怖くないよ

線香が消えていることを確認する。
天井からまっすぐに下りた配線を伝い、30ワットの裸電球から小さな蜘蛛が私の肩へ飛び乗った。
小さな蜘蛛は、砲台のようにあちこちと素早く頭の向きを変えた。
怖い。
怖くないよ。かわいいよ。こっちにきやさんせ。
お水を汲んだような手の中へ小さな蜘蛛が飛び込んだ。
祖母はそおっと着物の襟を開け、平たくなった大きな胸元へとしまいこんだ。

ーーーーー

汗も乾いた新車の軽、蝉が鳴いて、世間話の終盤、私たちは日陰へと移動した。
小さいおじさんって怖い。
都市伝説の?全然怖くないよ。
どうして?
小さいもん。
軽とは反対色な空色のペディキュアにサンダルを履いた大和なでしこの足は、小さいおじさんの頭上に影をつくった。

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