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【イスラエル】進む右傾化─若者の3~4割が極右支持 軍はガザ爆撃で60人の子ども殺害

8月10日『モンドワイス』(主に進歩的なユダヤ人の視点から、中東におけるアメリカの外交政策を取り上げることに専念したニュース・ウェブサイト)
フィリップ・ワイス(ユダヤ系米国人ジャーナリスト)

翻訳・脇浜 義明

 先週、またもやイスラエル軍が理由もなくガザを攻撃、たくさんの子どもが死傷した。ソーシャル・メディアが取り上げ、親イスラエル派の民主党を狼狽させた。「NYタイムズ」までが、殺害された子ども60人の顔写真を掲載した。世論調査では、40歳以下の米国ユダヤ人の38%が「イスラエルはパルトヘイト国」と回答した。
 イスラエルに遠慮がちの米・民主党の政治家でさえ、このガザ攻撃には不支持を表明した。米国の進歩的ユダヤ人グループも「このガザ攻撃は、11月選挙を有利にするためにラピッド首相が行った党利党略である」と非難した。
 しかし、イスラエル現地ではまったく様子が異なる。イスラエルのユダヤ人は、ガザ攻撃を「大成功」と絶賛した。米国生まれのイスラエル人ジャーナリストのダニエル・ゴルティスは、「イスラエル人すべてがガザ攻撃を支持している」と書いた。中道・左派「労働党」のメラヴ・ミカエリも、「パレスチナ人テロリストに囲まれたイスラエルが反撃するのは当然」と、ガザ攻撃を支持した。
 今回の攻撃には、ハマスの関わりは一切なかった。労働党は、120議席中80議席が右翼に占められている中で、ますますその影を薄くしている。

11月選挙で狂信的極右「ユダヤの力」党 躍進か

先日、パレスチナとの平和共存を訴えるイスラエルにおけるNGO「ピース・ナウ」のオル・ニルと、元「ハアレツ」紙ワシントン特派員のヘミ・シャレフが、イスラエル右傾化についてネット対談した。
 そこでは、狂信的極右政党「オツマ・イェフディット」(ユダヤの力)党首イタマル・ベン=グヴィルへの、支持の高まりについての話題になった。「ユダヤの力」党は宗教シオニストで、ネタニヤフのリクードと組んでいる。世論調査によると、次の選挙では同党は議席を倍増する見込みだ。
 ニルは、最近のイスラエル訪問について語った。「エルサレムに3週間滞在したが、掲示板のポスターも、市中で配布されたビラも、みんなカハネ主義者(カハネ主義はユダヤ民族至上思想。アラブ人・イスラム教徒への敵視・差別による暴力・テロを行うことも多い)や宗教シオニストのものばかりだった」と語った。
 シャレフも宗教シオニストが若者の間で人気が高まっていることを認め、「そう、政治的熱気が見られるのは、若者たちの間の極右支持だけです。左派、カッコつきの左派ですが、全く元気がありません」と言った。
 シャレフは、「最近のイスラエルの世論調査では、若者の30~40%が宗教シオニスト支持だ」と述べた。7月の世論調査では、狂信的右翼ベン=グヴィルが率いる宗教シオニスト(注・ここでは「ユダヤの力」党を指す)は、11月の選挙では13議席を獲得し、ラピッド首相の中道政党、ネタニヤフのリクードに次いで、議会で第3勢力への躍進が予測される。勢いに乗ったベン=グヴィルは、過去に何度も暴力事件に発展した祈祷集会を神殿の丘(ハラム・アッシャリーフ)で行った。

中道・左派は次の選挙で議席を失う恐れ

シャレフによれば、中道・左派とされる労働党(7議席)やメレツ(6議席)は、次の選挙では議席を失う恐れがある。「ザハヴァ・ガル=オン率いるメレツは、同じような顔ぶれを立候補させるだろうが、合同だけが両党が生きのこる道である」とシャレフは語る。
 ダニエル・ゴルティスは、次のように語った。「右派も左派も、ガザ攻撃を支持している」と語った。「宗教的国家主義者ベザレル・スモトリッチは、軍を支持するだけでなく、ラピッド首相をも支持して、『好きなようにやれ』と言った」。
 「左派のガル=オンは『我々に必要なのは希望と安全であって、エスカレーションではない』と言ったが、これはガザ攻撃への非難でないのは確かだ。左派もイスラエルのパレスチナ人攻撃はテロ予防上必要だ、と思っている」と言っているのだ。
 同じ左派でも、イスラエル・パレスチナ人政党はそう思っていないのは当然である。「共同リスト連合」の一翼を担うハダシュ党のアイマン・オーデは、「イスラエル政府は、政治的党利党略で戦争犯罪を重ねている。ガザの人々はその犠牲で殺されている」と書いた。
 イスラエル・パレスチナ人政党(6議席)はシオニスト政治の外側に位置する。次の選挙ではイスラエル・パレスチナ人の投票率は低くなるだろう、とシャレフは述べた。

写真:今年4月、エルサレムでデモ行進に参加するイスラエルの極右議員イタマル・ベン=グヴィル(中央、ネクタイの人物)

(人民新聞 10月5日号掲載)

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