをおこすこともある。
 また、1か月前「ベドウィンが俺の羊を盗んだ」と、警察に嘘の通報をしたので、軍と警察がきて、ベドウィン男性3人を逮捕した。軍は集落に催涙弾と実弾を乱射した。その間、入植者はベドウィンから計数百匹のヤギと羊を盗んでいった。なので私たちは、放牧中の入植者がベドウィンの家畜小屋に接近すると、入植者の家畜を遠ざけようと必死だ。

7月12日 ラス・アル・エインベドウィン集落に接近する入植者の羊飼い(ガリコ撮影)


警察から私に出頭命令電話 事情聴取

私たちはベドウィンの水汲みにも同行する。集落の近くに、オウジャ・スプリングという泉があり、小川が流れている。ベドウィンの生活用水だ。
 ある日、ベドウィンの水汲みに同行していると、大型4輪駆動が私たちの車の前をふさぎ、男が下りてきた。腰に銃があった。男は下手なアラビア語で、「話をしよう。車から降りてこい」と言った。私の仲間は男がアラビア語で話しているので、パレスチナ人だと思い、ドアを開けようとした。
 私は男の顔を知っていたので、こう叫んだ。「開けたらだめ。こいつは入植者で武装してる」。
 昨年、付近の砂漠山岳地帯に暮らしていたベドウィン集落の6カ所が、武装入植者による発砲、恐喝、破壊により、土地を追われた。男はその武装入植者の一人だった。
 私はフェイスブックで生中継を開始し、ドアを絶対に開けさせるな、発車させよ、と運転台の仲間に指示をだした。男が私たちの車のドアを力ずくで開けたと同時に、仲間は車を発車させた。過激入植者は銃、鋭いナイフ、ペッパー・スプレーをもっている。
 男は車に飛び乗り、ベドウィン集落に侵入し、ベドウィンの家畜を威嚇した。すると方向転換し、スピードを上げ私たちの車に突進した。怪我はなかったが、私は動画を撮っていたし、仲間はボディ・カメラを回していた。
 入植者の暴行は未遂に終わったが、これらの動画をもって、私たちは警察に被害届けを出した。事情徴収のための出頭命令はすぐに来た。
 ヨルダン渓谷警察署での事情聴衆の2日後、警察から連絡が来た。「あなた方が訴えた人物は一時身柄拘束したが、条件付きで釈放した。7日間同集落に近づかない。30日間あなた方に近づかない」というものだった。 
 これは異例だ。なぜなら通常、警察は悪事を働いた入植者を逮捕したり、罰を与えたりしない。

ヨルダン川西岸地区の占領と暴力
裁判所「国際法違反で即時停止を」

入植者の暴力によってパレスチナ人が家や土地を追われ、イスラエル当局がその土地をイスラエル国家の土地と宣言する。 こういったことは、以前から多々あった。だが、昨年10月7日以降、勢いが増し、イスラエル当局によるパレスチナの土地没収は、過去30年間で最大規模に達した。
 反占領人権団体「ピース・ナウ」によると、今年前半期だけで、すでに2370ヘクタールが押収され、ヨルダン国境近くにイスラエル人の集落地帯が形成されている。
 また国連の報告によると、昨年10月以降、入植者によるパレスチナ人に対する暴力行為は千件を超え、死傷者が続出し、財産破壊、強制追放につながっている。
 ヨルダン川西岸地区で、イスラエル政府により認定されている入植地は146カ所、アウト・ポストは191カ所ある。アウト・ポストとは、イスラエル政府の認定なしにイスラエル人が自主的に建てた入植地で、ここに住む入植者は過激な暴力団だ。現在、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区に、計70万人以上の入植者が住んでいる。
 こういった、入植者による日々の悪事と、それを正当に対処せず、頻繁に入植者の後方支援を行うイスラエル当局の実情報告を、数千本の証拠動画とともに国際司法裁判所に提出し、告発に至った。目的は占領を止めさせるよう、国際的圧力をかけさせることだ。

入植者が嘘の通告をしてベドウィンに来た軍が乱射した時の写真(撮影「looking the occupation in the eye」)

 国際司法裁判所は、以下の判決を出した。 「イスラエルによるヨルダン川西岸地区および東エルサレムでの入植活動は国際法違反であり、イスラエルはこれを直ちに停止し、入植地を撤退させなければならない。」 これを実行させるには、国際的圧力、経済制裁が必要だ。日本はイスラエルとの軍事協力をやめるべきだ。判決に即効力はないが、イスラエル人が自分の国を訴えたことに大きな意味がある。 私も裁判のためにたくさん動画を撮った。何年もかけて撮ってきた動画が世界に、こういった形で飛び立ったことに、私は鳥肌をたてて裁判の実況中継をみていた。

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