桜からあなたへ
『あれ?昨日雪降ってなかった?』
『それな?俺何の準備もしてないぜ!』
この時期に、華を咲かせるの大変なんです。暖かくなったと思ったら雪降ったりする。卒業式は雪降ってたのに入学式までには満開にしないとみんな、残念な顔でこっちを見る。まだ蕾じゃん!ってね。
俺は人間の気持ちがよくわかる。春になって、暖かくなって、縮こまった体も頭ん中も解放された感覚で外に出る。昨日去っていった人を見送ったその足で新しい仲間を歓迎している。だから俺たちは年に一回の大仕事に打ち込むんだよ!
『だって満開じゃないとダメなんだろ?』
解ってるよ。そのために地面からこの日の為に生きるチカラを吸い込んでる。1年間のたっぷりとした月日を使ってね。それが俺たちに与えられた人生なんだから。
明らかに人工的に植えた桜には人は集まらない。そこには惹きつけられるサイコは感じない。普段人が寄り付き難い場所こそ言葉にならない程の感動がある。
寄り付き難い。
そう。決してそれ以外の俺たちの姿は観られてはいけないんだ。だって、あなた達の過去からパワーを頂いているから。
桜の花びらに魂は宿るのか?
俺たちはちゃんと生きている。しっかりと養った命の源(みなもと)をこのタイミングで一気に解放する。そのために根っこに埋まる霊(たましい)から美しさをいっぱい頂いているからね。その人たちの無念が多い程
『美しく儚い』って感じる。だから君たちは必ず確認しに来るんだろ?
『桜って何か寂しさを背負ってるよね?』
生きる事ってそんな簡単じゃ無い。でも生きてるからこそ出来る楽しみって、生きてるもの達こそが出来る幸せ。それを全うする事こそが、死んでいった人達への手向になる。
今こっちを向いて少し寂しげな女の子も、何かを感じている。それが何かはまだ解らないでしょう。
だって、いい事も、やな事もすぐに忘れてまた観に来るんだもん。自然とね。また来年この場所で逢いましょう。それまでに準備しとくよ。しっかりとね。