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春の訪れに色とりどりの花を添える! みんなで大量の球根を植えつけました【後編】

 宿根草の苗が植えつけられ、ペレニアルガーデンの第一歩を踏み出した神代植物公園の花壇。今回はさらに、春の彩りを添える球根を植えつけます。盛りだくさんの1日を前編・後編に分けて追います。

前編はこちら

花の少ない時期に花壇を彩る救世主、それが球根植物

 今回のミッションである球根の植えつけを前に、谷村伴子さんから、球根がどんなものなのかや、種類や花壇での役割などについてお話がありました。

春の花壇を思い浮かべてみると、宿根草の多くがまだまだ緑のまま。冬の間枯れていた地上部にやっと新芽が出てきたばかりという植物もあります。そんな中、一足早く花を咲かせ、宿根草の花壇を彩ってくれるのがムスカリやチューリップといった球根植物です。今回のペレニアルガーデンは、吉谷桂子さんのデザインでハナニラも植えることも決まっているので、ペレニアルガーデンを囲むようにして立っているサクラが咲く頃、地上部を同じピンク色で染めてくれます。

それにしても、球根の大きさは地上部の茎や花の大きさとは比例しないようで、大小もそれぞれ。本当に不思議ですね。

 さて、球根を植えつけるときは、球根3個分の深さの穴を掘って球根を置きます。ただし、ユリだけは30cmまで掘って深植えするとのこと。これはユリが球根の下だけでなく、上側にも根を出す性質があるためです。この根は成育初期から伸びて養分を吸収するため、浅く植えてしまうと根が十分に成長できず、花に影響が出ます。

 全体を通して、大量の球根を植えますが、まずは20〜30球ごとにわけ、それらを植えつけたいエリア内で均等になるように配置して景色をつくります。前回の苗の植えつけと同様、まずは球根を配置してバランスを取ってから、みんなで植えつけという順番です。

 一通りの流れをつかんだら、早速班ごとに分かれてペレニアルガーデンへと移動です。

ワークショップの会場である植物会館から、ペレニアルガーデンへ班ごとに移動。


根づき始めた宿根草の苗の間に球根を配置していく

 時刻は11時半すぎ。外に出てみると、一時は土砂降りだった雨もすっかりあがっています。

 今日植えつける球根は全部で30種類ほど。ゆうに5000球を越えています。

 各自がバラバラに配置することのないよう、植物会館で球根担当を決めておき、ふたり1組でたくさんの球根を受け取ります。それらの球根をそれぞれ、種類ごとに5〜30球ずつのまとまりにわけ、その上で花壇のエリア内に配置していきます。

 種類ごとある程度固めて置きつつも、まんべんなく配置することで花の偏りがなく見えます。このあたりは全体の様子も見ながら、イメージを膨らませての作業です。

 ペア同士、「ここに置いたらどうかな?」「ちょっと近すぎかも?」「もう少し離して置いてみましょう」といった具合に相談しながら、配置を決めていきました。

 また、サクラの時期に地上部をピンク色に染めるハナニラは、すべての球根の配置が終わった後、みんなで花壇をグルッと囲み、ぱらぱらっと一斉にまきました。

ペアで担当する植物の球根をもらい、まとまりにわけていきます。


どう配置するべきか互いに相談したり、スタッフに聞いたりしながら決めていきました。

 球根の配置が決まったら、あとはひたすら植えるだけ。

 前半のお話で紹介した球根の植え方を、三浦香澄さんが実践。球根3つ分の深さの穴を掘り、球根の上下に気をつけて埋め、上から土をかぶせます。球根ごとに大きさが異なるので、掘る穴の深さも球根ごとに変わります。また、球根の上下をかりに間違えたとしても、下側から出た芽はグルッと反転して地上を目指して伸びてくるため、わかりにくいときは気にせず植えても構わないという、アドバイスも入りました。

 デモンストレーションを見た後は、参加者の皆さん全員で実践。

 園路側から作業する人、ステップストーン側から作業をする人に分かれて、どんどん植えていきます。ところが、植えても植えても球根の数が減りません。

「今日中に全部終わるのかな……」

 そんな思いがよぎり始めたところで、「全員で入り口側の花壇を作業しましょう!」とのスタッフの采配。これが結果的に吉と出ます。


全員入り口側の花壇に移動して、全員で一気に植えつけ作業をしました。


最後はたねダンゴ®を植えつけて時間内にフィニッシュ!

 入り口側の花壇に移動した参加者の皆さんがもくもくと球根を植える中、気がつくと木村智子さん、三浦さん、谷村さんの3人がテーブルの上で何かをしています。

 近づいて見てみると、土でできた小さなおだんごに、肥料やケイ酸塩白土をまぶしたあと、ちょんちょんとタネをつけています。

途中から公園協会のスタッフも加わってたねダンゴ®づくり!

 これはたねダンゴ®といい、東日本大震災の復興支援活動の中で生まれた植栽方法です。

当時、「花を見て少しでも元気になってもらいたい!」とボランティアの方々が花の種子を被災地などに送ったのですが、種子から花を咲かせるのは小さな子どもやお年寄りには難しいようでした。そこで、誰でもかんたんにできて、たのしく、花を咲かせられる方法として生まれたのが、たねダンゴ®です。

たねダンゴ®を作ろう♪ 日本家庭園芸普及協会
https://www.youtube.com/watch?v=5i-2zt8GxcQ

 今回選んだ種子はニゲラ。初夏に花を咲かせる一年草で、青色と白色の2色です。すべてのダンゴにたねがついたところで、ちょうど入口側の花壇の球根植えつけ作業も完了。全員にたねダンゴを渡してぐるっと花壇を囲むように立ってもらいました。そこからバランスよくニゲラが咲くよう、隣の人との距離や位置を見ながら、たねダンゴを配置、そのまま植えつけです。

 ここでちょうど12時30分。ワークショップの時間をたっぷり使って、なんとかすべての工程を終えることができました。

3つある花壇のうち、入り口から一番奥側の花壇で集合写真。こちらはまだ球根が配置されたままなので、午後の“残業”ですべて植えつけしました。


【残業編】スタッフと参加者有志で最後まで植えつけました!

 残り2つの花壇はどうなったの? と思った読者の方。ご安心ください。

 この日は、お昼を挟んで午後からスタッフと、ワークショップ参加者の有志で球根植えつけ作業にあたりました。

 全部植えつけたあとは、前回植えた宿根草の苗のまわりを囲むようにバーク堆肥でマルチング。バーク堆肥は伐採した樹木の皮でつくった堆肥で、土壌の微生物の活動が盛んになるほか、冬の時期の寒さや乾燥から根元を守る効果も期待できます。

 次回のワークショップは2月。

 冬の寒さに耐えながら、宿根草たちや球根植物たちがどんな姿になっているのか楽しみです。

“残業植えつけ”に参加したスタッフと有志の皆さんで喜びの1枚!



神代植物公園の正面手前のプロムナードエリアは、東京パークガーデンアワードのコンテストガーデンが完成。各ガーデナーが「武蔵野の“くさはら”」というテーマを植物で表現しています。 

●写真・文責:小林渡(AISA)


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