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報告  沖縄・辺野古・高江の闘い 増える土砂搬出を「牛歩」「手振り」で阻止 高江での不当逮捕による連続弾圧も、全員不起訴

名護市在住 稲垣 絹代

 日曜・祭日以外の毎朝7時に、「塩川も安和もあります」「塩川は動きありません。安和はあります」といったメールが、本部島ぐるみ会議のAさんから届く。私の日々の行動は、これによって決まると言っても過言ではない。
 11月26日、私は安和の琉球セメントの桟橋構内に出入りするダンプの台数をチェックするため、10時半に現地に到着した。毎朝メールをくれるAさんと交替するためだ。
 朝8時から1時間に約80台が出入りしていた。トイレや昼食時には、大宜味村から阻止行動に来ていたBさんが交替してくれた。木曜日は「やんばる島ぐるみ」のメンバーが阻止行動に集まることになっているので、前名護市長の稲嶺進さんも参加した。
 私はダンプのナンバーを記入しながら、1秒でも工事を遅らせるために、ダンプの前を牛歩したり、通行する車に手を振ったりする。15時に別の仲間が来たので交替し、牛歩と手振りに専念して16時過ぎに活動を終了した。
 本部島ぐるみ会議のメンバーは早朝の準備から、遅い時には20時過ぎの工事終了まで、毎日監視活動を継続している。そこから得られたデータによると、安和桟橋からの土砂搬出は、2018年からの1年目に比べると、今年は1・6倍にもなっている。新型コロナ感染拡大で一時工事が中止になっているにもかかわらず、20時ぐらいまで毎日ダンプが列をなしていた時期があったことが理由だろう。
 そんななか、仲間の高垣喜三さんが、12月1日の夜、脳幹部出血のために名護市内の病院で71才で急逝された。高知県出身で、大阪の四条畷高校、大阪市立大学文学部卒業後、枚方市職員として長年働かれたのち、2011年に奥さんと2人で沖縄に移住してこられた。本部町島ぐるみ会議の中心メンバーとして、連日、安和桟橋、塩川港からの土砂搬出作業の阻止、監視行動の最前線で活動されていた。亡くなる日の昼まで、塩川港でダンプのチェックをしていたのである。
 心臓の持病があり治療中だったそうだ。無理を押して抗議に参加しており、日本政府の工事強行が彼を殺したと言える。彼はまた、伊江島の「わびあいの里」の常務理事としても、資料の整理など重要な役割を担っておられた。
 沖縄の辺野古ゲート前や高江でいつも唄われている「心さわぐ山原のうた」という歌詞は、高垣さんが沖縄に来てから作ったものと聞いた。1958年に制作されたソビエト映画で、ロシア革命時を描いた『はるか彼方に』の主題歌だ。60年、70年の安保反対闘争の頃によく歌われた『心さわぐ青春のうた』のメロディーで唄う替え歌だ。
 「我らの思いは、それはただ一つ。うるわしき沖縄、非武の島よ。海や森、空も清めば、わが心は山原の地に/いかなる弾圧が度重なるとも、我らの友情は永遠に変わらず。海や森、空も清めば、わが心は山原の地に/誰でも一度は恋をするものさ。嵐の中をも恋はつらぬく。海や森、空も清めば、わが心は山原の地に」。
 高垣さんが愛した高江の山原の森で、2019年12月、刑事特別法違反で北部訓練場に入った6人が現行犯逮捕された。また翌20年2月19日には、3カ月前の事案で5人が令状逮捕された。9月16日の沖縄タイムズで、全員不起訴の記事を知った時の驚きと喜びは大きかった。裁判所や検察の手続きや対応が大きな問題として、報道された。
①理由にかかわらず住民が米軍基地に入ることを禁止している法律自体が問題。本件では「違法な工事を調査し、全国、全世界に発信する」という正当な理由があった。
②米軍基地に立ち入ったという軽微な罪。逮捕勾留は重大な制約で、精神的打撃をこうむっている。
③北部訓練場は保安上の必要性が極めて低い。したがって勾留してまで捜査する必要はない。人権に対する不当で過剰な制約。
④別件捜査、弾圧が目的。グループ・個人の情報収集、運動への悪いイメージ作り。委縮させる目的。
⑤刑特法自体が憲法違反。植民地政策の悪法との意見もあり。
 このため、起訴して政治問題化するより「諸般の事情を総合考慮した」と、全員不起訴(起訴猶予)処分にしたのかもしれない。不起訴でも反基地闘争への弾圧の目的は達成できたと考えているかもしれないが、全員不起訴は当然だ。不当逮捕された6人の方たちの頑張りや多くの支援者のおかげで、幸い、今回は裁判闘争まで担う機会はなかった。
 しかし菅首相は、10月26日の所信表明演説で、「北部訓練場の部分返還(=高江の新基地建設)が復帰後最大の基地負担軽減」と強調した。今すぐ反撃の必要を感じた。「高江・刑特法による不当逮捕を許さない会」=救援会は解散することになったが、高江の闘いはこれからも続いていく。
 高垣さんの遺志を継ぎ、早くうるわしき沖縄、琉球弧を! 海も森も山原の地も非武の島に! 全国の・海外の闘う皆さん、ともに頑張っていきましょう!

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