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OG-545のスリックについて


日本製ブートレグのパイオニアである「OG」レーベルも今やマニアの間にかなり浸透した感がありますが、同レーベルがリリースしたアイテムの中でも知名度が高い名盤がビートルズ武道館6月30日を収録した通称「OG-545」ではないでしょうか。

そんなOG-545も当初は知名度が低かったように思われます。というのも香月利一著「ビートルズ辞典」に白いジャケのOG-545、スリックジャケのOG-640の両方が紹介されていましたが、レコード番号の記載がなくOG-545という呼び方もなかったようです。ただし1970年代の時点で既にOG-640を「OG-545のコピー盤」と紹介していた事実は注目に値するでしょう。

むしろOGが出したビートルズ武道館のオリジナルがOG-545かつ真っ白なジャケであったことが知れ渡ったのは松本典男著の金字塔「ビートルズ海賊盤辞典」だと思います。ただしそこではOG-640がOG-545より音質が劣っている事実などには触れられていませんでした。何よりOG-545のスリック付きバージョンに関してはまったく触れられていません。

「OG-545のスリック付き」に関してはリアタイで購入された方のみの間でしか知られていない存在であり、私の知る限りスリックの存在が明らかになったのはインターネットが普及し始めた1999年ごろ、今はなくなってしまったマニアのサイトで「OGの武道館には別のスリックが存在する」と不鮮明な画像と共に紹介されていたのが初期の例だったように思われます。ただしそこではOG-545の付属品という記載がなく、私もてっきりOG-640のスリックの別バージョンなのかと思い込んでいたものでした。
(訂正:「2ndプレスはスリックカバー」という記載がこのスリックのことを指している可能性あり)

その後あの素晴らしいVinyl Bootleg of The Beatlesブログでも2011年頃にこのスリックについて軽く触れられていたのですが、私がそれに気づいたのはつい最近のこと 苦笑

そして私がこのスリックの存在に関して知ったのはコロナが始まった2020年。その頃はまだ検索すると先の1999年頃のマニアの投稿が引っ掛かってくれたのです。幸運なことにそれから数か月の内にこのスリックが付いた個体がヤフオクに出品され、なおかつ入手できたのですが現物を手にして何より驚いたのはこれが「OG-545の付属品であった」という事実

先にも触れたように、てっきりOG-640の別バージョンかと思っていたのですが、実はVinyl Bootleg of The Beatlesブログがその事をとうの昔に触れられていて納得したのでした。

OG-545スリックのバージョン違い

ところが話はここで終わりません。それから一年後ぐらいのタイミングでchill blankhead氏もOG-545のスリック付きを入手(しかも衝撃的な破格値で…笑)さらに2024年に入ってヤフオクで二度もスリック付きOG-545が出品される事態が起きたのです。

こうした流れの中で非常に微妙なスリックの違いに気づかされました。それはスリックの裏に記載されている「1966年6月29日」という日付がヤフオクのバージョンではタイプ打ち、私のバージョンは手書き、そしてchill blankhead氏のバージョンは何と日付なしという状態だったのです。さらにややこしいことに「The Complete Beatles Vinyl Bootlegs Discography」サイトで紹介されていたスリックには「録音 1966年6月29日」という記載が。これらによってOG-545スリックに関しては4種類の微妙な違いが存在することが明らかとなったのです。おまけに当時は情報が乏しく武道館6月30日公演が「29日」と誤記されていたのでした。

①日付けなし
②見づらいが「The Complete Beatles Vinyl Bootlegs Discography」で紹介されている
「録音 1966年6月29日」入りスリック


③私が所有する日付のみのスリック(「録音」をトリミングした跡あり)
④ヤフオクに出た日付がタイプで打たれたバージョン「1966.6.29」よーく見ると上から貼った跡あり

まずスリック作ってみた→日付を入れてみた→「録音」を消してみた→手書きだとみすぼらしいのでタイプの日付を張り付けてスリックの版下が完成。つまりスリックの試行錯誤ということ。

また日付けがタイプ打ちのバージョンがもっとも流通しているという事実(1999年頃のサイトに掲載されていたのもこちらでした)からもそれが「完成形である」という説明がつくでしょう。

そしてスリックが生み出された事情に関してはOG-545の小売りルートのどこかで真っ白いジャケでは売れないと判断し、独自にスリックを用意したのではないかと私は推測します。思いのほか現存数が多いというのもその証拠の一つになるのでは。(Blimp Life様から大阪の「LPコーナーで作られたスリック」という情報をいただきました)

最後にこうしたバージョン違いも流通した原因?それは「捨てるのがもったいから」ではないでしょうか。今のコンビニコピーと違って当時のゼロックスコピーはできる場所が限られていた上に費用だって今より高くついたはずですからね 笑

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