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大賞は「生理の貧困」シリーズNHK報道に 【貧困ジャーナリズム大賞】

反貧困ネットワーク理事 白石 孝

 11月20日午後、東京・水道橋「全水道会館」で「貧困ジャーナリズム大賞」表彰式とシンポジウムを開催した(本紙10月15日号でも募集を告知)。
 私はこの賞の責任者を務めていたので、賞の内容と受賞者によるシンポジウムを報告する。
 大賞はNHK「生理の貧困」に関する一連の報道。若い女性たちが声を上げ始めたことを受けとめて、「クローズアップ現代+」をはじめ、連続して放送し、自治体や国の動きを促す役割を果たした。当日は担当した4人の制作スタッフが来られた。若手女性ディレクターは、「上層部から企画に待ったはかからなかったか」、との問いに「意外とすんなり通った。若い人たちが声を上げたことが大切だと思った」と発言。会場の共感を得た。もちろん、その後の政府や自治体の動きが必ずしも適切とは言えない面も多い。しかし、報道が世論や政治を動かしたことは確かで、その影響力を選考委員会として評価した。

ーー貧困の深刻さが内容を充実化


 「特別賞」は、映画、小説、コミック、漫画などを対象としているが、中島京子さんの小説「やさしい猫」、スリランカ青年と日本人母子との生活を引き裂く、日本の外国人政策をテーマにした読売新聞連載が単行本になったもの。
 映画は瀬々敬久監督「護られなかった者たちへ」と藤元明緒監督「海辺の彼女たち」の2作を選んだ。監督のお二人は、次作撮影中などにより代理出席だったが、そのプロデューサーの発言も良かった。
 ジャーナリズム賞は11本。総じて今年は充実したものばかりで、選外になったものも賞に相応しいものが多く、応募も非常に多かった。貧困分野の報道などが充実しているのは、それほど貧困や格差が深刻化しているから、という見方もでき、やや複雑な心境になった。
 受賞者によるシンポジウムは、海外赴任中の共同通信記者以外が参加。2時間にわたって議論が交わされた。毎年そうだが、交通費も謝礼も出さず、副賞も「反貧困ネットワークグッズ」程度なのに、沖縄や北海道からも来ていただいている。今年も大阪から日帰りで来られた。
 詳細は省くが、ドキュメントとドラマとの行ったり来たりのやり取りなど、刺激に富んだ内容だった。作家の石井光太さんが片付けを手伝ってくれたことにも驚いた。実に気さくな人だった。
 最後に受賞作品を紹介する。
●NNNドキュメント「おいてけぼり―9060家族」(中京テレビ)
●NHK ETV特集「ドキュメント 精神科病院×新型コロナ」
●TBS「報道特集」の格差と貧困に注目した一連の報道
●書籍「格差と分断の社会地図」
●書籍「ルポ 入管―絶望の外国人収容施設」(共同通信)
●書籍「愛をばらまけ」及び一連の報道(読売大阪)
●書籍「ルポ『命の選別』誰が弱者を切り捨てるのか?」(毎日新聞)
●「わたしの居場所」~入管難民法改正など在日外国人らに関する一連の報道(共同通信)
●非正規教員問題を巡る一連の報道(毎日新聞)
●書籍「コロナ禍の東京を駆ける 緊急事態宣言下の困窮者支援日記」
●ひきこもりの悪質支援業者の手口や、被害の実態をリポートした連載記事「『引き出し』ビジネス」と関連記事(朝日新聞)。
 個人名や選評などの詳細は、「貧困ジャーナリズム大賞2021 受賞者一覧」で検索してください。

写真:当日のシンポの様子

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