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神道政治連盟国会議員懇談会で配布された文書に関する抗議声明 (靖国・天皇制問題情報センター)

遅ればせながら、以下の声明が出されましたので、公開しておきます。
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                          2022年8月27日

神道政治連盟国会議員懇談会で配布された文書に関する抗議声明

                   靖国・天皇制問題情報センター

 わたしたちは、報道により、2022 年 6 月に開催された神道政治連盟・国会議員懇談会において冊子が 配布されたことを知った。
 「夫婦別姓 同性婚 パートナーシップ LGBT ――家族と社会に関わる諸問題」と題された、この冊 子には、弘前学院大学の教員である楊尚眞(やん・さんじん)が 2 月におこなった講演録「同性愛と同性 婚の真相を知る」が掲載されていたと確認した。この講演録は、性的マイノリティに対する差別意識を臆 面もなく顕わにし、かつ、科学的・医学的にも対象者の精神状況に悪影響を及ぼすと指摘されてきた「転 向治療(コンバージョン・セラピー)」を肯定するものである。
 「転向治療」については、1970 年代より米国など、いわゆる「宗教右派」を中心としたキリスト教の なかで同性愛者を「治療」する目的で促進されてきたものの、カウンセリングや電気ショック療法などに よる手法が問題視されてきた。また、現在、そもそも性的指向は、どこに向こうと向かなかろうと、生後 に社会的に構築されたものであり、ましてやすべてを異性愛に“治す”べきものでもないことがあきらかに されている。世界保健機関(WHO)も 1990 年 5 月 17 日には「同性愛」を国際疾病分類から除外し、す でに 30 年余の歳月が経過している。しかしながら、米国では同性愛者の人権について認識が共有された がために、「回復治療」を継続しようとする「宗教右派」のマーケットがアジアやアフリカなどに向けて 〈輸出〉されつつある現状がある。この動きは、植⺠地主義そのものであることに注意を差し向けたい。
 楊尚眞の持論としての主張は、このような「宗教右派」の流れを汲む点においても非常に悪質である。 そもそも、キリスト教は、その歴史のなかで異性間の結婚を重要視し、「家族」を尊重するあり方を推進 してきた。そのため、こと楊尚眞のような「宗教右派」のみならず、一般的なキリスト教あるいは教会も、 このような有害な差別言説が生み出されてくる流れとは無縁ではない。
 同時に、楊尚眞の主張が日本の文脈で喧伝されることについても注意を差し向けたい。講演会を実施し た神道政治連盟は、これまで、「伝統的家族」と称して、異性愛を中心とした近代家族のありかたを「正 しい家族」として喧伝しつづけている。日本における近代家族は、天皇を中心とした「国家」の構築と、 「臣⺠」管理のための戶籍制度という法制度をもち、かつ、家父⻑制による「国⺠」管理のために家族国 家観というイデオロギーを用いて形成されてきたものである。「自⺠党憲法改正案」(2015 年)では、天 皇を「元首」とし、24 条に家族の自助義務が明記される。これらの流れを鑑みると、天皇制国家・日本 を復権させようとする目論見がみてとれる。
 また、1980 年代より問題化されてきた勝共連合=旧統一協会(現・世界平和統一家庭連合)と自⺠党 を中心とした議員たちとの強いパイプが、安倍晋三元首相が殺害されて以降、報道等により注目されるこ ととなった。現政権も旧統一協会、神道政治連盟との関係性をもちつづけているが、その政策のひとつに 家族政策の強化があることはしばしば指摘されてきたことではある。
 このような現状を憂い、神道政治連盟の行動および講演者としての楊尚眞の持論について、わたした ち、靖国・天皇制問題情報センターは、満腔の怒りをもってここに抗議する。

(連絡先:省略)

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