劇団を会社にする理由 ~組織形態編~

【時間堂 会社になる04】

時間堂P大森晴香です。ご無沙汰です、とか、なかなか更新できなくて、とか、そういう書き出しにしょんぼりする書き出しです…。

…。

気を取り直して!

今回のテーマは「なぜ合同会社にするのか」です。

これまでホージン化という言葉でひとくくりにしゃべってきましたが、ひと口にホージンと言ってもいろいろなスタイルがあります。今回、私が迷ったのは以下の3種類(正確に言うと4種類)でした。

『合同会社』
『NPO法人』
『一般社団法人』
『任意団体』(現状のまま)

このほかに財団法人とか株式会社とか、公益社団法人などなどいくつか種類はあるのですが、検討プロセスのかなり早い段階で絞られちゃったので割愛します。潤沢に資金と運営人員がいるわけではない芸術団体にとって、現実的な選択肢はこの3種類だと考えました。

・自分たちの目指す姿の実現につながるか
・設立と運営を少数のスタッフでもなんとかなりそうか
・費用負担がリーズナブル、というかできる限り安価か

この3つの質問に答えることで、大方針は出ると思っています。その先の具体的な検討プロセスは以下の8つだったと記憶しています。ちょっと前の話なのでやや曖昧ですけど。当時のメモ書きを少々見直して掲載します。ちなみにシロウトの情報収集による判断なので、経営の専門家だとか他の芸術団体の方が考えたら、違う答えになるかもしれません。解釈が間違っているおそれもあるので、実際にご自身で法人化を考えるときは、経験者や専門家の言葉をご自身でインタビューすることをおすすめします。私は「時間堂に向いているもの」という判断軸で考えていますし。念のため。

法人組織の選択に関わる8つの切り口

1. 法人or任意団体
助成金申請には法人格が必要になってきてるし、スタジオ含め共有財産と共同労務が増えている。したがって任意団体のまま、というのは考えにくい。
ちなみに社会的な認知としては、『一般社団法人』ていうのはマイナー。規制が少ない分、他の法人格よりややゆるく見られるかも。だんだん改善はしてきてる。

2. 営利or非営利
営利団体だと助成金がもらいにくくなったり税金の優遇があんまりない。つまり、メリットが「設立の簡便性」だけ。それも『社団法人』なら大差ない。この点では非営利の方が有利。

3. 活動目的との整合性
『NPO』は設立目的の最初に「社会課題」ありき。演劇は「目的」というよりも「課題解決手段の一つ」、となる。一般市民に向けて開かれていることも必要で、出演がオーディションに通った人やオファーした人に限る、とか、ワークショップ参加者を俳優に絞る、というのも『NPO』の性格とは合わない。
『社団法人』『合同会社』はその点が制約なし。

4. 意思決定システム
『NPO』は構成員の資格を制限できない。入りたい人は全員受け入れなくちゃいけないし、その人が議決権を持つ。事業計画と予算にないことをやるにはいちいち総会を開かなくてはいけない。つまり、時間堂がやりたいことがフレキシブルにできる状態ではなくなる危険性あり。
『社団法人』なら、構成員の枠を設けられる。したがって、意思決定を劇団員で素早くすることができる。
『合同会社』ならなおのこと、自分たちで決められる。

5. 設立費用
『合同会社』と『社団法人』は登記料や手数料で約15万。『NPO』はタダ。

6. 設立の手間
『合同会社』は経験者なら数日で書類が作れる。初心者でも1週間あれば作れそう。たぶん一番簡単。ひとりでも設立可能。
『社団法人』は2週間~1か月でできる。書類少ない。2人いれば作れる。
『NPO』はどんなに頑張っても4か月以上かかる。書類も多い。10人必要。

7. 運営の手間
『NPO』は情報公開が義務。運営事務も大変。ひとりでは無理。

8. 税制優遇
『合同会社』は営利団体なので特に優遇なし。
『社団法人』の中でも『共益型』てやつなら会費や寄付金を非課税。
『NPO』はもともとそこんとこ非課税。

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これらを天秤かけて、結局は「時間堂が自分たちのパフォーマンスをいかんなく発揮できる組織形態」としての合同会社を選択しました。それは活動目的との整合性、意思決定システムといった「やりたいことを自分たちの意思でやれるかどうか」という意味でもあり、また、「やりたいことをやる布陣として持続可能性があるか」という意味でもあります。特に後者の意味について、私というひとりの人間が今までの仕事にプラスで会社経営もやることになる、という事実を、過小評価しないことがポイントだったと振り返っています。

時間堂のメンバーは演出であれ俳優であれ、劇団運営に積極的に参画してくれるけれど、それでもやっぱり「プロデューサーがやる仕事」はそれなりの量があります。私はスーパーマンではないし、今までだって何度もあっぷあっぷになって周りに助けてもらってきたのに、新たに社長(注:合同会社の場合は代表社員と言います)としての仕事が加わるわけです。そこに私が意識も時間も体力も吸い取られてしまったら、時間堂はやりたいことが思うように続けられるかどうか、クエスチョンがついてしまいます。これは「私がいないと時間堂はダメなの★」とかいう次元の話じゃなくて、どんな組織であれ、仕事が増えるのに人が増えないのであれば、素通りできない問題だと思います。

そんなわけで、時間堂は合同会社を目指すこととあいなりましたとさ。

今日はここまで。次回は「会社になって何すんの?」ってあたりですかね。法人化の手続きを書いてもいいのだけど、それはいくらでも世の中に情報があると思うのです。ここで書くのはそういうトラの巻ではなくて、芸術団体が芸術で経済的な自立を実現するためにはって話を書きたいな。そんなふうに思っています。

ちなみに、来週末のイベントはふだんの公演よりもお客さんと直接お話ができる時間になると思って、それが楽しみでもあり緊張もしています。ここに書いてることそのものが話題にならなくても、これがきっかけになって演劇を観たり、演劇やってるひとに関心を持ったり、芸術のプロフェッショナルってなんだろうって思いを馳せたり、そういう仲間がひとりでも増えていたら、とても嬉しいです。イベントで直接お会いできたらそれはまた、ますます嬉しいことですけど。

というわけで、お待ちしております。
ご予約はこちらから

もういっこ宣伝。

ぴかぴかのスタジオでワークショップもやってます。このワークショップが次回の「会社になって何すんの?」の大事な要素だったりします。合わせてお知らせ。

[6月のワークショップ日程]
●演劇:オープンクラス
11日(水)10:00~13:00
17日(火)13:00~16:00
22日(日)13:00~16:00
24日(火)19:00~22:00

●演劇:中級クラス
19日(木)19:00~22:00

いろんな角度・切り口で、時間堂を、演劇を、知ってもらえたらと思います。

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