2015.7.9在日強制送還─デマ検証─

2015年7月9日以降、在日コリアン(韓国人)が強制送還される。
そんな話がtwitterなど、ネット上で散見されたが、5年以上経過しても
強制送還された事実はない

入管への通報を煽っていた人たちも、いまは見受けられず、まるで何事も
なかったかのように、この話題は忘れ去られてしまっている。

在日コリアン強制送還のデマ内容

新たな在留管理制度によって、2015年7月9日に在日コリアンは在留資格を
失い、不法滞在となるから、7月9日以降に、入管に通報すれば、国外退去に
なる。

新しい「在留カード」(特別永住者の場合は「特別永住者証明書」)には
通名の記載がなくなるため、事実上、使えなくなる。

デマの対象となった「新たな在留管理制度の導入」

2009年7月15日、改正された入管特例法が公布され、新たな在留管理制度が
2012年7月9日から導入された。この制度は、外国人の適正な在留の確保に
資するため、日本国内に在留資格をもって中長期間在留する外国人を対象と
して、その在留状況を継続的に把握するためのもの。
制度の導入に伴い、外国人登録制度は廃止され、住基法が外国人にも適用されることになった。

中長期在留の外国人は「外国人登録証明書」から「在留カード」へ切り替えを。
特別永住者は「外国人登録証明書」から「特別永住者証明書」へ切り替えを行う必要になったが、この部分がデマの対象となった。

デマの発信元

「余命三年時事日記」というサイト。
このサイトには、2015年7月9日に在日韓国人が不法滞在になるから
みんなで通報しよう、などと呼びかけ、在日韓国人を記載した「通報リスト」
なるものまで作っていた。

デマを信じる人々

twitterでは、通報を煽るツイートも。

入管のサーバーを落とし、迷惑を掛ける自称愛国者たち

大量通報を裏付ける報道も。
不法滞在の通報、前年比3倍超 ネット上のデマ影響か
(朝日新聞デジタル 2015/12/23)

法務省入国管理局がメールで受け付けている不法滞在の通報が5月以降
前年の3倍以上寄せられていることが分かった。
同局は「在日コリアンは強制送還される」とのデマがインターネットで出回った
影響とみて受け付けを一時停止し、警察に相談した。
昨年度の通報メールは月平均で約460件だったが、今年は5月に1821件
6月に1562件と急増。集計中の7~9月はさらに増加傾向で、同局総務課は
「3カ月間で1万件を超す可能性がある」
在日コリアンらに関する事実に基づかない情報が大幅に増えたという。

今年、ネット上では「7月9日以降、在日は不法滞在者になり、強制送還される」とのデマが広がった。同局は10月末、サーバーへの影響を懸念して情報の
受け付けを停止。同一人物が大量にメールを送りつけた形跡もあり、こうした
メールを排除する対策を取った上で再開する方針という。
11月には業務妨害など刑事事件にあたる可能性がないか 警察に相談した。
同局総務課は「外国人を中傷するメールは通報システムの目的にそぐわず
まったく遺憾だ」としている。 

法務省「在留資格を失うことも強制送還もない」

法務省の在留管理業務室では、取材に対し、7月9日に通報メールが大量に
来ており、電話も来ていたことを明らかにした。「ネット上のうわさについては
承知しています」としたが、在日韓国人が在留資格を失ったり、強制送還され
たりする可能性については、強く否定した。

「特別永住者の方は、外国人登録証明書の有効期限までに切り替えれば
いいことになっています。
一部で7月8日までに切り替えが必要な方もおられますが、期限切れ後で
あっても、申請は受け付けることにしています。それは、在留カードに切り
替えが必要な方も同様です」

特別永住者は、ほとんどが在日韓国・朝鮮人で約36万人(14年末現在)がおり
7月8日までに切り替えが必要な人のうち、6月末時点で2万5000人が切り替えていなかった。切り替えていない場合は、罰則の対象になるものの、それは悪質性などを考えて個々の事案で判断するとしている。

デマへの反証

(1) 2015年7月9日に在日コリアンは在留資格を失い、不法滞在となる

出入国残留管理庁(旧法務省入国管理局)には、特別永住者向けのQ&Aが
掲載されており、次のように書かれている。

現在持っている外国人登録証明書はすぐに特別永住者証明書に切り替える
必要はありますか。

改正入管特例法施行日(平成24(2012)年7月9日)の時点において
特別永住者の方が外国人登録証明書を所持しているときは、一定の期間
その外国人登録証明書が特別永住者証明書とみなされることとなるため
その期間内であれば、必ずしも特別永住者証明書に切り替える必要は
ありません。なお、そのみなされる期間については次のとおりです。

(1) 平成24年(2012年)7月9日の時点で、16歳に満たない方
  16歳の誕生日まで
(2) 平成24年(2012年)7月9日の時点で、16歳以上の方で
ⅰ「次回確認(切替)申請期間」の始期が平成27年(2015年)7月8日までの方
 平成27年(2015年)7月8日まで
ⅱ「次回確認(切替)申請期間」の始期が平成27年(2015年)7月9日以後に
 到来する方
 次回確認(切替)申請期間の始期であるその方の誕生日まで

このように、一定期間、「特別永住者証明書」としてみなされる。
また、期限が過ぎた場合のことも次のように書かれている。

外国人登録証明書が特別永住者証明書とみなされる期間を過ぎても
切替えを行わなかった場合、罰則等はありますか。

特別永住者の方がお持ちの外国人登録証明書は、一定の期間
特別永住者証明書とみなされますが、その期間が経過しても
特別永住者証明書の交付の申請をしなかった場合、1年以下の
懲役又は20万円以下の罰金に処せられることがあります。

このように、強制送還される事実などない。

(2) 新しい「在留カード」(特別永住者の場合は「特別永住者証明書」)には
通名の記載がなくなるため、事実上、使えなくなる。

出入国残留管理庁の特別永住者向けQ&Aで、次のように書かれている。

特別永住者証明書に通称名を表記することは可能ですか。

通称名については、特別永住者証明書には法律上も運用上も記載されません。
中長期在留者の在留管理制度・特別永住者制度の下で法務大臣が継続的に
把握する情報は公正な在留管理制度に必要なものに限られますが、通称名は
在留管理に必要な情報ではないこと
や、基本的に、住民行政サービスに必要な情報は外国人に係る住民基本台帳制度において保有されること等を考慮し法務省において通称名の管理(特別永住者証明書等への記載を含む)をしないこととしています
なお、法務省は住民票を所管するものではありませんが、通称名については
住民票で扱われていると承知しています。

通名は在留管理に必要な情報ではなく、管理をしないことにしているだけで
住民票などでは、併記されるので、事実上、使えなくなることはない。

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