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早稲田大学マスコミ研究会:インタビューサークル、サークルインタビュー vol.3

人物研究会によるサークル横断インタビューも無事に第三回まで到達。今回はフリーマガジン『ワセキチ』を発行する出版サークル早稲田大学マスコミ研究会さん。 人物研を認知していてくれて嬉しい限りだ。

談○早稲田大学マスコミ研究会 洪幹事長、佐藤さん(新歓担当)
取材○人物研究会(吉田、篠崎、坂梨)
構成○人物研究会(吉田)

『ワセキチ』は毎号ジャンル名は「ノージャンル」

──先ずはなんと言っても『ワセキチ』のお話しから聞かせてください。
佐藤 マスコミ研究会が出版している『ワセキチ』のまず一つの特徴はジャンルに縛りが無いというところ。他のフリーペーパーを作られてるサークルさんでは、この号はこのテーマってところが多いんですけど『ワセキチ』は毎号ジャンル名は「ノージャンル」と銘打っているんです。それぞれの会員がその時々に本当に興味を持っている事についての企画を出せます。もう一つは、『ワセキチ』は半年に一回出版するんですがページ数が70ページ程あるので他のフリーペーパーより厚みがあるというのを売りにしています。
  更に言うと『ワセキチ』の70ページには文字が全体的にびっしり入ってます。他のサークルさんは見開きでビジュアル重視の作りをされているところが多いんです。うちの『ワセキチ』に関しては書くことと読むことをメインに作ってますので結構文量が多いのが特徴です。
──マス研さんの『ワセキチ』が「ノージャンル」と決まったのはいつ頃?
  正確な年数は分からないんですけど、年に二回出していて最新号が37号なので大体2000年代入った頃からだと思います。
──それだけ以前から作っていらっしゃるんですね。 早稲田では「ワセキチ」って早稲田をキチガイなほど愛してるって使い方をする人もいますね
  そうなんですよね(笑)。そっちと勘違いされる事が実際多くて。『ワセキチ』って名前を聞いて何かヤバい事をするサークルだろうって入ってくる新入生がたまにいるんです。三代とか上の代でAVに関する企画をやったことがありまして、それを見て入ってきた人とかもいたりしました。今の代はそんなこと無いんですけど、「ワセキチ」=早稲田のキチガイみたいなイメージで憧れて入ってくる子も結構多かったですね。
──ちなみに新歓担当の佐藤さんはどっちだったんですか?
佐藤 私はマスコミを研究しているサークルだと思って入りました。フリーペーパーの名前は後から知りましたね。『ワセキチ』の本当の意味は目次に書いてあります。早稲田の「機知」。または「奇知」でして独特の知識や取材で得たことを発信するっていう意味の「キチ」なので。確かにやってる事は独特な企画が多いのですが……
──文章も変わった企画をやってますけど、表紙が毎号すごい素敵ですよね。あの表紙のデザインはどうやって作られているんでしょうか?
  マスコミ研究会はサークルの内部が四つのグループに分かれています。その内の三つが文章書くところで、残りの一つが雑誌のデザインのレイアウトをするところなんです。そこの長が毎年毎号の雑誌の表紙を描いてるんです。その時のデザインの長によって色々違っていて、例えば漫画研究会さんと兼サ ーされている方で自分で描くって人もいれば、写真があれば加工できるって方が各企画からもらった写真をコラージュして作っていたこともありました。

ワセキチ

左から漫研所属の方が作成された表紙(Vol.34)、写真コラージュの表紙(vol.35)、近日ウェブにて公開予定の最新号表紙(vol.37)

何かしらやりたいことがある人に来て欲しいです

──早稲田を愛する「ワセキチ」もいるとのことですがサークルに伝わる事件を教えてください。
佐藤 1967年から続く公認サークルなので部室があると思って入って来たんですけど何故か部室が無くて……。50年以上続いていて割とアカデミックって訳ではないですけど、文芸サークルで真面目なサークルなのに何でなんだろうと思って。実はどこかの代の方が公認手続きの書類を出し忘れてしまって一年間だけ非公認の期間があったらしく……。次に部室を手に入れられるのがずいぶん先っていう。結構な事件でした。
──50年以上続くサークルですとOBの方にはマスコミで働かれている方が多いですか?
  そういうOBは多いですかね。でもサークル全員が「マスコミ一筋です」みたいなことは無くて。普通に外資に行く先輩だったり公務員を受ける人もいたりするので、人それぞれって面が大きいですかね。
──就職もジャンルを問わないと。では新入生に求める条件としてマスコミに興味があることみたいなことは無い?
  そうですね。新入生は全員ウェルカムって感じで、特に条件がある訳ではないですね。
──「~な新会員を求む!」というのがあれば教えてください。
佐藤 新歓担当の私から一つ。「創作意欲に溢れる新入生募集」というところですかね。やはりそれぞれの日常の中で「これ面白そうだな」とか考えている人であればあるほど、いざ企画を出すときも発信したい物が止まらないと思います。せっかくフリーマガジンという普段ちっぽけな大学生が考えている事を見てもらえる場所がありますし、それこそ「ノージャンル」なので本当にくだらないものから思想とか大きなものでもいいですし、何かしらやりたいことがある人に来て欲しいです

「それが普段のマス研の活動とどういう関係があるか?」という事を詰めていく

──ここまで『ワセキチ』を中心にお話しをうかがってきたんですが、マス研さんは早稲田祭では講演会の主催やられていますね。作曲家の杉山勝彦さん、京極夏彦さんといったゲストの人選の面白さが特徴的です。人物研究会も講演会をやっているのでいつも時間が被って見に行けない……。そういった講演会の企画はどのように決めているのですか?
  基本的には月に一回、サークル員が全員集まってサークルの方針を決める総会があるんです。そこで「こういう人を呼びたい。それはこういう理由です」っていうのを希望者が書いてきて。それをリストアップした後で投票していって優先順位を付けていき、その順位が高い方から声を掛けさせて頂いてというやり方ですね。
──講演会の企画性という部分はどういう風に考えていますか?
  最初はゲストさんの情報、推してるポイントといった簡単な情報を話した上で聞いてランキングにします。その後ランキングが出た上でゲストさんにアポを取る人と「どういう講演会をやりたい?」、「ゲストさんにどういうことを喋ってほしい?」、「お客様にどういう良い事があると思う?」っていう事と、「それが普段のマス研の活動とどういう関係がある?」というように問いかけを繰り返して具体的な内容を詰めていく感じですね。
── お客さんを念頭に置いて企画をされている。
  僕が実際に係わったのが乃木坂46などの曲を手掛ける杉山勝彦さんの時なんですけど。大学生で乃木坂46が好きな人って多いじゃないですか。そういう人に講演会に来てもらおうと思ってターゲットを絞った時に、杉山さんの人生や教訓を聞くほかにも、「乃木坂のこういう曲には実はこういう意図があってこういう文脈があった上でこういう曲を作ったんですよ」という話を聞いた方が面白くないかな、みたいに話を進める感じですね。

マスコミに興味があって早稲田大学に入ってくる新入生も多い

──マス研さんは「早稲田大学マスコミ研究会」ですけど、早稲田以外にも「マスコミ研究会」と名の付くサークルは多くあります。そういった中で「早稲田大学」の「マスコミ研究会」らしさっていうのは?
佐藤 うちは一応インカレなんですけど、ほとんど早稲田生で構成されていて企画の内容的にも「早稲田大学」に特化したものが多いかなと思います。昔の企画を見ていると「早稲田の構内で何日暮らせるのか」という企画があって、早稲田っぽい企画っていうのはおのずと出てきやすいのかなと。あと新歓担当をさせてもらって思うことはマスコミに興味があって早稲田大学に入ってくる新入生も多いみたいで「マスコミ関係で就職に役立つことはどんな事がありましたか?」みたいな質問をメールでもらいました。私も入学前から早稲田大学がマスコミ系に強いって聞いていたので。その早稲田で銘打ってやっているってことはマスコミに入りたい人も多いのかなと思っています。
  理念的なものになってしまうんですけど「早稲田らしさ」っていうのでよく「バンカラ」って言葉が使われるじゃないですか。「バンカラ」って世間の流行りに迎合してやるもんか、俺の考えが正しいんだという発想じゃないですか。そういう点で言うと既存の社会的な通念をただなぞるだけじゃなくて「それってこう言われているけど実はこうじゃないか」みたいなこと。上下関係について扱った企画がありました。年齢や学年によって敬語を使わなきゃいけないというのがありますよね。ただ二浪した人と現役で入った人がタメ口だと、年齢は二浪の方が上なのに敬語は使わないみたいな不都合があるじゃないですか。そういう穿った目を持つというのがある種「バンカラ」なのかなと思います。

細かい工夫も進めているところです

──そのように「マスコミ」、「バンカラ」に憧れて早稲田に入った新入生が今年もいると思うんですが、新型ウイルス対策で新歓が中止や延期になりました。マスコミ研究会さんの対応はどういったものになっていますか?
  『ワセキチ』って紙媒体の雑誌なので、基本的には手渡しとか、早稲田近辺の飲食店さんに置かせて頂いたりとかで頒布していて。そこからマス研を知って来てくれる人も多かったんです。今回、直接触れ合うというのが出来ない状況でも何かできないかと考えたときにツイッターでワセキチの中身をデータで頒布したらどうかという意見が出て。それを完成次第出していこうというところですかね。あと、新入生ってこの時期不安じゃないですか。ただでさえ不安なのにこういう状況で。そういう新入生に直接アプローチできないかなというのを考え、ツイッターに設置した質問箱ではサークルのことだけじゃなく履修相談なども受け付けています。
佐藤 ネットで頒布するのに、内容はもちろんなんですけど、編集という分科会の方々が素敵なデザインで紙面を彩ってくださっているので紙面を見開きにするとかそういう細かい工夫も進めているところです
──今年はどのように活動して行き、またそこにどのように新入生に参加してきてほしいと思っていますか?
  直接会って活動するというのが出来ないのでオンライン上で企画を進めていくというのが主流になると思います。具体的には、グーグルドライブにこういう企画をやりたいというのをドキュメントで作ってもらい、次にどういう企画をやると決まればその企画内でLINEやZoomを使って各々やっていくことになると思います。ただ普段の活動がオンラインになるというだけなのでそんなに大きな変化はないと思います。新入生についてなんですけど、「今こういう企画をやっています」といった発信は出来るんですけど、新入生にどこまで参加してもらうかという話は、九月からの新学期にするかという案もあり難しい所ですね。

この環境をむしろウェブで発信しやすくなったととらえて

──人物研究会には座右の銘を書いて頂くという伝統があります。マス研さんの座右の銘と、現在の厳しい状況に対する意気込みを聞かせて頂いてインタビューを終了させて頂こうと思います。
佐藤 私からは新歓の意気込みを言いたいと思います。『ワセキチ』は今まで半年に一回しか発行してきていませんでした。なので新入生を前期に迎え入れられないとなると、その分だけ新入生との距離も開くのが不安でした。ですけどこの環境を、むしろウェブで発信しやすくなったととらえて、春学期の間にもマスコミ研究会の存在をちょっとでも知ってもらえるように、興味を持ってくれている子に忘れられないように、ワクワクするような情報を小出しにしていきたいと思います!
── ありがとうございます。では座右の銘をお願いします。
  マスコミ研究会の『ワセキチ』は分厚いこと、中身がしっかり詰まっていることの二つの意味で、「早稲田一アツい(厚い・熱い)フリーペーパー」というのを自称しております。座右の銘といったらそんなところかなと。他のフリーペ ーパーさんに比べて分厚いし中身も詰まっているぞということですね。
── 最後、宣戦布告みたいになりましたね。
  そんなことはないんですけど(笑)。他のフリーペーパーさんとの住み分けという感じですね。
──本日はお忙しい中、ありがとうございました。

取材日:2020年4月17日
LINEビデオ通話使用

人研編集後記

今回のインタビューは時節柄、オンラインで行った。互いに初めての環境の中だったが、マス研さんの『ワセキチ』への思いや企画への取り組み方などは、ジャンル的に遠からずな僕ら人研にとっても大変参考になった。今回ご協力頂いた早稲田大学マスコミ研究会の皆さん、本当にありがとうございました。

☆早稲田大学マスコミ研究会さん☆

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★人物研究会★

「会いたい人に会いに行こう」をモットーとする1965年創立のインタビューサークル。早稲田祭などでは講演会の企画運営も行う。既成ジャンル外のワセキチサークル。新会員募集中。