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配信にて鑑賞した舞台備忘録2021

演劇というと場所は東京・大阪・その他都市部で行われることが多いですが、昨年から続くコロナ禍のことがあり、県をまたぐ移動がなかなか以前のようにはしづらい状況が続いています。そんななか、観たいと思っていた舞台がネット配信されたこともあり、今年は家にいながらいくつかの舞台を鑑賞する機会を得ました。

私自身、舞台というジャンルには明るくなく、好きな作品が舞台化したときに観るというのがほとんどです。なので数は多くありませんが、備忘録として記録しておこうと思います。

★舞台『錦田警部はどろぼうがお好き』

2021.3.11 - 2021.3.21 品川プリンスホテル クラブeX


なんとダブル主演&ダブルキャスト!タイトルにある「錦田警部」と、部下の「アンリ巡査(&怪盗ジャック)」がそれぞれ主演かつダブルキャストとなっていました。同じ役ながら演技は演者さんの解釈によって当然異なるのですが、どちらもキャラクターと乖離しないのが流石でした。こんなこと言いそうやりそうとか、こんな一面あるだろうなとか、それぞれ演技を通してキャラの幅を広げてくれるようなお芝居でした。

加えて主演以外のキャストの方々の演技もめちゃくちゃに良かったです。もともと数話しか登場しておらずほぼ情報がないような登場人物も見事にキャラが立っていましたし、原作ではモブに近い警官たちにも個性があって愛らしく、舞台オリジナルのキャラも原作にいないなんて信じられないぐらい好きになりました。登場人物自体はそれほど多くない舞台なのに、それぞれ存在感があってさみしさを感じさせません。

演技が上手なのはもちろん、脚本も素晴らしく衣装もたいへん素敵で、音楽もとてもとても良かったです。オープニングやエンディングほか劇中歌が何曲かあるのですが、どれもキャッチーで耳に残りますし、振り付けまでカンペキに可愛かったです。コメディ作品として完成度が高くて、ほんとにケチのつけどころがない舞台という印象でした。公式サイトのデザインもモチーフが散りばめられていてカワイイんです本当に……。

しかも初日と千穐楽を配信していただいたため、役者さんの成長や演技がなじんでいるのがわかって感激しました。さらに千穐楽はマチネ・ソワレともに配信があり、昼と夜2パターンの組み合わせを楽しめるうえ、ダブル主演の方々がダブルキャストの出演している公演をオーディオコメンタリーしてくださるという……もはやどうしてここまでしてくれるのか?というような福利厚生でした。

極めつけに後日、錦田警部生誕祭ということで再配信も行ってくださいました。本当にどうしてここまで……


★舞台『夜は短し歩けよ乙女』

      東京 2021.6.6 - 2021.6.22 新国立劇場中劇場                  大阪 2021.6.26 - 2021.6.27 クールジャパンパーク大阪WWホール


6/27配信の大阪千穐楽を観劇しました。

もともと原作の小説が好きで、ビジュアルを見たときからこれは面白いに違いない!と思っていたので、配信が決定したときはとても嬉しかったです。

内容について。これは作品の特色でもありますが、なんと台詞量の多いこと!早口言葉みたいな台詞をよくぞ噛まずに演じておられると感嘆しっぱなしでした。そして黒髪の乙女がなんともかわいい。まさしく主役たる「彼女」がずっとそこにいる!という存在感でした。キービジュアルにもある緋鯉を背負った姿が乙女そのもので……あと乙女の服は赤を基調としているのですが、どの衣装も本当に本当にかわいかったです。いちばん好きなシーンは「私」が鯉にまたがって天狗的妖術で舞い降りるシーンです。

当作品はアニメ映画化もしているのですが、そちらのビジュアルとはけっこう異なる印象で、ストーリーも原作との変更点がいくつか見受けられました。いちばんオリジナル要素を強く感じたのは、竹中直人さん演じる李白さんでしょうか。李白さんは夜は短し~以外にも登場するキャラクターで作品によって外見等も異なるのですが、今回の李白さんはかなり竹中さんの色が濃かったように感じます。しかしそれが作品の濁りにならず、あの摩訶不思議な世界観を構築する一員となっていたのは流石だなあと思いました。

森見先生のストーリーは枝葉のようだと言われていましたが、まさにあっちやこっちやわちゃわちゃと忙しく騒がしくとても楽しい舞台でした。再演があったら今度は京都でもお願いします!


★『舞台・ナポリの男たち』

2021.7.8 - 2021.7.19 ヒューリックホール東京


7/19配信の千穐楽を観劇しました。

発表時からゲーム実況者の舞台……いったいどうなってしまうんだ……と期待していたこの舞台、どうせならと一切情報を入れないまま観たために、開幕して冒頭の自己紹介で福島海太さんが登場したときには思わず大興奮してしまいました。(福島さんは先述の舞台「錦田警部はどろぼうがお好き」にて部下田タテシという超絶キューティーなオリキャラで出演されていたため)

内容はナポリの男たちがグループチャンネルで行ってきた企画コンテンツが舞台化されたもので、オムニバス形式に演じられる劇と劇の合間に、ナポリメンバーによるコメントが挟まるという流れでした。この緩急がまさにチャンネル生放送と同じで、なるほど、だから「ナポリの男たちch特別回」なのだなと。

私はナポリの男たちのチャンネル放送や動画についてはいくつか見たことがある程度で、深い知識があるというわけではなく、今回題材となった企画についても初見のお話もありました。その私でもいくつか小ネタを拾っては「これはあの回の……」とニヤリとすることができたので、ずっと応援している方には本当に感慨深いだろうなと思いながら観ていました。それから、舞台自体とても面白かったのですが、これは演者はじめ関係者の方々が真剣に取り組んでいるからこその面白さだよなとも。シュールなんだけれども、全身全霊でふざけを体現しているといいますか……だから笑えるし、ちょっと泣けたりもして、本当に見どころがたくさんある舞台でした。登場シーンではM字開脚で罠にかかっていた雄すぎがだんだんと可愛く見えてきたり、しゆみが美しすぎたり、サイコパスラーすぎるがずっと怖かったり……。「ナポンヌのムスカリ」は本当に本気のミュージカルでしたしね……主演の渡辺コウジさんのスタイルが良すぎて舞台に映え映えでした。個人的に一番最初にうるっときたのはどす恋!の算数対決土俵入りシーンです。(本当になぜ……)

最初は大丈夫かな、ついていけるかなと緊張しながら観ていたのですが、ナポリの男たちの皆さんのコメントや舞台の雰囲気から、肩ひじを張らずに生放送を観るような気持ちでいたらいいのかもしれないと思いなおし、気軽に楽しんで観ることができました。本当にいい舞台でした!


おわりに

今年私が観たものは、原作が漫画・小説・ゲーム実況者?とジャンルがバラバラでしたが、どの舞台も、もとの作品の再現性とオリジナル要素のバランス感覚がちょうどよかったな~と感じました。

私はほとんど原作を知っている舞台しか観たことがないのですが、好きな作品が舞台上で実体化したときどのような形になるのかを見るのがとても好きです。原作を読みこんでくれているなとか、キャラクターを紐解いたうえで自分の解釈をのせて演じてくださっているなと感じると嬉しくなります。反面、期待するだけ高いハードルを求めてしまっているのかもしれないと思うこともあります。

実写化にあたって、原作と乖離しすぎず、原作ファンが喜ぶポイントを押さえつつ、舞台上で実在の人間ができる表現に昇華して、かつ舞台単体で見たときの面白さも損なわずにいるというのは大変なことだと思います。そんなハードルを飛び越えてきてくれて、新しい可能性を見せてくださる演者や製作者の方々には感謝の念に堪えません。今度はあの作品舞台化しないかな……再演しないかな……来年こそ現地で見られたらいいな……そんな希望を胸に来年も生きていこうと思います。今年もありがとうございました!!!!


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