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ワクチンを利潤追求の道具にするな!! 公共的・世界的共同作業が必要

アレックス・ローソン(米国)
 『コモンドリームズ』9月13日

 ワクチン開発は、新型コロナ感染の解決の第一歩にすぎない。ワクチンを大量に生産し、金銭的負担をかけずに世界の人々に提供することが重要だ。
 利潤追求に支配される製薬産業は、まだ起きていないパンデミックを予防するためのワクチン研究・開発は金儲けにつながらないので、着手しなかった。今、コロナ・パンデミックが金儲けのチャンスを提供しているので、たらふく税金から資金をもらって開発に着手している。人々の健康と安全のためでなく、あくまで金儲けが目的だ。
 1967年、ワクチン研究部と製造能力を備えた会社が数十社あったが、ニクソン政権の新自由主義政策によって、その数が一桁に減った。 これに対し、米国議会技術評価局は警鐘を鳴らし、「米国の製薬産業のワクチン研究・開発・生産への責任感と能力は憂慮すべき水準」と報告した。結局、残ったのはコロナ・ワクチンを大量生産する能力がない少数の寡占企業だけだ。
 第二次世界大戦中とその後、米軍が産学共同でワクチン開発を行ったことがあり、この政・産・学共同努力のおかげでワクチン技術開発が戦後も続いた。このことは、ワクチン開発の障害は科学ではなく利潤追求の構造であることを物語っている。
 当時、知的財産保護は現在ほど研究活動妨害にならなかった。研究チームは、比較的自由に知識を収集して活用できた。ワクチン開発は私的利潤のためでなく、公共使命のために行う共同作業として、戦後の20世紀半ばまで続いた。
 現在ではそれがなくなった。製薬会社が税金から資金を得て研究・開発を行うのは同じだが、その成果を世界一高い価格で販売するのである。納税者はすでに130億ドルもコロナウイルス治療薬・ワクチン開発に支払っているのに、もし開発に成功しても、高い代金でそれを買わされるという二重の収奪を受けることになる。
 ワクチン開発黄金時代は、必要性から生まれた。1918年に世界で5千万人もの死者を出した、スペイン風邪パンデミックから生じた必要政策だった。民間企業では、パンデミックという世界的規模の疾病に対応できる研究・生産・配給能力がなかったからだ。
 これは、現在のコロナパンデミックでも同じだ。納税者から数千万ドルもの公的資金を得ていても、2800万人を感染させ、90万人も殺しているパンデミックを抑えるのに十分なワクチンを生産できる民間企業はない。グローバル・パンデミックに対応するためには、グローバルな共同取り組みしかない。
 民間企業が公衆衛生資財を供給できるという幻想は、近代に入ってから生まれた。実際には人命救助に使うべき資金を、企業重役室は自社株買戻しやマーケティングに使っている。また自分の懐を肥やすか、医療を公衆衛生から企業利益へ導く政策を推進させるために、政治家への献金に使っている。
 薬の開発に成功しても、公的資金援助で獲得したにもかかわらず知的所有権を振りかざして、その薬をみんなに行き渡るようにはしないであろう。それに、みんなに行き渡るほど大量の薬を生産し、貯蔵し、配給する能力は個別企業にはない。
 トランプ政権は、こういう公的共同体制の構築に背を向けている。我々はアメリカ第一主義を、人命より利益を優先する医療産業を否定する。ワクチン産業を公的機関とし、それを民主主義的に管理運営する道を探らなければならない。
(翻訳:編集部脇浜義明)

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