短詩:水母

流行りの夢があるらしい
月から海へ飛び降りて
身体が無数の水母となり
もはや頭を使わずに済むのだという

働くことに疲れ
語ることに疲れ
祈ることに疲れ
聴くことに疲れ
立ち上がらなくていいと囁いてくれる
海が

私がいなくなる
あなたもいなくなる
導かれている訳でもなく
抱かれている訳でもない
みんな等しく
選ばれなかった残り者

水母がいる
数えることのできない
誰かだ

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