旧CIS ;キルギス (5 of 8 )


 
次は、キリギスの世界遺産に入ろう。
騎馬民族のキルギスにも今世紀に入り世界遺産に3ヶ所が認定されている。
 
● 聖山スライマントーオ(Sulaiman-Too Sacred Mountain)
スライマン・トーは、スライマンの山のことで、スライマンは、コーランに出てくる「聖人」を意味する。
キルギス第2の都市「オシュ」近郊にある山で、初めて2009年に世界文化遺産登録された。
スライマン・トーは18世紀に預言者スライマーンが逗留したという伝説に従い、名付けられた。中央アジアイスラム教徒の重要な巡礼地である。
この山は、イスラム伝搬以前から巡礼地となっており、景観にもすぐれ旅人の目印となり、山自体が信仰の対象になっている。
現在は地元イスラム教徒の崇拝の対象となっている。 石器時代~青銅器時代にかけての遺跡、線刻画群、礼拝所、参詣道、イスラーム建築、博物館の6つの要素が評価され世界遺産に登録された。
モスクは1510年建設、20世紀に修復を施されたモスクには、設置された階段を登ることができ、観光客にも人気の場所となっている。
首都ビシュケクから南西に約400 ㎞に位置する。
 
●     シルクロード:長安-天山回廊の交易路網
「シルクロード:長安-天山回廊の交易路網」は 中国、カザフスタン、キルギスの三国にまたがる8,700キロメートルの広大な交易路網であり、全部で33ヶ所あり、2014年に世界文化遺産に登録された。
中国の史跡が22ヶ所、カザフスタンが8ヶ所、キルギスは「アクベシム」「バラサグン」「クラスナヤ・レチカ」の3か所が登録された。
3ヵ国(中国、キルギス、カザフスタン)の共同申請が認められた。
世界遺産登録が近年になるまで実現しなかったのは、3ヶ国間のコミュニケーションが上手く進まなかったことが一つの要因であった。
 
#アク・ベシム (スイアーブ:砕葉城)遺跡
アク・ベシムは、ソグド人都市を前身とする、7世紀の都城遺跡である。
今ではかろうじて建物の痕跡だけが残る。
当時この地を支配していたのは西突厥で、玄奘もこの地で西突厥の可汗を訪ねている。しかし、唐は7世紀半ばにこれを滅ぼし、西域の拠点としてスイヤブ(中国名、砕葉)城を置いた。
この砕葉城があるスイヤブは当時、交易の中心として栄えた都市であった。
その後スイヤブは何年にもわたって中国人やトルコ人、チベット人などが戦いを繰り広げ、最終的にはトルコ系のテュルク族が支配したことから名前も現在のアク・ベシムに変わりました。
玄奘三蔵法師がインドに向かう途中、ここで突厥の可汗(王様)に丁重に接待されたそうで、ソ連時代に発掘された立派な仏像はエルミタージュ美術館にあり、これから更に日本の協力で遺跡発掘を実施するそうである。
 
#バラサグン遺跡とブラナの塔
バラサグン遺跡は、遊牧民族国家カラハン朝(9世紀)の首都、ついで西遼(13世紀)の首都となった遺跡である。
前記のアク・ベシム遺跡のすぐ近く、南に約10キロメートル離れたバラサグン村にある
このバラサグン遺跡にブラナの塔がある。
ミナレットと呼ばれているブラナの塔は、イスラム教寺院のモスクに付随する塔である。
高さ24 m の円錐塔「ブラナの塔」が残るが、地震で上部が崩れ落ちる前は46mもあったと言われている。
 
様々な文化が入り込んだエリアでもあるため、遺跡に発見されたものにも中国の唐文化やキリスト教文化、ゾロアスター教文化やテュルク民族文化などの碑文や石像などがある。
多文化交流の跡が世界遺産に選ばれた理由の一つでもある。
 
天山山脈を望む大地にポツンと建つブラナの塔と、その麓の草原からニョキニョキと丸みを帯びた石像がいくつも顔をのぞかせており、その表情がいかにもユーモラスなのだ。
この石人像は、突厥の戦士のお墓といわれており、右手に馬乳酒の杯、左手に剣を持っているものが多く、同じ顔は一つもない。
けっこう広いエリアに点在していて、他にも石臼やアラビア語が書かれた石盤なども置かれている。
シルクロードの美しい草原に佇む、やや寂しげで神秘的なブラナの塔と石人である。
 
また、塔の近くにはミニ博物館がある。
館内には、ネストリウス派キリスト教の十字架、仏教寺院の柱の土台、ゾロアスター教の鳥葬後の納骨器などがあり、まさに文明の十字路を実感できる。
そして、ぜひ塔の上まで登ることだ。
塔に設置された外階段を少し上がると、内部への入り口がポッカリ開いている。
塔の中は真っ暗でほとんど何も見えないため、ヘッドライトなどがあると安心だろう。
また、狭い内部は人一人がやっと通れるほどの幅なので、下りてくる人と途中でかち合わないように注意が必要だ。
上まで続く螺旋階段はかなり急なため、上がる・・というよりはよじ登るという感じだが、2~3分で頂上に到着できる。そして、息を切らしながら暗闇から這い出ると、そこには360度の大パノラマが目の前に広がる。
 
#クラスナヤ・レーチカ
クラスナヤ・レチカ(英語、ナヴィカット)とは遺跡のある村の名前で、ロシア語。意味は“赤い川”。
山から流れる川が土を運んで来て川が濁っているため、この名がついた。
クラスナヤ・レーチカ は、首都ビシュケクより東へ40㎞のチュー渓谷にあり、ソグド商人によって6世紀に建設された、
チュー渓谷、タラス渓谷を含むセミレチエ地方(キルギス北部)で最大で非常に重要な価値のある遺跡である。他に、スヤブ、バラサグンをはじめとする都城群がある。
これらの都城群は、1500年間に亘り中国と欧州を結ぶシルクロードの政治的、経済的、軍事的拠点であり続けた。
特に、クラスナヤ・レーチカはチュー渓谷の主要拠点であるが、1980年代に行われた発掘調査以降、適切な保存措置がとられていないため、全体は21世紀初頭の時点でも発掘しきれていない。
 
●     西天山
2016年、トルコイスタンブルで開催された第40回世界遺産委員会において、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタンの3か国が共同推薦した西天山が世界自然遺産として新規登録された。
 
天山山脈・カラタウ山脈にまたがる3か国からなる地域(総延長は約2500km、海抜では約700~4500m)。カザフスタン(アクスー=ジャバグリ自然保護区、カラタウ国立自然保護区、サイラム・ウガム国立公園)の3件、
キルギス(サリ・チェレク国立生物圏保護区、ベシュ・アラル国立自然保護区、パディシャ・アタ国立自然保護区)の3件、
そしてウズベキスタン(チャトカル国立生物圏保護区)の1件、
計7件の自然保護区や国立公園である。
 
西天山は、総延長約2500km、海抜約700m~4500mにも及び、気候も亜熱帯からツンドラに跨っているため、3か国それぞれの地域で異なった固有種、絶滅危惧種を有している生物多様性豊かな場所となっている。
 
地形的にいうと、キルギスのビシュケクから見えるキルギス・アラトー山脈を越えた先のタラス・アラトー山脈から始まり、カザフスタン南部とウズベキスタンの首都タシケントより東側までのびる山々を指す。
現地名で言えば、タラス・アラトー山脈、カラタウ山脈、プスケム山脈、ウガム山脈とチャトカル山脈をいう。
 
世界最大級の山脈が育む多様な動植物。3ヵ国の7つの保護地域から構成されるこの遺産は、世界で最も大きな山脈の一つである天山山脈の西部に位置している。
西天山の標高は700mから4503mにまで及び、多様な景観に特徴づけられ、きわめて多くの生物の宝庫となっている。
古生代~中生代の地質から多数の化石も出土している。
特に植物の多様性に優れ、ナッツや果物などの多くの栽培品種の原種が生育し、希少種や固有種が多いだけでなく、多様な森林や独特の植物群落の組み合わせも見られる。
また、生息する動物の種数も多く、猛禽類やユキヒョウ等の希少種が多い。
こうして、中央アジアの中でも最も自然の美しい場所として知られている。
確認されているだけでも、500種類の脊椎動物、83種類の哺乳類、368種類の鳥類、33種類の爬虫類、4種類の両棲類、75種類の魚類、300種類の虫がいるというのだ。
 
以上
6 of 8 に続く、

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