流星群

「チュドーン。チュドーン。隕石が僕の顔面に降り注ぐ。痛い。チュドーン。チュドーン。今日は半世紀に一度の流星群が観られる夜。ある者がスマートフォンの画面に収めようと躍起になり、またある者が見えなくなるまでの一瞬に願い事を託す流星群は、すべて僕の顔面に衝突していた。チュドーン。

『チュドーン。チュドーン。』
父は、それしか言わない。約50年前、父がまだ子供のときに流星群が父の顔面に降り注ぐという事故が起きて以来、ずっとそうらしい。病室で喚く父を背に、私はドクターの待つ診察室に向かった。
『父は、もう長くないんですか?』
『落ち着いて聞いてください。お父様は、隕石である可能性があります。』
それを聞いたときは、何の冗談か、このヤブ医者め、病院を変えたほうがいいな、と思っていた。
しかし今朝、自宅のカーテンを開けると、信じられない光景が広がっていた。
チュドーン。チュドーン。
父が降り注いでいた。父は隕石だったのだ。そして今、私の顔面に降り注いでいる。チュドーン。痛い。これが、父の痛み。父の覚悟。ぼくは、そんなおとうさんが、だいすきです。3年4組 石井 けんた」
「はーい、けんた君よくできましたー!」

息子は、異常だ。
妻が次女の出産で入院しているため、私が代わりに息子の授業参観にきたのだが、このデタラメな作文はなんだ?息子は何を考えている?案の定、担任の先生から放課後呼び出された。息子の異常性についての相談だろう。先生が待つ教室に行くと、うつむいて何かをブツブツと呟いている。聞こえないので近づいてみると、先生は目をギョロギョロさせてこう言っていた。
「チュドーン。チュドーン。」

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