戦争を考える――人文書院の関連書籍20冊
新型コロナウィルス蔓延下で迎える戦後75年。自粛、不要不急、経済優先、供出、非常事態宣言、五輪中止……すべて戦争中に使われていた言葉です。まさかこんな言葉が身近になるなんて、想像もしていませんでした。いまだからこそ、太平洋戦争を多角的に伝える本を一気に20冊ご紹介します。
市井の人びとにとって戦争とは? アニメや漫画から戦争を振り返る
■昭和戦争史講義――ジブリ作品から歴史を学ぶ(一ノ瀬俊也)
ジブリの名作を題材に戦争を学ぶ1冊。大学の講義がもとになっているので、さくさく読み進められます。ブックガイド付き。
■戦艦大和講義――私たちにとって太平洋戦争とは何か(一ノ瀬俊也)
戦艦大和は神である。大和から太平洋戦争を読み解きます。カバーはボックスアート名手の梶田達二。
■「聖戦」の残像――知とメディアの歴史社会学
『はだしのゲン』はいかにして戦争マンガの正典となったのか。『男たちのYAMATO』になぜ、感動が見出されるのか。その鍵がここに。
戦争はどのようにして起こったのか? なぜ終わったのか?
■1941 決意なき開戦――現代日本の起源(堀田江理)
指導者たちが「避戦」と「開戦」の間を揺れながら太平洋戦争の開戦決定に至った過程を克明に辿る、緊迫の歴史ドキュメント。アジア・太平洋賞特別賞をいただきました。
■1945 予定された敗戦――ソ連進攻と冷戦の到来(小代有希子)
「ユーラシア太平洋戦争」の末期、日本では敗戦を見込んで、帝国崩壊後の東アジアをめぐる様々な分析が行われていた。その実態を描く歴史書です。
治安維持法とは? 思想によって逮捕されるということ
■灰色のユーモアーー私の昭和史(和田洋一)
治安維持法違反で逮捕されたある大学教員の、特高の取り調べを受ける日々をコミカルに綴った名著の新編です。解説陣が豪華。
アジアと日本 植民地支配への新しい視座
■「大東亜」を建設する――帝国日本の技術とイデオロギー(アーロン・S・モーア著、塚原東吾監訳)
「植民地支配は悪かったけど、インフラを整備するなど技術を輸出したことはよかった」。果たしてこの言説は正しいのか?詳しくはこちらの鼎談もぜひ。
■PANA通信社と戦後日本――汎アジア・メディアを創ったジャーナリストたち(岩間優希)
日本の政治家で彼を知らない者はいない、白洲次郎が会ってみろといった男、宋徳和。アジア人のためのアジア系通信社、PANA通信社とはどのようなものだったのか。報道という側面からみた戦争。
海外にいた日系人にとっての戦争
■海の民のハワイーーハワイの水産業を開拓した日本人の社会史(小川真和子)
日本からハワイに「出稼ぎ」に行く人びとを描いた本作。戦争が主題ではありませんが、敵国にいた日系人の労苦を描きます。
広島の声を聴く
■広島 復興の戦後史――廃墟からの「声」と都市(西井麻里奈)
戦後生き残った広島の人々は、自らの暮らしを取り戻すため、立退きをともなう都市計画に抗い、行政に対し多数の陳情書をしたため、声をあげようとしました。本書はこの陳情書に初めて光を当てた研究であり、戦後広島を、無数の声とさまざまな力線が交差する空間として描き出します。
■核エネルギー言説の戦後史1945-1960――「被爆の記憶」と「原子力の夢」(山本昭宏)
敗戦からの15年間、原爆と原子力という二つの「核」をめぐって何が言われ、人々はそれをどのように受け止めたのか。中央メディアから無名作家たちのサークル誌までを博捜し社会全体を描き出す戦後史です。
帝国に置き去りにされた人びと
まだ解明されていない部分、発見されていない人がいるといわれる抑留問題。ソ連政治の専門家でありその分野をリードし続ける富田先生が関わられた3作です。
■シベリア抑留者たちの戦後――冷戦下の世論と運動 1945‐56年(富田武)
■シベリア抑留者への鎮魂歌(富田武)
■神々は真っ先に逃げ帰った――棄民棄兵とシベリア抑留(アンドリュー・バーシェイ著、富田武訳)
戦争と文学
■引揚げ文学論序説――新たなポストコロニアルへ(朴裕河)
1945年8月、帝国日本の解体とともに満洲、朝鮮、中国から数百万の人々が帰国。後に作家となり、苛酷な引揚げ体験を苦しみながら表現した者たちの文学を「引揚げ文学」として、新たな戦後史を再考します。
■日本人のシンガポール体験――幕末明治から日本占領下・戦後まで(西原大輔)
二葉亭四迷や夏目漱石から、「からゆきさん」も海をわたってシンガポールに行きました。視点を変えて眺める近現代史。
戦争はつづく
■良い占領?――第二次世界大戦後の日独で米兵は何をしたか(スーザン・L・カラザース著、小滝陽訳)
占領下での米兵のふるまいとは?兵士の手紙や日記を辿り、性・階級・人種をめぐる実像に迫ります。
■ボランティアとファシズムーー自発性と社会貢献の近現代史(池田浩士)
日本国家はヒトラー・ドイツから何を学び、いかにして人々の社会貢献を「勤労奉仕」に組み換え、戦時体制に取り込んでいったのか。オリンピックにも通じる問いです。
戦争とはなにか
■戦争と平和 ある観察(中井久夫)
精神科医であり文筆家でもある著者の描く戦争。歴史学者の加藤陽子さん、元海文堂書店社長の島田誠さんとの対談も収録しています。
■アジアの思想史脈――空間思想学の試み(山室信一)
日清・日露から安重根事件、韓国併合、辛亥革命、満洲国まで、グローバルな視点のなかにアジアの思想と空間を問い直し、境界と想像を越えた思想のつながりを描き出します。
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