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【読書記録】サイゼリヤ元社長が教える 年間客数2億人の経営術(堀埜一成)

サイゼリヤといえば創業者の正垣さんのイメージが強いですが、2009年から直近の2022年まで社長を務めたのは著者の堀埜さんで、近年のサイゼリヤの隆盛を担ってきた人物です。
本書にも書かれていますが、サイゼリヤはテレビ等での露出も少ないので、「社長の名前は?」と聞かれてもピンとこない人の方が多いのではないでしょうか。
私も存じ上げませんでした。

圧倒的なブランド力

本書を読んで改めて気付かされたのですが、サイゼリヤは広告や販促をいっさい行っていないという事実に驚かされます。
ファミレスチェーンといえば、キャンペーンを打って、宣伝をして、アプリの登録を促して、クーポンを配布して…といった店が多いですが、サイゼリヤはそういったことを一切行っていません。
それをしなくても集客できるからです。
ブランド力があるから、と言ってしまえばそれまでですが、そこまでのブランドを築き上げられたのは創業当初から価格と価値にこだわり続けてきたからこそです。
そして、広告や販促にかけなかった費用を商品にかけることで、より低価格かつ高価値な商品を提供できるという好循環につながっています。

また、サイゼリヤにはSNSの公式アカウントがないため非公式のアカウントやファンサイトがたくさんあるのですが、それらに関与したり規制したりといった動きは見せません。
サイゼリヤには「顧客の体験は会社がコントロールできるものではない」という考えがあるようで、
ポジティブだろうがネガティブだろうが発信は顧客に委ねる、というスタンスを貫いています。
それはやはり自社への自信の表れであり、顧客との信頼関係があるからこそではないでしょうか。

価格と価値のたゆまぬ追求

本書では、サイゼリヤの価格と価値を守るためのさまざまな取り組みについても語られています。

例えば原材料調達のひとつひとつのプロセスに対しても、なぜここにこれだけのコストがかかっているのか、どうやったら下げることができるのか、といったことを徹底的かつロジカルに分析しています。
レタスやコメを自社で栽培したり、ホワイトソースを作るための海外工場を設立したりと、試行錯誤の末に最適解を見つけています。
ただボリュームディスカウントで安く仕入れればよい、という話ではないということです。

また、原材料だけでなく、キッチンの面積であったり、店舗のレイアウトであったり、掃除の仕方であったりと、オペレーションにまつわる部分も徹底的に分析と改善がなされています。
最終的にはトイレやエアコンにまで話が及びます。

もちろん、他社もそういった取り組みはしているでしょうが、
「サイゼリヤはミラノ風ドリアを300円で提供しているが、同じ価格と品質で他社がそれを真似るのは非常に難しい」
と堀埜さんは語っており、取り組みのレベルが一回りも二回りも違うことを窺わせます。

バトンタッチがあったから今がある

元々、サイゼリヤには数字を見る文化やドキュメントを残す文化がなく、現場の感覚任せで、入社したての堀埜さんはそのことに強い危機感を持ったそうです。
これまではそのやり方で成長してこれたかもしれないが、このままではこれ以上の成長は厳しい、と。
そこから社長に就任し、組織やインフラの基盤づくりに着手するのですが、それがなければ昔のままのサイゼリヤはどこかで壁にぶつかって、厳しい飲食業界の中で埋もれていたかもしれません。
そう考えると、創業者の正垣さんが生え抜きでない堀埜さんにバトンタッチし、堀埜さんが自分流を持ち込んだからこそ、サイゼリヤの今があるといえます。

今は堀埜さんも退任し、三代目の松谷さんが社長に就いていますが、これからのサイゼリヤをどう導いていくかに注目です。

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