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『Rock ‘n’ Roll Star!』ファーストインプレッション

ボウイの『Rock ‘n’ Roll Star!』ボックスが国内盤のリリースに先駆けて配信されましたのでファースト・インプレッションを書いてみました。

今回のセットの目玉となる音源は一枚目と五枚目のディスクに集中している印象。まずは一枚目ですが

1. So Long 60s (San Francisco Hotel recording)
前回の『Divine Symmetry』では1971年のボウイ初渡米の際にサンフランシスコ・ホテルでの録音から目玉となるこの曲だけ漏れていて「何で肝心の曲を入れないかな?」とマニアが憤慨した訳ですが…なるほど今回のボックスにとっておいた理由は聞けば解ります。この曲こそハンキー・ドリーからジギーへの架け橋となる曲だったのですね!そりゃオープニングに配置させられる訳だ。

2. Hang On To Yourself (early demo)
昔からブートで聞けたうえ、何故か晩年のジーン・ヴィンセントと一緒に録音したと言われて来たデモテイクですが、今回は音質が一気にアップグレード、なおかつようやく正確なピッチにて収録。音質が違い過ぎて別テイクかと錯覚します 笑 元々ジーン・ヴィンセント参加云々は眉唾でしたが、今回彼のクレジットはありません。その辺の真偽はブックレットで触れてくれていることを期待しましょう。

5. Star (Aka Stars) (demo)
ボウイがピアノを弾きながら歌い、いかにもこの時期らしい雰囲気が漂っており、後のジギー・バージョンのようなギラギラ感はありません。前後のデモと比べて音質が落ちるのでテープの状態が良くなかったのでしょうか。

6. Soul Love (demo and DB spoken notes)
ボウイがアコギで弾き語るシンプルなデモ。これいいですね。ジギー・バージョンと言えばあのボウイによる個性的な(笑)サックスが思い浮かびますが、ここでは代わりにハミングでそのパートを歌ってます。まだ未完成で最後は雑に終了。

7. Starman (demo 1 excerpt)
8. Starman (demo 2)
1971年のサンフランシスコ・ホテル録音にしろ、この2019年に売りに出た「Starman」のデモにしろオークションに出たテープを買い取ってちゃんと公式で出してくれるのは本当にエライ。このデモを聞いているとボウイの曲調や声質がジギー期のそれに向かいつつああることが分かって感動しました。

11. Looking For A Friend (The Arnold Corns version – rough mix)
これイントロが切れて始まる状態といいブート『Freddi & The Dreamer (The Arnold Corns Sessions)』辺りからコピーしてリマスターしたりしてないよね?苦笑

この時期の音源を一つにまとめてくれた大好きな一枚。同じ曲のバージョン違いが執拗に続きますけどね 笑

12. Haddon Hall Rehearsals Segue: Ziggy Stardust / Holy Holy / Soul Love
13. Star (Aka Stars) (Haddon Hall rehearsal)
14. Sweet Head (Haddon Hall rehearsal)
今までありそうでなかった初期ボウイのバンドリハ音源。ハドン・ホールのリハ中にマイクを一本で録音したような状態ですが、こういうバンドの息吹が感じられる音源は大好物です。全体を通してウッディーのドラムがキレッキレで凄い。ビートルズとかストーンズでこの手のリハ音源は山ほどありますがボウイは76バンクーバーに83ダラスとかスターになってからのリハ音源ばかりでしたので、こうした初期のリハを捉えた音源は本当に貴重かと。

二枚目からは延々とBBC音源がまとめられているのですが、何と言ってもこれでしょうね。
Sounds Of The 70s: John Peel Session recorded on 11th January, 1972 and broadcast on 28th January, 1972
アーカイブ破棄王のBBCにマスターがなく粗い音質の音源しかなくて今までオフィシャルでは日の目を見なかったこの出演も遂に収録…ですが、今回も音質が悪いのはそのままなので、もしかしたら『The Rise And Rise Of Ziggy Stardust Volume 3 And 4』辺りからのコピーリマスター?

今でも重宝するBBCセット

特に「Queen Bitch」は輪をかけて良くない音を何とかすべくキリキリと硬質なイコライジングまでかましちゃってるところにオフィシャルの苦悩が見え隠れしていますが、このシリーズの性質上オフィシャルに収録してみせた心意気を買ってあげたい。

さて、この後はマニアにとって聞きなれたBBC音源やアルバム未収録音源が続きますので一気に五枚目のディスクへと飛びます(だから今日ファースト・インプレッションができた訳ですよ…笑)。

1. Looking For A Friend (The Arnold Corns version 2022 mix)
私この曲大好きなんです(笑)。しかもオリジナルのアーノルド・コーンズ・バージョンのミックスよりこの新ミックスの方がずっといい出来ではないでしょうか。どのみちボウイの存在感は薄いですけど(苦笑)これは良いですね。

2. Hang On To Yourself (early Ziggy session take)
マニアはこういうのが聞きたかったんですよ。オフィシャルが蔵出ししてくれないと聞けないような別テイクが。こうなるとサウンドが完全にジギー・モードですね。ボウイもスパイダースもノリノリで聞いていて嬉しくなる。

3. Star (take 5 alternative version)
ボウイが弾くエレアコ(左)とロンソンが弾くレスポール(右)が完全に曲の骨を成していることが解る別テイク。カッコイイ

5. Shadow Man (Ziggy session version)
キタ「Shadow Man」のジギー・バージョン!この曲…どうしてお蔵入りさせたかな。フツーのアーティストならアルバムに入れるなりシングルで出すなりするのが当たり前なレベルの楽曲だと思うんですよ。シンメトリーに収録された(昔からお馴染みな)バージョンもいいけど、レイドバックしつつアコギが軽快なこのバージョンも最高。ホント名曲

9. It’s Gonna Rain Again (Ziggy session outtake)
これはあまりにも「Not Fade Away」すぎる。なるほどお蔵入りしたのも当然かなという印象。ボウイが往年のアーティストの楽曲からイメージを膨らませるパターンはこのあと「The Jean Genie」で実を結びます。

10. Looking For A Friend (Ziggy session version)
はい、例によって大好きな曲の初登場ジギー・バージョン!ジギー・スターダストに当初「Round And Round」が入る予定だったのはケン・スコットの証言を始めとして有名な話ですが、そんなカバー入れるくらいならこっち入れた方がよかったんじゃないの?アーノルド・コーンズ・バージョンから見事に進化してジギー期らしいギラギラした演奏に生まれ変わっててアルバムに入れても何ら違和感がなかったはず。とはいえ、このバージョンですら「Starman」の前では形無しなのも当然といえ、あの不朽の名作が収まったのだから結果オーライでしょう。

ここでは「Lady Stardust (take 1 alternative version)」や「I Can’t Explain (Trident Studios version)」といった既に配信で予告済だったトラックは省きました。ボウイがもっとも頻繁に出演した時期だけにBBC音源の占めるスペースが大きいのは仕方がない(何しろ我々は耳タコですから…)にしても、初登場となる音源や別テイクは流石に凄いですね。

そうそう四枚目の後半に収録されているボストンのライブ録音に関しては国内盤が出たら改めて触れてみたいと思います…

そして今回のセットは序盤を除けば完全に1972年の音源で占められています。ということは次回が『アラジン・セイン』から『ピンナップス』の73年集大成ボックスのなるのでしょうか?これまた楽しみです。


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