核心/確信/革新 の ことば


かくしんのことば
ふかくしんじつ、としんじることば

宮沢賢治 「告別」

春と修羅第二集より 
https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/47027_37961.html

三八四  告別
一九二五、一〇、二五、

おまへのバスの三連音が
どんなぐあひに鳴ってゐたかを
おそらくおまへはわかってゐまい
その純朴さ希みに充ちたたのしさ
ほとんどおれを草葉のやうに顫はせた
もしもおまへがそれらの音の特性や
立派な無数の順列を
はっきり知って自由にいつでも使へるならば
おまへは辛くてそしてかゞやく天の仕事もするだらう
泰西著名の楽人たちが
幼齢弦や鍵器をとって
すでに一家をなしたがやうに
おまへはそのころ
この国にある皮革の鼓器と
竹でつくった管くゎんとをとった
けれどもいまごろちゃうどおまへの年ごろで
おまへの素質と力をもってゐるものは
町と村との一万人のなかになら
おそらく五人はあるだらう
それらのひとのどの人もまたどのひとも
五年のあひだにそれを大抵無くすのだ
生活のためにけづられたり
自分でそれをなくすのだ
すべての才や力や材といふものは
ひとにとゞまるものでない
ひとさへひとにとゞまらぬ
云はなかったが、
おれは四月はもう学校に居ないのだ
恐らく暗くけはしいみちをあるくだらう
そのあとでおまへのいまのちからがにぶり
きれいな音の正しい調子とその明るさを失って
ふたたび回復できないならば
おれはおまへをもう見ない
なぜならおれは
すこしぐらゐの仕事ができて
そいつに腰をかけてるやうな
そんな多数をいちばんいやにおもふのだ
もしもおまへが
よくきいてくれ
ひとりのやさしい娘をおもふやうになるそのとき
おまへに無数の影と光の像があらはれる
おまへはそれを音にするのだ

みんなが町で暮したり
一日あそんでゐるときに
おまへはひとりであの石原の草を刈る
そのさびしさでおまへは音をつくるのだ
多くの侮辱や窮乏の
それらを噛んで歌ふのだ
もしも楽器がなかったら
いゝかおまへはおれの弟子なのだ
ちからのかぎり
そらいっぱいの
光でできたパイプオルガンを弾くがいゝ


お前が一人の女を想うようになるそのとき
お前が一人の男を想うようになるそのとき
お前が
 生きるとは
 死ぬとは
 立ち上がるとは
 掴むとは
 潜るとは
 浸るとは       何か
それを考えるようになるそのとき
おまへに無数の影と光の像があらはれる
おまへはそれを音にするのだ


中原中也 「春日狂想」

http://nakahara.air-nifty.com/blog/2012/04/post-9be0.html

春日狂想

   1
愛するものが死んだ時には、
自殺しなきゃあなりません。

愛するものが死んだ時には、
それより他に、方法がない。

けれどもそれでも、業(ごう)(?)が深くて、
なおもながらうことともなったら、

奉仕の気持に、なることなんです。
奉仕の気持に、なることなんです。

愛するものは、死んだのですから、
たしかにそれは、死んだのですから、

もはやどうにも、ならぬのですから、
そのもののために、そのもののために、

奉仕の気持に、ならなきゃあならない。
奉仕の気持に、ならなきゃあならない。

   2
奉仕の気持になりはなったが、
さて格別の、ことも出来ない。

そこで以前(せん)より、本なら熟読
そこで以前(せん)より、人には丁寧

テンポ正しき
散歩をなして
麦稈真田(ばっかんさなだ)を敬虔に編み――

まるでこれでは、玩具(おもちゃ)の兵隊、
まるでこれでは、毎日、日曜。

神社の日向(ひなた)を、ゆるゆる歩み、
知人に遇(あ)えば、にっこり致し、

飴売爺々(あめうりじじい)と、仲よしになり、
鳩に豆なぞ、パラパラ撒(ま)いて、

まぶしくなったら、日蔭(ひかげ)に這入(はい)り、
そこで地面や草木を見直す。

苔はまことに、ひんやりいたし、
いわうようなき、今日の麗日(れいじつ)。

参詣人等(さんけいにんら)もぞろぞろ歩き、
わたしは、なんにも腹が立たない。

   《まことに人生、一瞬の夢、
    ゴム風船の、美しさかな。》

空に昇って、光って、消えて――
やあ、今日は、御機嫌いかが。

久しぶりだね、その後どうです。
そこらの何処かで、お茶でも飲みましょ。

勇んで茶店に這入(はい)りはすれど、
ところで話は、とかくないもの。

煙草(たばこ)なんぞを、くさくさ吹かし、
名状しがたい覚悟をなして、――

戸外(そと)はまことに賑やかなこと!
――ではまたそのうち、奥さんによろしく、

外国(あっち)に行ったら、たよりを下さい。
あんまりお酒は、飲まんがいいよ。

馬車も通れば、電車も通る。
まことに人生、花嫁御寮(はなよめごりょう)。

まぶしく、美(は)しく、はた俯いて、
話をさせたら、でもうんざりか?

それでも心をポーッとさせる、
まことに、人生、花嫁御寮。

   3
ではみなさん、
喜び過ぎず悲しみ過ぎず、
テンポ正しく、握手をしましょう。

つまり、我等に欠けてるものは、
実直なんぞと、心得まして。

ハイ、ではみなさん、ハイ、御一緒に――
テンポ正しく、握手をしましょう。




「別れ」と、それでも続くもの

「告別」も「春日狂想」も、別れのうただ。
そして、生きていくことのうただ。

終わるものと、終わらないもの。
終わらないものが、終わる者に対してできること、できないこと

物を捨てること 物との関係性の終わり
ぬいぐるみや人形、手紙、写真(データじゃなくて紙の)、衣服、を捨てられないこと、「お焚き上げ」

「正しくお別れできるように」

岡本晃樹
https://nakanojo-biennale.com/artist/teruki-okamoto
ジャグリングをやっていました。投げたり、取ったり、載せたり。でもものと体の関係は、そういった「アフォーダンス」の範囲内で終わってしまうものでは決してないと気づいた時から、どうやって彼らと仲良くなるのか、どうやって彼らとお別れをするのか、を考えるようになりました。
ものと体はもっと深く関係し、何かを共有できるはずで、そんな「新しくものと出会い直す方法」を模索しています。それは記憶を重ね合わせることであり、正しくお別れを結ぶことであり、でも、これからを肯定することでもあると思うのです。

farewell 告別(の言葉)  correct funeral “正しい”別れ 供養

何が正しいコミュニケーションの在り方(システム・フォーマット?)かが分からない
儀式の重要さ、祈りにおいて行為の形が決まっていること


僕は、「」というものを知らない。具体的には、葬式に出たことがない。
死というものに対して、そのまわりで、どのように振舞っていいのか分からないのだ

本当はまわりにあるいくつもの死、
だがそこには私との間に確かな断絶がある。

B29 私が知らない時代のこと、私の祖母(から聞かない話)
20010911 私が7歳のときだ 記憶はない
20110311 私が17歳のときだ テレビがずっとついていたような気がするが、記憶があいまいだ、朝早くに揺れで起きた日の記憶と混濁している、その日もテレビを見ていた

路上、鳩と烏の死体
蜘蛛、捕食

柳田国男「山に埋もれたる人生あること」

201408?京都認知症母殺害心中未遂事件後


20150107シャルリーエブド銃撃

20150824一橋大学アウティング

20151225電通社員飛び降り

20160726相模原障害者施設

20170302?新国立競技場現場監督過労
20170415発見

201708-10

20180907九大放火
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/450029/

20190504 梅田大丸飛び降り

20190718 京アニ放火火災

20200106 新宿駅前歩道橋


いや、死というのは最も分かりやすい(必然的な)別れ・関係性の結び直しであるだけだ。
僕にも別れや、関係性の結び直しの体験はあるだろう。

一年に一度も会っていない家族のことを考える。
5年も10年も会っていない友人のことを考える。(はたして今も「友人」と言えるだろうか?)
アカウントが消えたままの知り合いのことを考える。
携帯のデータが消えても僕が連絡を取ろうとしなかった人たち、
未読にしたままのLINEメッセージ、反対に、既読がついても返信が来ないLINEメッセージ、

・関係性には名前が付けられない
・関係性は更新され続ける

別れは、関係性の結び直しの一つ、といえるだろうか

名前がつかぬまま、それ( との関係性、 に対する感情、)を抱えていくこと
名前がつかぬまま、触覚的な(本質的な、本能的な、直感的な?)コミュニケーションを続けること、

『つまり、我等に欠けてるものは、実直なんぞと、心得まして。』

「実直」 誠実さ、嘘をつかない


integrity、誰しもに「同じ一つの声で語ること



繰り返し振り返るだろう日のこと



これからもずっと 繰り返し振り返るだろう日 のことを思い出す

ネガティブなことだけを見つめるのは不公平だし、誤りですらある。
世界に、そして私に、
怒りや寂しさ、悔しさや苦しさ (これを「=ふしあわせ」とはしたくないが) と同量の 「しあわせ」があるなら、そちらにも光を当てて目を向ける必要がある。

繰り返し振り返るだろう日のこと

繰り返し振り返るだろう日のこと

繰り返し振り返るだろう日のこと

繰り返し振り返るだろう日のこと

繰り返し振り返るだろう日のこと、それは2018/02/18
繰り返し振り返るだろう日のこと、それは2019/09/23
繰り返し振り返るだろう日のこと
そしてそれは、今日のことでもある

繰り返し振り返るだろう いま 繰り返す、
振り返る、繰り返す、(振り返る だろう)
繰り返し 選ぶ、何度も


思い出さなければ忘れてしまうことを思い出すこと
連絡を取らなければ音信不通になる人に手紙を出すこと
鳴った電話をとること/とらないこと


いま、もう一度、そのことを書き直す(捉え直して結びつけなおす)こと
そうして、アナログなやりかたで「再生」させること

走馬灯スナップブックをつくること


死、と同じ発音で


私の臓腑に分け入って 魂手ずから引いてくる 音は聞こえぬ 手のなる方へ
そこにあるのは手ざわりの 良きか悪きか決め(肌理)られん 音(おと)に聞くもまだ 姿形(すがた(orかたち)は見えぬ

もしも私がよく(善く/長く)生きて それがしるしとなるならば 
その(「intensity」としての)輝きやその暗さ、熱(ねつ)持つ冷たさ、柔らかさ、鋭さ、粗さ(あらさ)、すべらかさ(orよどみなさ)、

その幾ばくが 残るだろうか

軽くなった 私の躰(からだ)に 私は残ってないように 残っているのは そのしるしだけ

 うたわれた飛行機雲のように のぼっていくのも またひとつ 

《まことに人生、一瞬の夢、
    ゴム風船の、美しさかな。》

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