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【未来を読む一冊】岩井克人著「資本主義から市民主義へ」

「資本主義から市民主義へ」 岩井克人著/新書館/1650円/2006/8刊  

 「ヴェニスの商人の資本論」「貨幣論」「21世紀の資本論」「会社は誰のものか」と、岩井克人氏の論考は比較的たくさん読んできた。それらの著書は、1985年から2005年にわたって出版されている。それは、私自身が生産現場での日常に埋もれながら、未来を必死に模索し、もがいていた時期と重なる。彼の繰り出すシャープな論理に、如何に反論できるのか。そんな自問自答で眠れない夜もあった。そんな岩井克人氏が2006年に、評論家三浦雅士氏との対談形式で世に出したのが、本書である。
 言葉、貨幣、法。これら人間社会を基礎づけている要素は全て自己循環論法で成立している。だからこそ、個別社会を越えて世界に普遍化できたのだと彼は主張する。法には国家が、貨幣には資本主義が、そして言葉には市民社会が実体として対応する。それらは自己循環であるが故に不安定で危機を内包しているが、相互に補完し合うことでかろうじて維持されてきた。現代社会の危機は、資本主義や国家が強大になりすぎて、市民社会が見えなくなってしまったことに起因していると岩井氏は述べ、本書の書名でもある「資本主義から市民主義へ」を主張している。
 果たしてそうなのか。人間社会の未来に、資本主義や国家は必須であるのか。グローバル資本主義に対抗する運動がローカルでは不可能だとするなら、私たちはどう戦えばいいのだろう。著者が主張する市民主義の具体的な内容が不明であることもあって、疑問だけが残ってしまう。
 しかし、言葉、政治、倫理。より善き人間社会をめざす者にとって、岩井氏が問いかける課題が避けてはすまされないものであることだけは間違いない。(M)


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