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七夕。

七月七日、たなばた。

天の川を隔てて存在する、こと座のベガとわし座のアルタイル。

どっちがどっちだったか忘れてしまったけれど、どちらかが織姫でどちらかが彦星。

年に一度、織姫と彦星が出会える日、それが七夕。

響きだけ聞くとなんともロマンチックだが、なんでまた1年に1回しか会えなくなったんだろうか。ロミオとジュリエットでももうちょい会ってるはず。

気になって調べてみると、そこには「娘のことに首を突っ込み過ぎオヤジ」と「ヤンデレカップル」の物語があった。



織姫は、天帝と言われる神様の娘であり、とても仕事熱心だったらしい。なんでも毎日神様たちの着る洋服を織り続けたんだとか。天の川銀河団界で唯一のUNIQLOをやってたっぽい。

あまりに仕事に一生懸命すぎて、遊びに行くこともなく、来る日も来る日も働いてばっかりだった織姫。

さすがにかわいそう、、、と、気の毒に思った父・天帝は、牛追いをしていた青年、彦星をみて、「お、こいつなら織姫を幸せにしてあげられるかもしれない」と織姫を紹介したという。

結果、見事マッチング成功。

織姫と彦星は晴れてカップルとなった。

ところがどっこい。

天帝が思った以上に2人は熱愛状態になってしまう。二人とも仕事そっちのけで恋愛に明け暮れたらしい。

織姫が服を作らなくなったので神様たちの着る服はなくなってしまい、彦星は牛の世話をやめたので牛たちは病気になってしまったという。

仕事も忘れて恋するフォーチュンクッキー状態の2人にさすがの天帝もブチギレ。

「お前ら仕事もしないでイチャイチャばっかりしてんじゃねぇ!」

と、天の川を隔てて、こちら側と向こう側に2人を引き離し、二度と2人を会えないようにしたという。

会えなくなってしまった悲しみから、織姫は仕事が手につかず、朝から晩までずっと泣き続けてしまう。「かわいそう、、、」と思った天帝は、「七夕の日だけは会っていいよ」と伝え、彦星と会うことを許した。

これが七夕の物語だ。



・・・どっちもどっちじゃない?

天帝は天帝で「お前どれだけ娘の恋愛に首突っ込んでんだよ!」って話だし、彦星と織姫についても「仕事ほっぽり出して恋愛だけってそりゃ怒られるわ、あんた。学生でもちゃんとバイトしながら恋愛してるよ、たぶん」と思う。

それだけ好きな人に出逢えたっていうのは、とても素敵なことなのですけれどね。

にしても、それだけ好きな人と無理やり距離とられて、「1年に1回だけ会っていいよ」っていう「どこから目線だてめぇは」という気持ちが沸き起こらざるを得ないとんでも制約で「じゃあしょうがないか」と納得した織姫、彦星もすごい。

ぼくなら親子の縁を切りますわ。

「どうしても寂しくなった時には、天の川の川辺に立って顔を見たり手を振ったりすれば、なんとか寂しさも紛れるか」と最初は思ったけど、天の川の川幅って知ってる?(急なタメ語)

16光年あるらしいよ。


1光年が約10兆キロらしいから、川幅が約160兆キロ。ちなみに地球1周が約4万キロだから、天の川の川幅、地球40億周分の距離。

見えない、こめつぶほどにも見えない。手を振っても絶対わからないし、声も聞こえない。

それだけ距離あったら、会う頃にはじじいになってるわけで、・・・というか人生何周かしないと会えないわけで、「1年に1回なら会っていいよ」っていう天帝のことばは実質詐欺と言ってもいい。

戦場ヶ原ひたぎよろしく、「戦争をしましょう」と宣言をしたらいいと思う。

でも実際には1年に1回会えているわけだから、いったいどうやって会っているのかと思ったら、なんとカササギが会わせてくれてるらしい。

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1年に1回会うとなると、休みなく飛んだとしてこのカササギは往復で320兆キロ移動できる。つまり、年速320兆キロの早さで移動できる計算になる。

ちなみに、

新幹線で時速320km、
ジェット機で時速900km、
宇宙船で時速約27,700km

16光年の距離を半年で渡れるカササギは、これらの乗り物と比べ物にならない速さ、ということになる。

ジェット機につかまって飛ぶのも無理なのに、そんなカササギに乗って移動なんかしたら、風圧で髪の毛は毛根どころか頭皮ごととんでっちゃうだろうし、あまりのGに五臓六腑ぜんぶ飛び出しちゃうと思う。

彦星の構成要素がすべて分解されるだろう。運よく生きて織姫と会えたとして、会えた時には「だれあんた?」って言われちゃうに違いない。

一見ロマンチックに見える七夕、もしかしたら当の本人たちにとって、とんでもないイベントなのではと思うと、なんとも言えない気持ちになった。



そうはいっても、ぼくは七夕が好きだ。

街のあちらこちらに設置される、竹にぶらさがったたくさんの短冊。

自分自身についての願いを書いていることももちろんあるのだけれど、そのほとんどが自分の大切な誰かのためを思っている。

あの竹からはとんでもない量の愛を感じることができるし、そこには優しさに溢れた世界を見ることができる。

世の中は、すごく愛で溢れていると思う。

もちろん、人間だれだって自分勝手なところはある。たとえば、ぼくもこれまでゴミをポイ捨てしちゃったこともあるし、誰かを傷つける言葉や行動をとったことだってきっと数えきれないほどある。

優しいあなただって、ぼくほどじゃないにしろきっとそんな機会があったんじゃないでしょうか。

一方で、同時に凄まじいほどの愛を持っているのも人間だと思う。

自分以外のだれかを自分より強く愛したり、助けたり、優しくしたりする。

短冊からは、ひとのそんな本質が感じられて好き。

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織姫、彦星が豪速で移動して七夕というイベントをつくってくれたおかげで、たぶん7月7日から手前1週間くらいは、世界がいつもより優しくなってると思う。

織姫様、彦星様、ほんとありがとうございます。

そんなイベントに乗っかって、ぼくも短冊に願いを書いてきた。

「ムキムキマッチョになれますように」

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