カザフスタン 3 of 5

さて、カザフスタンは、中国に1,783キロ、キルギスに1,242キロ、トルクメニスタンに426キロ、ウズベキスタンに2,351キロ、ロシアに7,591キロの長さにわたって国境を接している。
西のウラル川に接する低地から、東のアルタイ山脈に連なる山岳地帯まで、3,000キロの広がりがあり(二つの時間帯をカバーする距離)、北部の西シベリア低地帯から南部のキジルクム砂漠と天山山脈の山岳地帯まで、2,000キロほどの距離がある。
カザフスタンの最北端は北緯55.26度。東ヨーロッパ平原の中央部分の南でイギリスの南端(モスクワの緯度)の位置に相当する。最南端の緯度は、 北緯40.56度。コーカサス地方と南ヨーロッパの諸国の緯度と同じで、マドリッド、イスタンブール、アゼルバイジャンの首都バクーの緯度に相当する。
 
カザフスタン国内には、大小8,500もの川がある。
7大河川の長さの合計は、1,000キロ以上に及ぶ。最大の川はウラル川とエンバ川で、カスピ海に注ぐ。シルダリヤ川はウラル海に、イルティシュ川、イシム川、トボル川は共和国を横断し最終的には北極海に注ぐ。
加えて、4万8千の大小の湖がある。
最大の湖はアラル海、バルハシ湖、ザイサン湖、アラコリ湖、テンギス湖、セレテンギス湖。また、カザフスタンは、世界最大の湖であるカスピ海の北部と東部の沿岸の多くを占める。
カスピ海のカザフスタン側の沿岸は2,340キロに及ぶ。
 
カズフスタンの国境の26%はステップが占めている。
国土の44%は1億6,700万ヘクタールに及ぶ砂漠で、サルイイシコトラウ砂漠キジルクム砂漠などの砂漠乾燥した14%はステップで占められている。
それに対して森林は2,100万ヘクタールである。
 
国土の大部分は地形的に大きく3つに分類される。
中国国境やアルタイ山脈を含むカザフ高原、中部のカザフステップ、西部のカスピ海沿岸低地である。
西部低地はウラル山脈より西側でヨーロッパに属する。国の南部は東西にわたり砂漠が発達し、アラル海の縮小に現れるように灌漑が重要な課題である。
カスピ海にはマンギシュラク半島が突き出しており(マンギスタウ州)、アクタウは唯一の不凍港を擁する。
 
首都は、ヌルスルタン(Nur-Sultan、2019年3月23日トカエフ大統領が首都の名称をアスタナからヌルスルタンに変更)である。2019年に都市名がヌルスルタンに変更になった。
これはナザルバエフ前大統領の名前である。
なお、旧首都のアルマティは、1997年12月、アクモラからより遷都したのだが、カザフの南東部にある都市。カザフスタンの経済、教育、文化の中心地であり、“南の首都”とも呼ばれる。
日本語に広く定着している「アルマトイ」は町の名前のキリル文字綴りをロシア語の日本語転写の慣例によってカタカナに写した場合、「アルマトゥイ」となるはずのものを、さらに「トゥイ」を「トイ」に略したものである。カザフ語の発音に近い「アルマトゥ」と書かれることもある。英語読み(Almaty)でアルマティとすることもある。
アルマ・アタ(英:Alma-Ata、アルマトイ)は、カザフ語でアルマは「リンゴ」、アタは「父」を意味するため、「リンゴの父」を意味している。
 
このアルマトイは、天山山脈の麓にあり、シルクロードの天山北路の要衝でもある。
人口170万人の大都市ではあるが、中国との国境から近過ぎる。
ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領はそう考えて、首都を移転することにした。
遷都先のアスタナは、そこから1,000km近くも北に寄っていて、むしろロシアとの国境の方がずっと近い。親ロシアを掲げる大統領としては理想的なロケーションだったというわけである。
 
新首都のヌルスルタンは、日本のJICAがアスタナ(当時)の建設計画作成支援を実施し,基本設計は故黒川紀章氏が担当している。これは、アスタナ未来都市設計に、日本の建築家故・黒川紀章氏が優勝しアスタナの首都建設に関するマスタープランを作成し、同プランに従って首都建設が始まった。
黒川紀章の都市計画によりつくられた斬新な建物あふれるアスタナの新市街は、街全体がテーマパークの様と例えられたりしている。したがって、アスタナは人口都市、計画都市と言える。
 
黄金色の円錐型のツインタワー、俗に”ビール缶”を含め、黒川は都市計画全体の監修も手がけた。
また、「バイテレク・タワー」という、巨大なポプラの木を思わせる高さ105mの特徴的なランドマーク建造物があるのだが、実はなんとナザルバエフ大統領の手描きスケッチをもとに造られたものだという。
 
アスタナ国際博覧会(Expo 2017)は、2017年6月10日から9月10日までカザフスタンの首都アスタナ(現:ヌルスルタン)で開催された万国博覧会である。
テーマは「未来のエネルギー」であった。
中央アジアでは初の国際博覧会で、日本を含めて115カ国と22の国際機関が参加している。
 
 
その遷都から20年が経つ。。
ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は、70代も後半になった今なお最高権力者の座に留まっており、建国の英雄にして独裁者としての威光は、いずれ訪れる彼の死後にも輝き続けそうだ。
そして、新首都アスタナには高層ビルやオブジェのような塔が次々に建ち、近未来の都市を先取りしたような景観を一層際立たせている。
 
 
実は、カザフは世界でも有数な資源大国なのである。
石油、天然ガス、石炭、ウラン、銅、鉛、亜鉛などに恵まれた金属鉱業はカザフスタンにおける重要な経済部門のひとつであり、GDPの約1割(石油・ガスは3割弱)を占め、石油・ガスを含む天然資源は、工業生産・輸出・国家歳入の約6割を支えている。
石油埋蔵量は300億バレル(世界の1.8%)、天然ガス埋蔵量1.5兆立方メートル(世界の0.8%)。また、レアメタルを含め非鉄金属も多種豊富である。その埋蔵量を列記しよう。
2017年時点であるが、金属鉱物資源の採掘量、世界ランキング、世界シェアは以下の通りである。
 
ウラン鉱(22.2千トン、世界第1位、世界シェア39.0%)
 
クロム鉱(6,261.5千トン、世界第2位、世界シェア18.9%)
 
ビスマス鉱(50.0トン、世界第5位)
 
硫黄(352万トン、世界第6位、世界シェア4.4%
 
鉱(112.3千トン、世界第8位、世界シェア2.3%)
 
アンチモン鉱(400.0トン、世界第9位、世界シェア0.3%)
 
プラチナ鉱(0.1トン、世界第9位、世界シェア0.1%)
 
鉱(745.1千トン、世界第9位、世界シェア3.7%)
 
亜鉛鉱(347.0千トン、世界第9位、世界シェア2.6%)
 
ボーキサイト鉱(4,843.2千トン、世界第9位、世界シェア1.6%)
 
マンガン鉱(1,612.8千トン、世界第9位、世界シェア2.6%)
 
鉱(1,028.5トン、世界第10位、世界シェア4.2%)
 
石炭(約10,600万トン、世界第10位、世界シェア1.4%)
品質が高いため、同国で産出すると組み合わせて鉄鋼を生産している。燃料に向く低品質の亜炭はほとんど採れない。
 
モリブデン鉱(0.5千トン、世界第12位、世界シェア0.2%)
 
鉱(18,330.9千トン、世界第12位、世界シェア0.6%)
 
鉱(85.3トン、世界第13位、世界シェア2.6%)
 
このほか、非金属鉱物資源として、リン鉱石(150万トン)を採掘している。
 
ウランは恒常的に生産量が増加しており、特に世界金融危機を経てからは伸びが著しく、2010年の間には1万7,803tU(金属ウラン重量トン)を産出して以降、カザフスタンはウラン生産で世界第1位(1997年は13位)となった。
 
今後、炭化水素・クロム・鉄は50 ~ 80年、ウラン・石炭・マンガンは100年以上の生産が可能であると言われている。
一方、輸出の主要部分を占める非鉄金属および貴金属鉱山の開発・生産は12 ~ 15年程度で枯渇する可能性が指摘されている。
 
カザフスタンは資源に恵まれている一方、品位の低さなどから開発に至った鉱山は確認埋蔵量の35パーセントに過ぎず、10種の鉱物(ダイヤモンド、錫、タングステン、タンタル、ニオブ、ニッケル、ボロン、マグネサイト、マグネシウム塩、カリウム塩)はいまだ開発されていない。
鉱床探査の不足により、近年は埋蔵量減少分が補填されず、質・量ともに低下していると指摘されており、地質調査部門の発展促進が課題となっている。
 
カザフスタンの鉱業における主要企業は、Tau-Ken Samruk(金属)、KAZ Minerals(銅、銀など)、Kazakhmys Corporatiopn(銅など)、 Kazzinc(亜鉛、銅など)、Eurasian Resources Group(旧:ENRC、クロム、鉄鉱石、アルミニウム、発電事業)、ArcelorMittal Temirtau(鉄鋼)、Kazatomprom(ウラン採掘を含む国営原子力公社)などである。
 
旧ソ連崩壊後の厳しい経済状況の中、民営化を中心とする経済改革を推進、米国企業が参加するテンギス油田開発の始動などにより、1996年に独立以来初めてプラス成長を記録した。
1998年には農業,重工業の低迷及びロシアの金融危機によりマイナス成長(前年比マイナス2.5%)に転じたものの、1999年以降は再びプラス成長に転じ、世界的な石油価格の上昇を追い風に、2000年以降年平均10%という好調な経済成長を維持した。
ただし、2007年以降は金融危機による世界的な景気の減退とともに経済成長率は鈍化。
近年は5%前後の成長率で推移している。
カスピ海周辺では欧米石油メジャーや日系企業が参画し大規模な油田開発、探鉱を行っている。原油は、ロシア向け、ロシア経由及びコーカサス地域経由での欧州向け、並びに中国向けにそれぞれパイプラインで輸送されている。
エネルギー・鉱物・資源開発への外資導入を重視するとともに、イノベーションの推進により持続的発展に向けた産業の多様化を図っているが、産業構造は依然として石油、ガスをはじめとする資源エネルギー分野に大きく偏っている。
 

農業に関しても簡述しておこう。
カザフスタン農業カザフスタンの経済英語版)において占める割合は低いままである。農業の国内総生産 (GDP) に占める割合は10%に満たない6.7%であり、労働者の20%が農業に従事している。また、国土の70%以上が穀物栽培や牧畜に使用されている。北米と比較すると農業用地の国土に占める割合は低いが、カザフスタンの北部地域ではこの数値が高くなる。農業用地の70%は牧草地として使用されている。
カザフスタンにおいて最も収穫高の多い穀物小麦である。
カザフスタンは世界有数の小麦生産国であり、カザフスタンの小麦はアフガニスタンイラン中国ロシアを始めとする世界各国に輸出されている。他に生産されている作物としては大麦綿花シュガービートヒマワリ亜麻などがある。
カザフスタンの農業用地はソビエト連邦時代にニキータ・フルシチョフによりカザフスタン北部で行われた処女地開拓計画の間に土壌の栄養の枯渇が進んだ。
これは現在も農業生産に影響を及ぼしている。カザフスタンワインアルマトイ東部の山麓地帯で生産されている。
2011年、カザフスタンは2009年の2100万トンを上回り、年間収穫量記録となる2690万トンの穀物を収穫した。だが、今後の収穫高に関しては、カザフスタン農業省によれば干ばつ被害等のため収穫高が1400万トンにとどまる見通しであると述べている。
 
 
中央アジア各国の大統領は絶対的権力者である。その権威主義体制は長期政権に繋がり、その結果、国民の目には、政治家は現大統領一人しかいないように見えてしまう。
カザフの現在の大統領はカシムジョマルト・トカエフである。
ソ連邦構成国だったカザフ・ソビエト社会主義共和国 共産党第一書記・同共和国大統領から、そのまま1991年12月にカザフスタン共和国大統領に就任したヌルスルタン・ナザルバエフが、独立以来2019年まで27年間一貫して大統領の地位にあった。
1995年、憲法はカザフスタンを大統領制国家であると規定し、大統領に大幅な権限を与えた。
現在のカシムジョマルト・トカエフ大統領が2019年3月,ナザルバエフ初代大統領の電撃辞任の表明を受け,憲法上の規定により就任した。任期は5年。
ナザルバエフは1991年にカザフスタンがソ連から独立した時から大統領の地位にあり、2015年には98%という圧倒的な得票率を得て、任期5期目に突入した。すべてを望むがまま牛耳る権力が彼にはあった。
ナザルバエフは1991年にカザフスタンがソ連から独立した時から大統領の地位にあり、2015年には98%という圧倒的な得票率を得て、任期5期目に突入した。すべてを望むがままにできる権力が彼には有るのだ。
しかしその裏で腐敗は深刻で、身内に便宜を図るための道路工事はつねにどこかで行われている。
カザフスタンには膨大な石油と天然ガスの埋蔵量があり、石油輸出額は2015年だけで350億ドルにもなる。
アスタナの巨大建造物群は、そのオイルマネーに支えられているのだ。
ナザルバエフは、チンギス・ハンの時代に遡るようなカザフ族の復古主義的なシンボルをアスタナのあちこちに配させていることでも知られ、そんなある種の裸の王様ぶりで国民の嘲笑の的になることもある。
しかし、ソビエト連邦が核実験をくり返していた埃っぽい草原の国をここまでに育て上げたのは、ひとえに彼の才腕なのである。
 
ところで、旧ソ連諸国の中央アジアの政権が長期化する理由はどこにあるのだろうか?
旧ソ連諸国では、「権力か、または死か」という状況に陥りやすい。
強権力は、不正蓄財や政敵の弾圧などを伴いやすく、仮に大統領が権力の座から降りると、過去の犯罪行為を追及される恐れがある。
そうすれば、単に権力や名誉を失うだけでなく、本人および一族郎党の財産・生命も保障されない。
こうした事態を避けるために、権力の座に我執となって執着するのは当然である。
旧ソ連諸国の最高権力者は、政権内で自分を脅かすライバルが台頭しないよう、常に監視している。
大統領は、政治的野心を持たない実務者タイプを首相に据えるのが常である(旧ソ連圏ではそうした首相のことを「技術的な首相」と呼ぶ)。その結果、国民の目には、政治家は現大統領一人しかいない様に見えてしまうのだ。
旧ソ連諸国で大統領選挙をやると、現職が圧勝するのが一般的である。政権側によるマスコミの統制や独占、野党への圧迫に加え、投票・開票の不正なども横行していると当然に考えられる。
こうした不正工作を重ねることで、ますます辞められなくなる。
選挙で円満な政権交代が起きることはまずなく、こうしたスパイラルで、独裁権力は政権がどんどん強権化し、長期化していくのである。
 
以上
 
次は、4 of 5 に続く、
 

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