おもろない味やで

この前ラーメン二郎に初めて行ってきた。もう先に言うけど最悪だった。最悪の一言で説明がつくので後は全部蛇足なんですけどね、一応説明しますわ。関東に引っ越すでしょ、そしたらラーメン二郎大好きな友人がものすごく二郎に僕を連れて行きたがるわけなの。まぁそれはええねんラーメンすっきゃしね、僕。天一のこってりラーメンが一番すきな食べ物やしね。でもラーメン二郎はずっと毛嫌いしててさ、ほらネットの噂いろいろあるでしょ。誇張はあれど独特な風土が存在するのは確実、そしてその上に成り立つ「ラーメン二郎教」という宗教とでも呼べる熱心なファン層。当然天邪鬼の僕は敬遠するわけで。敬遠?いや「ケッ!」だ。「ケッ!」が正しい。ほんでラーメン二郎大好きな友人にその事を話すと「ネットの話はだいたい正しい」と言うじゃないですか、じゃあ尚更行く気にならんでしょ。何がええねん、まず見た目が悪いでしょ、ラーメン二郎って。きったないやん。あとチャーシューのこと「豚」って言うでしょ?あれなんか食欲失せません?豚て。なんかさぁ品がないよね見た目もネーミングも全部が。でもさ、結局ラーメン二郎好きな人ってそんなのはどうでも良くて味のファンになってるじゃないですか。「いや味じゃないから笑マジで何故か中毒になるのよ笑」という面白くない人は無視して、なってるということにしますここでは。ほいでね、言うても百聞は一見にしかず、実際に食べてみないことには何も言えないという気持ちもあり嫌々ながら結局行くことになったんですよ。本当に嫌でした。ラーメン二郎を友達とわざわざ食べに行くという行為が本当に恥ずかしかったです。ご先祖さまに見られてるんだぜ?この行動が。オナニーの方がまだマシよガチで。性欲の解放の仕方に下品も上品もないと思うが、食欲の解放の仕方にはそれはある。わざわざラーメン二郎に赴いて食欲を解放するのは下品。まぁいい、たかがラーメン、食べればこの苦行は終わる...と一応当日はなにも食さず胃を空っぽにしてラーメン二郎仕様にしてから向かった(これだけ嫌がっておきながらしっかり身体を仕上げていくところに僕の可愛げが存在するのでは?)

ほんでお店に来てびっくりしちゃったなぁほんとに。張り紙の多さったらないぜ。電波物件か?ってくらい店中張り紙だらけ。「ウチは少々めんどくさいお店ですがよろしいですか?」「ルールを守って云々」等々...マジでなに?ここ公共交通機関?何よりびっくりしたのは近隣住民からの苦情のFAXをそのまま掲示していたこと!!!「おたくの客のマナーが悪すぎます、ラーメンのマナーは守れるのに普通のマナーは守れないんですね」というような内容で、怒りが丹念に練り込まれた逸文だと感じた。きっと日によっては行列が迷惑になったりすることもあるのだろう。しかしそのFAXを原文そのまま見せつけるかね!?まるでお前らのせいだと言わんばかりに!そしてその張り紙たちに囲まれながら、満員のカウンターからは麺をすする音だけが静かに聞こえてくる...なんやこの異様な店内は。客たちは「調教」されている。初めてかもしれない。何かの光景を直に見て「調教」というワードが浮かんだのは。初の調教体感はSMクラブでもない競馬場でもない、ラーメン二郎だった。そして自分も今からこのラーメンを啜るだけの屍の一員となるのか...と考えると気が滅入った。既に列には大人しく並んでしまっている、張り紙をじっくりと読み込み眉をひそめるのが精一杯の抵抗だった。

小ラーメンの食券を買い、屍席に座る。そして例のオーダーがやってきた。「ニンニクヤサイアブラマシマシ」のアレである。この呪文を口にした瞬間に僕は人間としての部分を1つ捨てるのだ。流石に「ニンニクヤサイアブラマシマシ」はテンプレすぎるし、そもそもアブラもヤサイも増やしたくなかったのでニンニクだけ入れることにした。この場合オーダーは「ニンニク」とだけ言えば良いのだろうか?おいおい待て待て、「オーダーなんて言えばいいんだろう?」と考えた時点で二郎に飲まれてるではないか。なんでもええねんそんなん、間一髪で自我を取り戻した僕は「ニンニクだけで。」と冷淡に言い放った。一緒に来た友人は店員さんに対して食い気味かつ今まで聞いたことの無い早口で「ニンニクアブラマシ」と発していた。こいつ今人間じゃなくなってるな、って思ったわ真剣に。いっぱい笑かしてくれた素晴らしい友人はもう死んだんやなって。

さて後はラーメンが来るのを待つだけ...なのだが、スマホもいじるなと書いてあったのでそのまま厨房をぼーっと見つめながら待つ。唯一ラーメン二郎でよかったのはここかもしれない。つかの間のデジタルデトックス。純粋に食べ物が来るのを待つ、という時間は久しく経験してなかった気がする。おかげで悔しいかな、正直ラーメンが楽しみになっていた。なんだかんだ言ってもそれなりに美味しいのではないかと。友人は「絶対食べたらファンになるから!」と豪語していたが、そこまでにはならないにせよ百聞は一見にしかずの価値くらいは得れるのではないかと。

ついにラーメンがやってきた。写真で見るよりも下品な見た目だ。泣いても笑っても出されたものは食べなくてはならない、ついに審判の時が下る。「いただきます」は脳内でも言わなかった。何故か自然と出なかった。みなさんラーメンを食べる時は何から食べますか?あなたのラーメンはどこから?私はスープから。ほら、言ってもラーメンの味ってスープで決まるじゃないですか。だからまずスープを1口すするのが僕のラーメン・オープニングアクトなんです。なので例に漏れず目の前にある小ラーメンのスープを啜った...  


みんな醤油味の海水って飲んだことある?

ぼくあるねん

ラーメン二郎のスープ

醤油味の海水やで

めっちゃしょっぱいねん

舌がな、バカになるねん

味ってな、舌から脳に伝わる電気信号やねん

あんなしょっぱいのを飲んだらな、たぶんめっちゃ強い電気信号が脳に行くねん

それを美味しいって感じるのはな、脳がバカになってる証拠やねん

東京の人がおもろないのはな、ラーメン二郎食べすぎて脳がバカになってるからやねん


ホンマにごめんなさいホンマにこの仮説が一瞬にして浮かんだんですよ。スープ啜った瞬間。強い電気信号走りましたから。もちろんこの仮説は誤りです、東京の人で面白い人数え切れへんくらいいるし大阪の人でも面白くない人いるしね。でもね、でもね...このスープは脳破壊するて。こんなんおかしなるで。あ全然褒めてないですよこれ、ポジティブな「ヤバい」じゃなくて、順当にネガティブな「ヤバい」ですこれ。あーびっくりした。ガチで今までの人生の中でいっっちゃん塩辛いもの食べた。チキンラーメンですら3口目までは美味しいのに。ラーメン二郎さん半端ないすわ。味のブラクラやん。

開幕から消化試合と化した最悪のペナントレースを終えて、嬉々として僕よりも多い麺をすすり続ける友人を尻目に店を出た。同じタイミングで店を出た大学生?も友人を待っているようで、彼が自販機でお茶を買ったので僕もそれに倣った。ラーメン二郎の全てに対して怒り心頭だった僕は途中彼に話しかけようと思った。「すいません、これ美味しいと思って食べてる人いてるんですか?」と。本当にそう言いかけたタイミングで自我を取り戻した。危なかった、きっとこの人はラーメン二郎が好きで来てるのにそんなケンカを吹っ掛けてはならない。それは僕が気持ちいいだけで彼からしたら不快極まりない行為なハズだった。本当に危なかった。ホッと胸を撫で下ろしていると友人が出てきた。彼なら遠慮なく言える。 

「なぁホンマにこれ美味しいと思って食べてる人おるん?」

「えっ!ハマんなかったんだ、でも最初はそうなんよ、二度と食べるかと思いきやいつのまにか無性に食べたくなってくんのよ!それが二郎だから!」

少なくとも僕の友人は脳を破壊されていたようだ。さようならラーメン二郎、僕の人生に1ページだけ登場した最悪のラーメン屋よ。

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