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『99%のためのフェミニズム宣言』関連書籍紹介(2021/2/1追記)

発売中の99%のためのフェミニズム宣言』を読むにあたって、フェミニズムはもちろん資本主義や人種主義、環境変動について、より理解を深められるのではないかと思う関連書籍を、新刊・既刊まじえてご紹介します。なによりも本書から対話が広まりますよう。
※2021/2/1 2021年1月29日(金)に開催したイベント「【菊地夏野×栗田隆子】今、「99%のためのフェミニズム」を夢みる」(会場Readin’ Writin’ BOOK STORE)にて、栗田隆子さんにご紹介いただいた書籍を追加しました(★印)。

フェミニズムについて

◎日本のフェミニズム

■栗田隆子『ぼそぼそ声のフェミニズム』(作品社、2019年)

日常や仕事のことば一つひとつに引っかかりを覚えながら、地道に、それでいてしっかりと自分のフェミニズムの足場をつくっていくような本。「弱さ」とともにあるために。


■菊地夏野『日本のポストフェミニズム――「女子力」とネオリベラリズム』(大月書店、2019年)

『99%のためのフェミニズム宣言』解説者の菊地夏野さんが、ナンシー・フレイザーの理論を用いながら日本における「ポストフェミニズム(「フェミニズムは終わった」という言説)」を論じた1冊。とくに「女子(力)」という言葉のすわりの悪さがあざやかに分析されています。


■河野真太郎『戦う姫、働く少女』(堀之内出版、2017年)

ジブリやディズニーの「戦う姫」は、社会のどんな女性像を反映しているのか。ポピュラー・カルチャーに囲まれている現代だからこそ、そこから照らし返すと女性と資本主義の関係がよくわかります。


◎99%のためのフェミニズム参加者の著作

『99%のためのフェミニズム宣言』は運動のマニフェストであり、その運動に参加した学者の著書で、邦訳のあるものを。

ナンシー・フレイザー著、仲正昌樹監訳『中断された正義――「ポスト社会主義的」条件をめぐる批判的省察』(御茶の水書房、2003年)

ナンシー・フレイザー著、向山恭一訳『正義の秤――グローバル化する世界で政治空間を再想像すること』(法政大学出版局、2013年)

ナンシー・フレイザー/アクセル・ホネット著、加藤泰史監訳『再配分か承認か?――政治・哲学論争』(法政大学出版局、2012年)

アンジェラ・デイヴィス著、上杉忍訳『監獄ビジネスーーグローバリズムと産獄複合体』(岩波書店、2008年)


◎マルクス主義フェミニズムの視角

『99%のためのフェミニズム宣言』はカール・マルクスの『共産党宣言』を念頭に置かれて書かれた本です。マルクス主義を批判的に検討しつつ、その視座をアップデートするようなマルクス主義フェミニズムの本には、浩瀚な研究書もそろっています。

■シルヴィア・フェデリーチ著、小田原琳/後藤あゆみ訳『キャリバンと魔女――資本主義に抗する女性の身体』(以文社、2017年)

チャンドラー・タルパデー・モーハンティー著、堀田碧監訳『境界なきフェミニズム』(法政大学出版局、2012年)


◎世界のフェミニズム

■ベル・フックス著、堀田碧訳『フェミニズムはみんなのもの――情熱の政治学』(エトセトラブックス、2020年)

古典ともいえるフェミニズムの入門書のひとつ。いまだに誤解されやすいフェミニズムとはそもそもどういう運動なのか、なにを伝えたいのか、なにを変えたいのか。わかりやすく、愛をもって書かれています。


■ジョアン・C・トロント著、岡野八代訳『ケアするのは誰か?』(白澤社、2020年)

ケアとは、介護、看護、育児など、人間に欠かせない営みのこと。『99%のためのフェミニズム宣言』とはアプローチは違いますが、ケアから民主主義社会を再考しようという大事な一冊です。


ジュディス・バトラー著、佐藤嘉幸/清水知子訳『アセンブリーー行為遂行性・複数性・政治』(青土社、2018年)


鈴木裕子著『天皇制・「慰安婦」・フェミニズム』(インパクト出版会、2002年)

シンシア・エンロー著、望戸愛果訳『バナナ、ビーチ、軍事基地――国際政治をジェンダーで読み解く』(人文書院、2020年)

安里和晃編『国際移動と親密圏――ケア・結婚・セックス』(京都大学学術出版会、2018年)

岡真理『彼女の「正しい」名前とは何か 新装版――第三世界フェミニズムの思想』(青土社、2019年)

竹村和子『境界を攪乱する――性・生・暴力』(岩波書店、2013年)

笠原美智子『ジェンダー写真論 1991-2017』(里山社、2018年)


『現代思想』「総特集 フェミニズムの現在」(青土社、2020年、vol.48-4)

田中玲『トランスジェンダー・フェミニズム』(インパクト出版、2013年)

森山至貴『LGBTを読みとく──クィア・スタディーズ入門』(ちくま新書、2017年)

菊地夏野・堀江有里・飯野由里子編『クィア・スタディーズをひらく』(晃洋書房、2019年)

障害のある女性の生活の困難──人生の中で出会う複合的な生きにくさとは(複合差別実態調査報告書)


新自由主義と気候変動

■デヴィッド・ハーヴェイ著、渡辺治訳『新自由主義――その歴史的展開と現在』(作品社、2007年)

いったい新自由主義とは?と思ったときにはこちら。サッチャー、レーガン、中曽根政権が進めてきた政策と、それによってもたらされた構造を分析した新自由主義についての入門書であり基本書。


■ナオミ・クライン著、幾島幸子・荒井雅子訳『これがすべてを変える――資本主義 vs. 気候変動 上・下』(岩波書店、2017年)

年々激しさを増す台風を思えば、地球環境問題、気候変動はけっして他人事ではありません。環境破壊の元凶は資本主義だという主張はとても力強く、近刊『地球が燃えている――気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言』(大月書店、2020年)斎藤幸平著『人新世の「資本論」』(集英社新書、2020年)もご一緒にぜひ。

マーク・フィッシャー著、セバスチャン・ブロイ/河南瑠莉訳『資本主義リアリズム』(堀之内出版、2018年)

デヴィッド・グレーバー著、酒井隆史・芳賀達彦・森田和樹訳『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』(岩波書店、2020年)


人種主義(レイシズム)と差別の構造

■中村隆之『野蛮の言説――差別と排除の精神史』(春陽堂ライブラリー)

「人種」は存在しない概念ですが、「人種差別」は依然として存在します。もちろん、日本にも。「人種」の概念はいかにつくりだされてきたのか。ヨーロッパによる植民地政策を遡って、その過程がわかりやすく紹介されていて、『BLACK LIVES MATTER――黒人たちの叛乱は何を問うのか』(河出書房新社、2020年)『現代思想臨時増刊号 総特集ブラック・ライブズ・マター』、★『世界を動かす変革の力――ブラック・ライブズ・マター 共同代表からのメッセージ』(明石書店、2021年)に連なる歴史が見えてきます。

トニ・モリスン著、森本あんり訳・解説『「他者」の起源――ノーベル賞作家のハーバード連続講演録』(集英社新書、2019年)

上杉忍『ハリエット・タブマン――「モーゼ」と呼ばれた黒人女性』(新曜社、2019年)

タナハシ・コーツ著、池田年穂訳『世界と僕のあいだに』慶応義塾大学出版会、2017年)

梁英聖『レイシズムとは何か』(ちくま新書、2020年)


アメリカの現状

■レベッカ・ソルニット著、渡辺由佳里訳『それを、真の名で呼ぶならば――危機の時代と言葉の力』(岩波書店、2019年)

『99%のためのフェミニズム宣言』は世界中で出版されていますが、アメリカの事例が多いことから、アメリカの文脈を知るとより楽しめます。『説教したがる男たち』(左右社、2018年)などのレベッカ・ソルニットによるシャープなエッセイ集。

リー・マッキンタイア著、大橋完太郎監訳『ポストトゥルース』(人文書院、2020年)

カロリン・エムケ著、浅井晶子訳『憎しみに抗って――不純なものへの賛歌』(みすず書房、2018年)


※ポーランドや南米で起こっている女性たちのストライキに呼応して『99%のためのフェミニズム宣言』は書かれました。菊地夏野さんがtwitterで言及されていた記事はこちらです。


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シンジア・アルッザ/ティティ・バタチャーリャ/ナンシー・フレイザー 著

惠愛由 訳 菊地夏野 解説

四六判上製170頁 本体2,400円+税 ISBN978-4-409-24135-6

私たちはまだ連帯できる――ほんとうの敵は資本主義だ

1%の富裕層ではなく、「99%の私たち」のために、性差別・人種主義・環境破壊のない社会を。いまや世界中に拡がる女性たちの運動とも共鳴しながら、研究の第一線でも活躍するジェンダー学者たちが、性の抑圧をもたらす現代資本主義の終焉を呼びかける。分断を正確に認識することで、私たちはまだ連帯できる。

「99%のためのフェミニズムは反資本主義をうたう不断のフェミニズムである――平等を勝ち取らないかぎり同等では満足せず、公正を勝ち取らないかぎり空虚な法的権利には満足せず、個人の自由がすべての人々の自由と共にあることが確証されないかぎり、私たちは決して既存の民主主義には満足しない」(本文より)。

目次

マニフェスト――分岐点

1 新たなフェミニズムの波がストライキを再構成する

2 リベラル・フェミニズムは崩壊した──私たちは前に進まなければならない

3 私たちには反資本主義のフェミニズムが必要だ──99%のためのフェミニズム

4 私たちは社会全体の危機のさなかを生きている──そしてその根源は資本主義にある

5 資本主義社会におけるジェンダー的抑圧は、社会的再生産が利益目的の生産に従属していることに根ざしている──私たちはその順番を正しくひっくり返したい

6 ジェンダーに基づく暴力には多くのかたちがあり、そのすべては資本主義と複雑に絡みあっている──私たちはそれらすべてと闘うことを誓う

7 資本主義はセクシュアリティを規制しようとする──私たちはそれを解放したい

8 資本主義は人種主義的・植民地主義的暴力から生まれた──99%のためのフェミニズムは反人種主義かつ反帝国主義である

9 資本による地球の破壊から脱するために闘う──99%のためのフェミニズムはエコ社会主義である

10 資本主義は本物の民主主義や平和と両立しない──私たちの答えはフェミニスト的な国際主義である

11 99%のためのフェミニズムはすべてのラディカルな運動に反資本主義の反乱を呼びかける

あとがき

解説
訳者あとがき

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