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短編

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#とある二人

ある二人のお話。 その1

彼は彼女の質問にこう答える。

「それはないね」

彼女の質問はこうだ。

「ねえ、こういう感じから好きになることってある?」

服も着ないまま、二人はこういう会話を紡ぎ出す。

彼女は安堵する。彼はそれを見て思う。そんな事、重要?と。
ドアを閉じればそこにはその空間が出来上がるし、
ドアを開ければそれぞれ日々の現実に戻るだけ。
彼も彼女もそういう関係を好んでいる。

彼は知っている。彼女はほんの

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旅の始まりはもうほんのちょっと先。

久しぶりに会えたのだ。少しぐらい期待もするじゃないか。

彼女はそう思いつつ、宿に着いても抱きしめてもくれない彼にやきもきする。

距離の離れた彼。空の旅をしてここまで来た。合流するまで仕事をしていた彼は疲れているだろうし、無理はさせたくない。でも、触れるぐらいしてくれたっていいじゃないか。

そう思いつつ、彼と素面で会うのは初めてで、どう動いて良いかも分からない。

『私、好きってちゃんと言った

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